えっと、ご無沙汰しております(。-人-。)
かろうじて生きておりました。

忙しさにかまけて、更新がとどこおっており大変申し訳ありません。

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視線の先の旧友の背中に、国王は問いかけを投げた。
その旧友である男は、それに、ただ、首を横に振った。

「・・・それでいいのか・・・?クー。」
「ああ。妻も理解してくれてるよ。」
「・・・・・それも怖いがな。」

クーと呼ばれた男が振り向いた。
頬には妻を思い出した時の微笑みがまだ残っている。

「わたしがどう答えるかなんて、とっくにあなたにはわかっていたんだろう?」

その瞬間、国王が浮かべた表情は、苦笑としか思えないものだった。
「相変わらずだな。お前。」

クーの瞳は輝いていた。

国王は静かに諦めの息を吐いた。
「お前の妻に責められるのは、勘弁してほしいんだがな。・・・それに・・・奴に責められるのも、な。」
国王は小さくつぶやいた。
「・・・やつ・・・?」
「おまえの愛する息子で俺の名付け子だ。」

「・・・ははは、それは私の息子を攫った罰だと思ってくれ、我が君。」
「ずいぶんな言い草だ。」
「あのとき、妻に責められたのは私だ。今度はあなたでもいいはずだ。」
「・・・・。」

王は静かに息を吐く。
「・・・では、頼む。」
「御意。」
言われなくても。と続けて、そのまま去る友人の姿を国王は苦笑を持って見送る。




青空が抜けるようで、キョーコは思わずスキップしていた。
今日は約束したお茶会の日だ。

「あ、そろそろ時間かな。」
教会の鐘の音が午後の訪れを告げるのを後に、キョーコは変装して約束した場所に向かう。
そこで待ち構えていたのは、あのとき彼女をレンのもとへ導いた国王の側近だった。
静かに頭を下げる彼の後について歩きながら静かな城内を歩く。
キョーコは少しためらったが、やはり声をかけることにした。
「あの、あの時はあまり挨拶もできず申し訳ありませんでした。」
「・・・?は?」
「あの、嵐の前に宿舎に案内してもらった時です。」
「ああ、お気になされませんよう。」
側近はその異国風な面差しに微笑を浮かべ優雅に礼をする。
「あの方がご無事で我が主も安心しておりました。」
「・・・我が主って・・・国王様?」
「ええ。そうです。」
キョーコは少し目を見開いた。国王がたくさんいる騎士の体調のことまで気に掛けていることに少なからず驚いたのだ。
けれど、あの国王であればそれでもおかしくないかと思い直し、一人納得する。
「申し訳ありません、出過ぎたことを申しました。」
キョーコの無言を別の意味にとったのか謝る彼に、キョーコは慌てて顔の前で手を振る。
「いえいえ、大丈夫ですから!」
「そうですか。・・・では参りましょう。」


案内されたのは王女の自室から向かえる箱庭に設えられた東屋。
箱庭と言っても、騎士の訓練場ほどの広さは優にある。
色とりどりの花が咲き乱れる箱庭に、キョーコは瞳を輝かせた。
「うわぁ・・・まるで妖精が出てきそうな雰囲気!」

名を呼ばれるまで、キョーコが空想に浸っていたことは言うまでもない。

「キョーコ!」
そこには、すでに王女とともに女官であるカナエがいた。
三人ではしゃいで挨拶をかわす。
主にはしゃいでいたのは2人だったが、クールな表情のカナエも頬は上気していた。
それぞれに設えられた席に着きながらも話は尽きない。

そして楽しいお茶会が始まった。

様々な菓子がならぶ。
「これ、わたしが焼いたんです。」
キョーコは、一つの菓子を手に取りながら言った。
「え、ほんと?!」

細工も凝っているし、焼きむらもないその菓子の出来栄えはまさに玄人はだしとでもいうもの。
「・・・あんた、意外な才能があるのね・・・。」
えへへと照れ笑いするキョーコに、カナエが驚きの表情のままつぶやく。
「たくさん焼いたのでどうぞ食べてください。」

「ねぇ、キョーコ、私にも作り方教えて!」
和気あいあいと話は弾む。
「いいですけれど姫様、ご自分で焼かれるなんて、お料理なんてしたことないでしょう?」
「キョーコが教えてくれたら出来るわ。それに、ちょうど新しい慈善事業をしなければと思っていたの。」
「ええ、私でいいなら教えますが、慈善事業とはいったい・・・?」
「慈善事業は、貴族の義務よ。王族でも例外はないとおじいさまはいつもおっしゃっているの。」
聞けば、彼女は幼いなりに孤児院等に定期的に寄付しているらしい。
「まだ、子供だと甘えていてはならないわ。・・・それに、大嵐の後の慰安に何がいいか考えていたの。
本で読んだけど手作りは真心の証とされるのですって。わたくしの手作りなら喜んでもらえるのでは・・・って。」
キョーコは思わず感動して、手を打ち合わせた。
「では、三人でたくさんいろんなお菓子やパンを焼きましょう!」
「三人って私も?!」
カナエが叫ぶが、すでにキョーコとマリアはひとしきり盛り上がっている。

カナエは諦めの表情をうかべ、二人の喧騒に混じっていく。
少女たちの笑い声は東屋を彩った。


楽しかった時間はあっという間に過ぎ、キョーコは名残惜しいままにいとまを告げた。
今度は一人で城の長い廊下を歩く。

回廊の角を曲がった時だ。
その先に人がいるとは思わなかったキョーコは驚異的な反射神経で立ち止まったため、かろうじて相手にはぶつからなかった。
「おっと・・・・。」
「すみません。」
思わず謝る。
そうしてキョーコは、道を譲るため少し脇に寄った。
その動きが目を引いたのだろう。
相手は立ち止まった。
まじまじと眺められるのがわかる。

その視線はあまりに不躾だったため、なにか言ってやろうとキョーコは視線を上げた。


目の前にいたのは、どう見ても仕立てのいい服に包まれた貴族の子息。
思わず眉が寄る。
なんだか厄介ごとの匂いがして、キョーコは後ずさった。


時間は少し前にさかのぼる。

レンは数日前から、ひそかに国王とコンタクトを取るべく、知っている限りのつてをたどっていた。
普段であれば、連絡をするとすぐ返答があるが、今回に限っては、なにもない。
(・・・何をたくらんでるんだ、あの人は!)
いらいらとしながら返事を待つ。
ようやく会える算段を取り付けたが、指定された時間はあまりに短い。

人目に付かない王宮の回廊の隅で、王を待ちながらレンはうろうろと歩き回る。
怪我の影響で、まだわずかに引きずる足に痛みを感じてレンはしばし動きを止めた。
偶然を装って声をかけられるのを待つしかないこの立場に、不満を持ったことはない。・・・今までは。
状況がこんなにも、ままならないのは、自分のせいなのもわかっている。

その耳にようやく届いた衣擦れの音に振り向くと、待ち人の姿を認め、臣下の礼を取る。
「またせたな、レン。怪我はどうだ。」
「順調です。ご心配をおかけしました。」
地面に片膝をつき、深く頭を下げながら、レンは内心を押し隠して穏やかに答える。

「で、今日は何の用だ?お前が私に会いたいというのは珍しい。」
「お分かりのはずでしょう。あの人のことです。」
レンは顔を上げた。
己の君主の目を見上げる。
そこに浮かんだ硬質な光に、国王は表情を和らげた。

「・・・あの人に会わせてもらえますか?」

「だめだ。かけられている疑いが晴れるまでは。」
「・・・・それは・・・!」
「息子を殺したという殺人罪の容疑が晴れるまでは・・・だな。」
からかわれているのかと、レンは目の前の君主の顔色を探るが、そこには感情をうかがえるものは何もなかった。

レンは珍しく言葉を失った。
国王は、喉の奥で小さく笑う。
そして、言った。
「今のお前には出来ることはない。」
穏やかに紡がれた言葉は、予想外の衝撃をレンにもたらした。
自分の一言が与えた影響を十分に見て取って、国王は、親友の顔を思い浮かべた。
「公爵自身が決めたことだ。」
間違いなく目の前の騎士にその面影を重ねて、王は言葉を連ねる。

だが、彼が予測していた反応とは違う答えが目の前の青年から返ってきて驚いた。
「・・・それでも、会わせてください。お願いします。」
その口調のどこにも、レンの、あの妙に老成した物わかりの良さはなかった。
国王は目を細めた。


今までであれば、そんな反応はしなかったはずだ。
迷いは見せるとは思っていた。
けれど最後には物わかりのいいふりをして身を引く、そんな性格をいつも腹立たしく思っていたけれど。

育ちの良さからくる鷹揚さ・・・とでもいうそれが、国王の知るこの青年の常であった。
もっと若者らしくがつがつと、無理だと思っても青臭くぶつかっていくべきだろう。そう、何度、説教したかわからないほどだ。

「どうした、レン。おまえらしくないな。」
首をかしげながら、国王は問う。
「・・・そうですか?」
青年の低い声。思ったより感情を殺せていないことに、実は本人が一番驚いているのだろう。国王はそう読む。

「ま、お前にとっちゃいい傾向だな。だが、会わせることはできない。理由はわかるな?」
押し黙るレンの葛藤に、気が付かないふりで、王は頬を緩めた。
「・・・濡れ衣だと一番わかっているのは、あなたのはずだ、我が君。」
ようやく発せられた声は、彼の迷いをそのまま表していた。
「そうだな。」
だが、大貴族だろうが何だろうが告発された人間を、国王が権限を使って勝手に無罪放免にはできない。
それはしてはならないことだ。
そんなことをすれば、国家としての基盤が揺るぐ。
告発されてしまった以上、裁きの場を作らねばならない。
”法”とはそんなものだ。
そして、目の前の青年はそんなことはわかりきるほどわかっている。


ただの騎士が、罪を告発され城に軟禁されている貴族に会いに行くことの不自然さも承知の上。
だから、こうして国王に頼みに来た。

もし、秘密裏に会ったとして、万が一そのことが何処からか洩れたら、すべてがややこしくなる。

それでも、会わせてほしいと頼みに来る。
(・・・ずいぶんと、いい方向に変わったな・・・。)
ひざまづいたままの姿勢で青年が僅かに俯き落とした視線。
風が揺らした髪が、その目線を隠した。

押し殺した激情が滲む、握りしめた拳。
きつく結ばれた唇。
そして、再び顔を上げた青年の強い視線を受け止めて、国王は顎を上げた。
「・・・告発したのは、一体誰ですか・・・?」
「それを聞いてどうする?」
皮肉を含んだ口調で国王は浮かべた苦笑を一瞬で消した。
「一介の騎士が出来ることは何もない。違うか?」
「!!」
それは静観を命じるセリフだった。
これで会見は終わりとばかりに国王は背を向ける。
「では、私はこう見えても忙しいのでな。また会おう。レンよ。」
レンは深く頭を下げた。
はじめから答えはわかっていた。
彼の立場で、ほかに何が言えるというのか。

(・・・我がまま、だな、俺は。)
どう言われるかわかっていたのに、何かせずにはいられなかったのだ。
もしかしたら・・・などと甘い目算も心の中にあったことは否めない。

それもこれもすべて元をただせば、原因は自分だ。

レンは、しばらくそのままの姿勢でいた。
国王はこの件に関して、一番簡単な方法をとらなかった。
そのかわり、レンを蚊帳の外に置いた。

普通の民が、たとえ、噂を根拠として告発しても、証拠がない以上、門前払いだろう。

そこから導き出される結論は、ただの推測だとしても、よくない想像を生んだ。
一介の騎士には、それこそ、手も出せないような人物からの告発だとしたら、想像しうるべきなかで最悪の事態ではないだろうか。

間違いなく最悪の。

レンは空を仰いだ。

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ふふふ。またもや、風呂敷は広げるばかり。そして、主役二人は絡まない・・・・
こんなに放置しながらこの体たらく・・・すみませんんんんんっ(((( ;°Д°))))