お久しぶりです。
ネットを使うと表示されるバナー広告がアンダーアーマーとかになっている今日この頃。
体力作りに始めたジョギングですが、ちょっとはまってます。

趣味はジョギングと胸張って言えるまでにはまだまだかかるかな。

では、ウッカリ始まったシリーズ(長すぎる)続編です。
そろそろ見直さないと、なんか、前の話をわすれてきたぞ・・・老化現象の始まりですか。そうですか。
o(_ _*)oチーン


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レンは、思ったよりも痛む足に気を使いながら王城から帰ろうと歩いていた。



これは今夜は腫れるかもしれない。

筋肉を少し切除しているためか、一日立ったりしていると浮腫むのだ。
酷く痛んで眠れないくらいになるため、少し気を付けるようにしていた。

馬車を使えばいいのだが、筋力を戻すには動くしかないことを経験的に知ってはいる。
だからと言って辛くないわけではない。


(・・・動き過ぎって、怒られるかな・・・。)
瞼に浮かぶのは、彼女の怒っている顔。
何でもない時にふと浮かぶ彼女の姿に、苦笑を浮かべる。
もう、すっかり馴染みになったその感情は言葉にすると陳腐だ。

少し休もうと立ち止まり、周囲を見回す。
普段は気にしないような場所に、ひっそりと木々の茂みが見えた。
近づいてみるとよく整備されている公園であることがわかり、休める場所を探しレンはそちらに方向転換した。

嵐の爪跡は、よく見ないとわからないくらいになっている。
そこここに木々の撤去された跡は残っているし、木立はまばらになっているが、それでもある程度は整えられていた。

足を踏み入れて見渡す。
(・・・誰もいない・・・か?)

視界の端に、人影。
その服の色に引っ掛かりを覚えて、レンはもう一度視線を据えた。


雰囲気は違っているが、その人物が着ているドレスの色に見覚えがあった。
王のスタイリストのところで、彼女のドレスを頼む条件にと言われ最初に選んだ・・・というか強引に選ばされた生地に似ている。

やはり、その生地もドレスも間違いなく自分が選んだものに違いない。
あの時、ドレスの型も無理矢理決めさせられ、にやにやとしたスタイリストに散々からかわれたのだ。
見間違えようがない。

たしか、今日は訓練を休んで、女官をしている友人に会いに行くと言っていたはずだ。

だとしたら、ここにいるのは、王城からの帰りに違いない。

ならんでいた織物の中で目を引いたものを指さし、自分が選んだことは言うなと口止めしておいたのを思い出す。
美しい地紋が入った、しかし華美ではない淡い色合いが彼女に似合いそうだと直感したのだが、それはどうやら間違いではなかったようだ。

(・・・・キョーコ・・・。)
彼女の名を声に出さず呼ぶ。
後姿だが、少し沈んでいるように見えて、レンは声をかけるべく近寄って行った。

ここからは横顔しか見れないが、髪は長く、ゆるく結い上げられている。
あれが彼女の初任務の時使った鬘だろうか。
もし、キョーコから任務中の報告を受けていなければ、ここにいるのが彼女だとは、すぐにはわからなかったかもしれない。

後日改めて任務の報告を受けたときに、実は紆余曲折を経て王女の女官として出仕していたと聞いたときは驚いた。

ゆっくりと近づく。
やけに大人びて見える彼女に少し動揺する。
化粧のせいだろうか。

子供だと思い込もうとしていたが、実際は、もうそうではないことを突き付けられているから・・・だろうか。

物思いに耽る彼女は、他人の気配に頓着していないようだった。
無防備な横顔を真っ直ぐみつめたまま、レンは声を出そうと息を吸い込んだ。


いきなり振り向いた彼女が、バランスを崩しよろけるのを、とっさに腕を伸ばして抱き留める。
目が合う。
彼女が、自分を認識したと確信した瞬間、無意識に強く抱き寄せてしまい、我に返って力を抜いた。

レンは、彼女を抱き留めた手を離した。
自分でも違和感を覚えるくらい殊更にゆっくりと。

いつもより大人びた表情の中で、不安定に揺れる彼女の瞳に、よからぬことを考えた自分がいる。



レンの名前を小さく呼ぶ、その唇をなぞった視線に気が付かれただろうか。
レンはそっと彼女の表情をうかがう。

うっすらと染まった頬。
小さく開いた口の中に赤く濡れた舌がチラリと見えた。

思わず伸ばした手は、しかし、その落ち着き先を見つける前に、なにかが落ちたかぶつかるような大きな音に遮られ、彼女に届くことはなかった。
びくりと震えたドレス姿の彼女は、気まずい沈黙を破るようにもごもご言い訳を述べるとそそくさと去っていく。

レンはそれを止めなかった。

そうして、口から洩れた盛大なため息とともに、頭を抱えて座り込んだ。




心の中で盛大な悲鳴を上げながら、キョーコは全速力で走った。
(何しようとした!何しようとした!?私・・・!)

ゆっくりと離された彼の体に・・・合わさったままの瞳に。
誘い込まれるように、自然に開いた自分の唇に這わされた男の視線に。

それが合わさった時の感触を思い出した。
意識のない彼の唇に触れた時の。

ふらりと彼に向かって傾いだ体を、あの人はどう思っただろう。
気が付かれていないと信じたい。

大きな音が、自分のなけなしの理性を取り戻してくれてよかった。
そうでなかったら、縋り付いてしまっていたかもしれない。

縋り付いて、もう一度触れることを望む唇を差し出して、さらに、あっけなく拒否される光景を思い浮かべた。

(だっ、大丈夫!セーフ!)
きっと、気が付かれていない。
拒否されることはあっさり想像が付いたが、同時に、拒否されなかった時の光景を思い浮かべてしまい、一人で慌てた。
(私のバカバカ!なんてこと考えるの!)
こんな時、自分のたくましい想像力が恨めしい。


そんなはずはないと、いくら否定しても浮かんでくる、やや背徳に彩られた想像に百面相をしながら、キョーコは下宿先へと全速力で逃げ帰った。






回廊に、一定の速度で響く靴音が、一つの重厚な扉の前で止まる。
その前に立つ二人の衛兵に目をやると、流れるような動きで扉が開かれた。

足を踏み出す。
十数年もたち、すでに内装も変わっているかと思ったが、そこはあまり変わっていなかった。
所々に置かれた私物らしきものが増えただけで、変わらない古びたインクと葉巻の香りに懐かしさを感じる。




ぎいっと古い執務席の椅子が軋んだ音を立てる。
誰かの立ち上がる気配に、男はすかさず臣下の礼をとった。
「・・・我が君。お久しぶりでございます。」
「堅苦しい挨拶はよしてくれ。・・・・兄上。」

立ち上がるように促され、エルトラはそれに従う。
懐かしい呼び方に、胸の奥によぎる感情が一瞬彼の口もとを歪ませた。
「・・・アルジ・・・。国王たるもの、常に気を抜くなと父上に言われていただろう。」
「まぁ、な。だが、今は私が国王だ。少しくらいはいいだろう?」

エルトラは肩をすくめる。

「まったく。その呑気なところは相変わらずか。」

「はは。まぁそう言うな。兄上。」
国王は、半分だけ血の繋がったこの兄と一緒に王宮で育てられた。

エルトラは母の身分が低かったため、王位継承権は低くかった。
先に生まれたとはいえ、彼は自分の立場をしっかりと認識しており、正妻の子であり、王位継承権第一位であったこの異母弟とはきちんと一線を引いて接していたのだ。

しかし、それを許せなかったのはこの異母弟のほうだった。
なにかと後をついてくる少年に根負けして、一緒に過ごすうち、いつしか二人は本当の兄弟のようになっていった。

国王の血筋である彼は、今、公爵の身分を与えられ己の領地の管理をしている。

「兄上がなかなか領地から出てこないんじゃないか。・・・そういえば、少し痩せたか?」
「そうか?」
エルトラは眉を上げた。
体に合わせて作られた仕立てのいい服が、少し余っているように見える。
「嵐やらなんやらで、ちょっと忙しかったからな。」
自分の体を見下ろし、何でもないことのように彼は首を振る。
「そりゃ、てんてこ舞いだった。年には勝てん。ま、すぐ戻るだろう。」
差し出された葉巻を断って、エルトラは代わりに近くのサイドボードからウイスキーの入ったデカンターを取り出した。

二つのグラスに注ぎながら、先代のころから変わらない、時間が止まっているかのような執務室を眺める。
振り向いたエルトラの手からグラスを一つかすめ取った弟のしぐさも、何もかも変わらない。

ここに忍び込んで、いたずらをしては叱られていた。
少年時代の傑作な悪戯の数々を思い出していると、国王となった異母弟も同じことを思い出しているのか、話し出したら止まらなくなり、二人でひとしきり盛り上がった。


「おっと。本題を忘れてた。あの嵐で兄上の領地はどうだった?」
「それが本題か?・・・被害は報告したはずだが。」
眉をひそめて、エルトラは自分のグラスの酒を飲み乾す。
「いや、書面ではわからないこともあるだろう。私は兄上から直接聞きたいと思ったんだ。」
久し振りに顔を見たかったし、と、国王は悪戯をする前によく浮かべていた笑みで、自分の兄を見た。
「ああ、被害は予想額を少し超えたくらいで済んだ。人的被害も少なかったな。」
仕方ない、と諦め口調で、エルトラは淡々と事実を口にしていく。
「領民の今年の税は免除することにしたよ。」

「妥当だな。国税も一年は免除するから、安心してくれ。・・・それと・・・。」
おもむろに切ったセリフの先をエルトラは視線で促す。
異母弟はこんな真剣な顔をすると、父である前国王とよく似ていた。

自分は明らかに母親に似ている。
エルトラは感慨にふけりながらも、話の続きを待った。

「兄上の領地は、確かアカトキ公国との国境に面していたな。」
「・・・いくら俺でもあの国の被害まではわからんぞ?」
国王のひそめられた声に、少し真剣みが混じった。
エルトラは声の調子で、これこそが自分がここに呼ばれた本当の理由だと気づく。
「最近きな臭い動きをしていると聞く。・・・気を付けてくれ。」
「きな臭い・・・とは?」
「城下に出入りする業者に、アカトキ特有の短剣を持ったものを見かけたと報告があった。あと・・・」
それは大したことのない報告の寄せ集めで、よくある内容ばかりだった。
だが、それは頻度の問題である。

いま、この時期に、そんな報告が増えていることが問題なのだ。

「・・・そうか・・・。わかった。俺のほうでも調べておく。」
小さく首肯して、エルトラは2杯めの酒をグラスに満たした。



エルトラとの会見を終えた国王は、彼の退室後、人払いを命じると、窓から外を眺めた。
空は、澄んでいる。

自分のこの杞憂が、本当にただの杞憂であってほしいと願いながら、そっとグラスを傾け、残っていたアルコールを一気に喉に流し込んだ。



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さて、どこに進もうとしているのかわからなくなってきたこのシリーズ。
ラブそっちのけですが、オジサンたちって書いてて楽しい。

もうばれてるかもしれませんが、オジサンが大好きです。

いや、でも少女漫画だよなぁ・・・と自分に言い聞かせております。


いつもいいねを押してくださったり、コメントをくださる皆様。ほんとうにありがとうございます。
あんまりお返事できませんが、いつも励みにしております!

言い尽くせないくらいのたくさんの感謝をこめて(^з^)-☆Chu!!