あれ・・・・。懲りずに書いちゃった。
うっかり続いています。ご期待に添えれるでしょうか?
現在進行形で現実逃避しておりますwスライド作るのってめんどくさいです・・・。仕事じゃなきゃやんない・・・w





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王都に戻ったレンは豪奢な執務室で、不本意にも仕えている王にに大笑いされていた。
「お前がそんな不覚を取るとはなぁ。」
「申し訳ありません。」

ひとしきり笑い転げた後、王はお気に入りの葉巻をくゆらせながら、少し思案する。
「・・・で、収拾をつけるためにここに連れてきたのか。」
「はい。」
賢明な判断だとは思えなかったが、ほかに手段を思いつかなかったし、騎士になりたいと希望している以上、隊長に面会してもらい判断を仰ぐべきだとヤシロと話し合ったのだ。

「さっき隊長からの報告をみたけどなぁ、あれは育たんかもしれないぞ。」
けれど、と王はソファに深く背を預けて言葉をつなぐ。
「ああいうタイプが大化けすることもある。肝も据わっているしな。」

だから、お前あずかれ。

一瞬何を言われているかわからなくて、レンは弾けたように顔をあげた。
「いや、しかし・・・」
反対理由を言いつのろうとして、レンはあの時彼女から短剣を取り上げたときに触れた小さな震える手を思い出した。

くずおれるようにへたりこんだ華奢な体も。

戦場の血なまぐささとは相いれないような少女だ。

つい考え込んだ部下に、これは命令だと追い打ちをかけてさっさと話を打ち切る。
「騎士見習いとしてお前が仕込め。話は以上だ。」
「・・・謹んでお受け致します。」

命令だとすれば受けないわけにはいかずレンは渋々承諾した。


そのころ、渦中の少女、キョーコはすっかり短くなった髪に手をやった。
我ながら思い切ったと思う。

覚悟を問われて、ほかに方法を思いつかなかった。
あの祭壇のまえで、復讐の方法がほかに思いつかなかったのと同じで。

王都の近衛騎士団の優秀さは、話に聞いていた。
精鋭ぞろいのエリートで、もし入れたら私を捨てたあいつを思い切り見下せる。
果たして安直ではなかったかと問われたら、安直だったと答えるしかないが、あの時はそれしか考えられなかったのだ。

髪を切ったのは愚かな過去の自分を捨てるために。

後悔なんてしていない。

一つだけ難点があるとすれば、女物のドレスが似合わなくなったことだけだ。

あの花嫁衣装は泥はねが付いていたとはいえ、王都への道中にあった町の古着屋でいい値で売れたため、少年の服数点とと実用的なブーツを買った。
あまり起伏のない体つきのため、そんな恰好をすると少年にしか見えなくなり、ますます、己の色気のなさを痛感する。

もちろん、もう恋なんてするつもりはないから色気なんかなくても構わないのだが。

しかし、もう少しくらいは成長してもいいのではないか。
上衣を指でつまんで首元から貧相な中身を覗き込みつつ、つらつらとそんな矛盾したことを考えていると、この部屋の主が戻ってきた音がした。


レンに与えられた宿舎の一室で、彼女は少年の格好のまま窓際の椅子に座っていた。
その姿を見て、レンはため息をつく。
こんな厄介ごとを拾うくらいなら、駐屯地への命令書など他人に押し付ければよかった。

「隊長からの辞令だ。今日から君は私付きの騎士見習いとなる。明日から訓練を始めるように。」
「・・・わかりました。」
「何かな?その間は?」
「な、なんでもありません。」
キョーコは内心驚いていた。
なにしろ、彼には嫌われているようなのだ。

あの出会いの時以来、魔王じみた怒りには遭遇していないが旅の間中ピリピリしていたのは事実。
ヤシロとかいう人が居なかったら、とてもじゃないが乗り切れなかっただろう。

まさか、そんな怖い人につくなんて考えてもみなかった。てっきり女性騎士につくのだろうと思っていたのだ。

けれど、この扱いが破格であることもわからないほど子供ではないつもりだった。
すっと立ち上がって、深く頭を下げる。

「よろしくお願いします。」

綺麗なお辞儀が、しかし、女性の使うものではないことに気が付いて、レンは眉をしかめた。
少年の服を着ていても少女にしか見えないというのに、ひざを折るだけの女性の礼はその服では不自然だとでも思ったのだろうか。
しかし、その実用的な服がかえって、少女と女のはざまにいる彼女を艶めかせているとは気が付いていないのだろう。

女性らしい柔らかな曲線がかえって強調されているようだ。
そこまで考えて、彼は思考を停止した。
(いやいや、違う!そうじゃなくて!そう!支給品!支給品を取りに行くんだ!彼女の。)

ほかの女性騎士はどんな服を着ていただろうか。
(・・・おもいだせない・・・。)
困ったことに全く思い出せないが、たぶんちゃんとした女物のドレスだから印象にないのだろう。
女性の服には全く興味がない。
だが、このまま少年の服を着させているのも何か不味い気がする。
(あの人に頼るか・・・。)
レンは、王のスタイリストの顔を思い出した。
彼にとって信頼できる数少ない女性のうちの一人だ。


レンはキョーコと視線を合わせた。
「では、行こうか。いろいろと取り敢えず揃える必要がある。」
彼女を促すと、半歩後ろを歩きながら、彼女の白いうなじをくすぐる短い髪が跳ねているのに気が付く。
思わず手を伸ばそうとして、それは適切な行動ではないと我に返った。

痛々しいと言ったら、怒られるだろうか。
レンは表情を曇らせた。



キョーコを伴い訪れた王のスタイリストのアトリエで、一応覚悟はしていたものの、やはり大爆笑されて、レンの機嫌は下降線をたどっていた。

彼女、キョーコはとりあえず採寸で別室にいてよかったと胸をなでおろす。

「何でもいいと思うけど、レンちゃんがいやなのねぇ?わかった。任されてよ?」

ウインク付きでミス・ウッズが鮮やかに了承したのが救いだといえば救いだ。
「謁見用の正装用と、正晩餐用。デイドレス。乗馬服。あとは普段着と小物類ね。そんなものかしら。」
それと、彼女の意見も聞かなくちゃね?と念押しされて、レンは後を任せ先に帰ることにした。

宿舎に先に一人で戻ったレンは、与えられた自室にはいると簡易ベッドに腰を下ろした。
自分付きの騎士見習いとはいえ、女性である。
彼女の部屋や、それ以外も自分が手配しなければならない。
こんなに男だらけの宿舎にいつまでも少女を置いておくわけにいかないが、だからと言って、ほとんど宿舎で寝泊まりし帰ることは数少ないとはいえ、郊外にあるレンの自宅に住まわせるというのも、ちょっと近所に誤解を招きそうである。

例え、”愛人を囲っている”といったような。

それは彼女の評判にもよくない。


ほかの女性騎士は、それぞれ下宿先があるようだ。気にしたことはなかったが。
(ヤシロさんに相談するか・・・。)



「・・・というわけです。お願いできますか?ヤシロさん」
ちょうどタイミングよくレンの部屋のドアをノックしたヤシロを招き入れながら、レンは先ほどの国王の命令を伝えた。
「ああ。そっちはまかせとけ。」
にやあと笑ったヤシロの意味深な顔を、レンはしっかりバッサリ無視する。


もう、これ以上笑いものになるのはごめんだという、レンの内心を思いやったのか、ヤシロがそれ以上突っ込まなかったのが幸いだった。
なにしろ、彼女に会ってからというもの、妙に落ち着かない。

あの、髪を切った時の彼女の瞳の強さが頭をよぎる。
その時止められなかった己への後悔がレンの胸に巣食っているのだ。常に。

女性にとって長い髪がどんな意味を持っているかは知っている。
なのに躊躇もせず、潔く髪を切った彼女に目を奪われた。
自分の髪を彼女がつかんだ瞬間、何をするつもりか察知したというのに、動けなかった。

圧倒された、という表現がぴったりだろう。
けれどそれだけじゃない何かが、胸の隅に引っかかっている。

レンはひとつ頭を振って余計なことを考えないようにやるべきことを数えた。
そろそろ、めんどくさい書類の束が来ているだろう。

そう思うといつもは気が重くなるはずだが、逆にいまはそれがありがたくて、レンはヤシロと共に自室を出るといそいそと執務室に戻った。