彼女の兄と一緒に食事をしてから10日ほどが経過していました。

兄ははっきりとでは無いですが、私との交際に反対を示したと

思っていましたが、彼女はその後、別に気にする風でもなく、

平穏な生活に戻っていました。私ももちろん敢えてその事を

蒸し返したりはしませんでした。


「兄がもし結婚できたとしたら、(春節を待たずに)すぐに故郷に

帰るね」と彼女は言っていました。それはそうだなと思っていた

ので、時折、「兄の結婚話はどうなったの?」と聞いていました。


そうしてとある日、「相手の両親から要求があって、結婚する

為にはお金が要るみたい」という内容が返ってきました。

昨日書いたとおり、男性側が色々工面しなければならないと

いう訳でしょう。


この話が出た時点でいやな予感がしない訳がありません。

駐在ももう長く、こちらの文化をそれなりに勉強している

訳ですから。


案の定「兄がお金を貸して欲しいと言っているの。協力して

くれない?」と来ました。


ひょっとすると、予めこの事態を予想して私と食事したのかも

知れません。しかしそれなら、あの帰り際の態度はなんだった

のか?単なるプライド?メンツ?なのかもしれません。私は

この辺の中国人男性を低く評価しています。


「兄として妹との交際は反対はするけど、金は貸してくれ」と

いう理屈なのでしょう。貸して欲しいと言ってきた所がポイントです。

この時は貸して欲しいといいながら、実際には返すつもりが

無い可能性が非常に高いと思いました。嘘は中国人にとって、

自分や相手のメンツを護るためなら積極的についても良いと

考えているほどです。


そこで、まず私は、「兄は私の事が嫌いなはずなのに、

どうしてそんなことを言ってくるの?」と聞いてみました。

すると彼女は「そんな事一言も言っていないじゃない!」と

反論してきました。彼は私との交際を反対しつつ、どうしたら

お金を私から取れるかを考えている訳で、この一連の

やり取りは、するだけ無駄で結果は分かっているのですが、

やはり私としては釈然としません。正直「結婚する時ぐらい

自分の力でなんとかしてみやがれ」と思うわけです。


まあですが、「幾ら貸して欲しいの?」と聞いてみました。

私は今回の春節で何も無くても彼女に故郷の母親に

渡すお土産として5000元程度は持たせてやるつもりで

いました。彼女は、私があげている毎週500元の生活費

(昔は400元だったのですが、100元多くなりました)だけで

生活し、自分のバイト代は全額母親にあげると言っていました。

毎週500元なら通常の中国人らしい生活をするのには

まったく困らない訳ですが、それでもバイト代に手を

つけない所は評価できます。


しかし結婚資金となると、数万元単位と思わざるを得ません。

かなり恐る恐る聞いてみたわけです。彼女もさすがに

言い出しにくいのか、「幾らなら貸せるの?」となかなか

金額を明示しません。しかしここは交渉事です、私には

とある考えがあり、先に金額を提示するのはあまり良い

展開にならないと思いました。


何度となく聞いてやっと50000元(約70万円)という

金額が出てきました。やはり高いです。私は一旦返事を

保留し、「今中国に持ってきているお金を調べるから1日

待って」と言ってこの話を一旦棚上げしました。


私は現地の会社から人民元で給料の一部を貰っていて、

残りは日本円で日本の銀行に振り込まれます。しかし

現地でもらっている給料だけでは足らないので、日本に

帰ったときに日本円を数十万円持ち帰ってきて、月に

1回程度両替しながら生活をしています。


この時はもうすぐ春節で一時帰国をするため、日本円は

使い切っても良いと思っていました。1日待ってもらったのは、

実はわざとで、あんまりすんなり渡したのではかさに掛かって

こられる事を予防しようと思ったからです。


そうです、私はこの話が最初に出た時点で、いくらかのお金を

あげるつもりをしておりました。それは兄に上げるのではなく、

小芳にあげるというつもりで渡そうと思っていました。


もう1つ、「貸してほしい」と言われましたが、こんな言葉は

まったく当てにしていないので、これまた初めからあげる

つもりでいました。それをこの際活用しようと思いました。


すると次の日のお昼休みに彼女からメールが来ました。


「お願い。協力してあげて。もし貴方が貸してあげなかったら、

お母さんがそのお金を用意しなければならない。私は

お母さんにこれ以上の苦労をかけたくないの」


このメールがクラブの小姐からなら、まあ例によって

お涙頂戴的な詐欺商法のようなものですが、小芳とは

もう9ヶ月経ち、ずっと一緒に生活し、その生活ぶりを

見てきました。そりゃ若いので、馬鹿な事も言いますし、

喧嘩もしますが、ここまでマジメにやってきていると私は

思っています。


彼女のためにあげようとすでに思っていました。


しかし50000元はいかにも高すぎます。そこで、私は

「貸す」を「あげる」に昇格させ、金額を20000元に

減額して提示する事にしました。


「すぐに用意できるお金は20000元しかない。これを

貸すのではなく、あげるからそれで了解して欲しい」と

伝えました。「返すって言っているってば」と言われた

のですが、本当にまったく当てにしていないので、

「私はお金を貸すときは戻ってこなくても良いと思える

金額しか貸さない。50000元はちょっと高い。20000元で

わかって欲しい」と言うと「うん、分かった。ありがとう」と

なりました。


20000元、約30万円です。たしかに安くはありませんが、

海外駐在していて海外手当ても結構貰っているので、

現在中国での給料とは別に日本へ振り込まれる給料よりも

小さい額です。そんなことは勿論小芳には伝えていませんが、

まあ何とか払ってあげられる金額かなと思いました。

これ以上言われてもさすがにもう払いませんが、今回は

兄ではなく小芳にあげるつもりで出しました。


中国人からしてみれば20000元といえば、ホワイトカラーの

25歳(新卒に近い)の月給ですら3000~4000元ぐらい

なので、半年分以上の収入と言うことになり、恥ずかしくない

金額だと判断しています。


ちなみに実はさらにもう1つ、条件を出していました。


「このお金は、貴女の彼氏である日本人からもらったという事を

きちんと母親に伝える事」

これを条件に出しました。すると彼女は「分かった。

お兄ちゃんに聞いてみる」と言って、翌日「それで良いって。

ありがとうと言っていた」となりました。


(続く)