キョーコはさすがにやばいかな、と思いだしはじめた。
お酒は好きだ。特に甘めのカクテルとかさっぱり系のサワーは本当においしい。
だからついついぱかぱかいってしまうのだ。いつもなら止めてくれる奏江や蓮は遠い。(ついでに社も遠い)
なくなるとすぐに貴島が注文するから余計に飲んでしまう。
「ちょ、ちょっとお手洗いに・・・」
そういって席から抜け出して外の空気を吸いに行った。
「京子ちゃん大丈夫?」
心配そうにやってきたのは貴島で。
(モー子さん誘えばよかった・・・。まずいかな・・・・?)
この貴島との二人っきりの状況がよろしくないことは過去の経験からさすがにキョーコもわかっている。
「だ、大丈夫ですよ?すぐに戻るので貴島さんも戻っていただいて大丈夫ですよ?」
「いや、俺が調子にのって注文したせいでもあるし・・・」
「そんなことないですよ?」
「京子ちゃんさ、俺のことそんなに警戒しなくても大丈夫だよ?」
くすくすと、貴島が笑った。
キョーコは真っ赤になって弁明した。
「あ、あの、いえ、そういうことじゃないんですが・・・基本的に男性のそばって苦手なんです・・・すいません」
「敦賀君を除いて?」
「え・・・・?」
「君たち付き合ってるの?」
「いえ、あの・・・?」
酔っていることもあってキョーコは上手く考えることができない状態である。
上手く答えられる自信がない。
(こ、困ったな・・・・)
貴島の意図がうまくつかめずに返答にこまっていると、ようやく助け舟が到着した。
「キョーコ、大丈夫なの?」
奏江だった。
(た、助かった~~~~)
「ご、ごめん、ちょっと酔っ払っちゃって・・・」
「貴島さん、私が付き合うんで戻ってくださって大丈夫ですよ?」
毅然とモー子さんがいうと貴島はふっとため息をついた。
「最強の守護者がきちゃったならしょうがないかな~それじゃおじさんは退散するかな」
そういうと部屋に戻っていった。
「なにか言われた?」
「大したことは・・・ただ、敦賀さんと付き合ってるのか、って」
「あー、まぁ割と有名だしね、その話」
「え!そ、そんなに?」
「シー!こんなところなんだから静かにしなさいよ」
「ご、ごめん」
「ここだと誰が聞いてるかわからないからまた今度ね。部屋戻る?それとも一緒に帰る?もうそろそろ帰っても平気でしょ」
「そうね、かえろっかな・・・」
飲み始めてからせいぜい1時間程度だったが女性が二人、帰っても問題ではないだろう。
そう判断して主催者たちに告げると相当のブーイングはあったが奏江がそれ以上を言わせなかった。
キョーコは蓮と社に挨拶をすると奏江と一緒に帰った。
「アンタのほうが近いから先にそっちに寄るわよ?」
そういうと乗り込んだタクシーの運転手に住所を言った。
「ね、モー子さん、さっき言ってたことって・・・」
「ん~?んー、そんなに驚かなかったところをみるとアンタも聞いたことあるんでしょ?」
「前ね、映画で共演した子に教えてもらったことがあって・・・」
「ああ、なるほどね。最近は以前ほどじゃないみたいだけど、貴島さんのせいで気が気でないんじゃないの?」
「ちゃんとオコトワリしてるんだけどなぁ・・・」
「そういうことじゃないでしょ」
「・・・・・・うん」
「わかってるならいいのよ。わかってるなら。ちゃんと話した方がいいんじゃない?そんなに悩まないといけないことなの?」
「た、たとえばよ?たとえば、モー子さんの彼氏が、アメリカに行くことになって『一緒についてきてほしい』って言われたらついていける・・・?」
「・・・それって、一時とかじゃなくて・・・」
「ずっと・・・かな?」
「い、いわれたの?」
「だから、たとえばだってば・・・」
「たとえになってないし・・・それこそ二人でよく話し合いなさいよ」
「私は話そうとするんだけど・・・向こうが応じてくれないんだもん」
(ダメな男・・・なんでこう、詰めが甘いのかしら)
奏江はそんなことをキョーコの最愛の人に向けて思った。
そして、それじゃあ彼のマネージャーはたとえばどうなるんだろう?と思ったりもした。
そしてしばらくして蓮のマンション前に到着した。
「とりあえず先に寝ちゃうことをお勧めするわ。飲み会の時アンタのことずっと見てたから」
「うっ・・・・・アリガトウ。おやすみなさい」
続く
そして最後の文章に限ってモー子さんの心配は現実の物になるのでした。←
次回限定。