キョーコは唖然としていた。
尊敬する先輩である、蓮の直筆の字が、はっきりいって読めない。
日本語かどうかも怪しい。
跳ねや止め、、点、払い、何にも見当たらないし、カタカナに関してはシとツが逆になってさえいる。
どう見ても日本語圏で育ったようには見えないが、こんな字を見れば、100年の恋も冷めるというもの。
ファンが失望してしまう。
キョーコは闘志を燃やした。
日本というのは不思議な国で、字が綺麗な人に品格を感じる。
どんなに顔立ちがよくても、字がきれいでないと一気に株は暴落するのだ。
蓮の悪筆を見た翌日、早速事務所で彼を捕まえたキョーコは仁王立ちで言った。
「敦賀さん!!!特訓しましょう!」
「特訓?」
何の?と首をかしげる先輩に、キョーコは心を鬼にした。
「日本人たるもの、字に品格がなければなりません!!!特にあなたのような顔の男はです!!!」
びしり!!と指を突きつけられて、渡されたのは漢字が薄く印刷された原稿用紙。
はっきり言えば、話すほうは違和感なく、そつなくこなせる様になっていた蓮は、字を書くことは後回しにしていた。
漢字などは、アルファベットと比べ、複雑怪奇すぎる。
そうやって、自分の芸名さえ書ければ何とかなったので、おろそかにしていたのが事実だ。
その芸名も難しい漢字のせいで、覚えるのに四苦八苦した。字画が多すぎる。
だが、よりにもよって、今渡された用紙には漢字しか見当たらない。
「・・・・これって?」
「般若心経です!」
聞きなれない単語に、後で携帯サイトで調べようとその単語を脳内に叩き込んでからもう一度原稿用紙を見る。
「262文字あります。これを毎日1行なぞってください!!!!」
「・・・・まいにち・・・。」
愛しい少女に突きつけられた試練。
「字の美しさは習得できる技術です。」
筆ペンも一緒に渡す。
「毛筆タイプと書かれたペンが、わたしは一番手軽で扱いやすいですのでこれはプレゼントです。」
基礎は今から叩き込むので、覚悟してくださいね?と好きな人ににっこりされて逆らえるものがいるのだろうか。
しかし、この何とか経の書かれた原稿用紙を見ると、げんなりするのも本音だ。
モチベーションがあがらないとやっていけない気がする。
「最上さん。これ、全部書き上げたらごほうびくれる?」
子供みたいに上目遣いに首を傾げられて、逆らえる女はいるのだろうか。
キョーコは自問した。
「わかりました。何がいいですか?・・・何でもいいですよ?」
言いだしっぺは自分だ。それにごほうび制にしたほうが確かに効率はいいかも知れない。
かつての自分がそうだったからだ。とキョーコはおもった。
だが、そのあとの蓮の言葉を聞いたとたん、彼女はしっかりフリーズした。
「・・・じゃあ、キスがいいな。」
思わず固まったキョーコをみて、蓮はしまったと心の中で舌打ちする。
本音が駄々漏れてしまった。
「・・・き、きす・・・?ききききすって・・・!!?」
しかし、言ってしまったものはもう取り返せない。
彼は必死に頭を回転させた。
「・・・天ぷらにするとうまいよね。」
にっこりと微笑む似非紳士に、キョーコが説教をしだすいつもの光景がそこにはあった。
「最上さん、がんばるからね。ごほうびたのしみにしてるよ。」
そうは言いながらも、今日も内心へこんでいる芸能界一いい男のヘタレな一日が終わった。
うん。気が向けば続く・・・やっぱり続かないかもwww
全然、ラストじゃない上に、ベタで微妙すぎるオチですみません。
完全にタイトル負けです。考えていただいたw sei様に申し訳ない(-x-;)
ちょっと、現在脳内小休止しております。本誌のあの、グシグシ近づく靴のアップからのシーンに引きづられそうで非常にやばいです。
大好物すぎる・・・あの一連のシーン。
次は、ほのぼのした話を書くか、ドシリアスにするか無駄にラブラブするか迷ってしまうくらい、本誌の最近の破壊力ハンパないですよね。
Σ(=°ω°=;ノ)ノ←な感じになりました。
気分転換にお絵かきでもしようかな。((>д<))