「えんとつ町のプペル」を観た。
ちなみにNETFLIXでも観れます。
主人公が真実や夢をかたくなに追い求めるファンタジー的ないい話でもあるが、特に興味を引いたのが、作中になにげに登場するL(エル)という腐る通貨の存在とその背景だ。
「世の中に存在する全ての者は朽ちていくにも関わらず、お金のだけが朽ちないのが原因で世の中が荒廃する。」
「それを改革するために時間と共に腐って価値のなくなる通貨を流通させた。」という話がえんとつ町の250年前に溯る歴史の中で登場する。
この作品は秀逸だが、この「何故えんとつ町が生まれたのか?」という背景をL(エル)という減価通貨の存在と共に経済学的な見方をするとより面白く観れるはずだ。
一般的には、インフレと共に貨幣の価値は下がっていくという現象はあるものの、通貨そのものが腐って持っていると使えなくなるというアイデアは面白い。
コロナ対策でばらまかれる給付金や助成金やクーポンが期限付きになる発想と似ている。
お金は使うために手に入れるものなのに、日本人は不景気なときほど将来に備えてお金を使わない。
もし、使わないとどんどん価値が目減りしてそのうち消滅するとわかっていたら、稼いだカネはどんどん使うだろう。
これを実現する方法は、マイナス金利など現実にいくつか簡単な方法があるが、どれもインフレを誘発する恐れがあり、その通貨を発行している中央銀行を破綻させかねないので、おいそれと導入は出来ない。
驚いたことに、この減価する通貨は現実に存在していたことがあるようだ。
かめぴょんさんという方のブログに、このL(エル)という通貨の背景となったであろう歴史的事実が解説されており、興味のある方は読んで頂くのが手っ取り早いと思う。
えんとつ町のプペルの秘密を解明!ゲゼルマネーとヴェルグルの関係性 | みんなのかめぴょん (kamepyonblog.com)
実在した思想家のシルビオ・ゲゼルは「ありとあらゆる物が時間とともに劣化していくのに対し、お金だけ腐らない事が秩序と自然を破壊し、人間を不幸にしてしまう」と提言しており、世界はインフレとデフレを繰り返し、第一次世界大戦が起こり、世界大恐慌と言う前代未聞の不景気が来ると警鐘を鳴らしていたらしい。
また経済学で、減価するお金や腐るお金は「ゲゼルマネー」と呼ばれているらしい。
そして、時間と共に劣化する「減価通貨思想」は、資本主義の世界では今でも異端の扱いを受けている。
映画のプペルの世界では、異端の扱いを受けたL(エル)の減価通貨の発案者シルビア・レターは処刑され、その後その子孫が中央銀行の目の届かないところを探して作った町が「えんとつ町」となっており、えんとつの煙は星を隠してしまったけど、「えんとつ町」を隠し、外界との接触を断つためにたかれ続けた煙だった。
そして、皮肉なことにその「えんとつ町」では、星が有り、外界があると主張することが異端となって取り締まられる結果となっていた。
人々の幸福を妨げる通貨の絶対的価値を奪い、独自の減価通貨を流通させる為には、それだけの鎖国政策が必要だったのだ。
煙のなくなったえんとつ町は、いずれ別の国に発見され異端として侵略されてしまうかもしれない。
真実や夢を追い求める自由を手にすることが、必ずしも全ての人を長期に渡って幸福にするとは限らない。
新型コロナウイルスというものが、人為的にばらまかれたものだとすれば、それは中国にとってえんとつ町の煙のようなものなのかもしれない。
少なくとも、新型コロナの蔓延によって徹底したゼロ・コロナ政策を布く中国が外界から遮断されていることは事実だ。
中国は、人民が投資によって財を成すことをよしとしていない。
人民が働いて得たカネは、国内でどんどん消費してもらいたいと思っている。
人民元は、それ自体が劣化する特性を持ったものではないが、外界との流動性を制限し、人民から不動産や株、仮想通貨などに投資する機会を最小限にすれば、ゲゼルマネーと似た効果が得られるのかもしれない。
日本も同様に金融鎖国政策を取って、期限付きのクーポンのような形でベーシックインカムを全国民にばらまけば景気が良くなるのかもしれない。
1年前に、日本にコロナで閉じ込められて書いたブログの記事を読み返してみて、このままでは日本の経済はダメだなと改めて感じた。
それこそ、プペルの世界ではないが、ゲゼルマネー的な何かを導入しなければならない気がする。
以下、その時の感想文から引用。
「いちばん気持ち悪く、理解に苦しむことは、日本人は世界の中では平均して貯金の多いキャッシュリッチな国民であるにも関わらず、お金持ちでもあまりお金を使わず銀行に寝かしておく謎の風習だ。
これこそ、ブードゥ教の呪いのような、外国人からすれば理解不能な謎の土着風習といっても良い。
日本人として私が感じるのは、日本人は単に投資的観点抜きに、お金を足し算引き算で計算することが大好きな人種だということだ。
お金は使えば無くなる引き算なので、景気の悪いときには将来が不安なので使わないようにしようとする。
お金を使わないと景気はどんどん悪くなり、さらにお金を使わなくなる。
有っても使わないお金を、投資するでもなくただ寝かしておいても全然お金の意味がない。
日本人は世界一お金持ちの貧乏という感じがする。」