国際ニュースを見ても溜息が出る出来事ばかりになっているこの頃。

アジアや中東ではかつての体制復活を目論むマルコスやカダフィの子息が次期トップの有力候補ともてはやされる。世の中、一番理想的な社会は「経済も治安も安定した民主国家」。だけど二番目に理想的と思われているのは「経済も治安も安定した独裁国家」になってきており、経済や治安がおぼつかない国々では二番目だって大歓迎な雰囲気があるのだろう。わからなくもないが、それで自由を捨ててしまっていいの?と、モヤモヤ感が残る。

前置きはこの辺にして前回に引き続き、アジア・ディクテイターズ・カップ後編は中央アジア・中東地区決定戦。揃いに揃った悪名高きオッサン達を茶化しにいきましょう。あくまで遊びですよ。

 

赤文字の人物がいたら、それは前回,つまり11年前も出場した選手です。

【中央アジア地区決定戦】

 


★銅メダル★ カディロフ・チェチェン首長(軍事政権)
元独立派で後にロシアに寝返った軍閥のリーダーを父に持ち,30そこそこで共和国指導者に。プーチンに忠誠を誓いさえすれば共和国内で何をやってもよし、という密約があったのか絶対権力を奮い放題。人権改善を訴える人々や性的少数者には自ら率いる軍閥を使って根絶やしにする程の弾圧を行い、時にはプーチンの政敵暗殺にも関わって仁義を果たす姿はマフィアそのもの。ロシア本土顔負けの独裁国家が事実上独立したような状態。

 


★銀メダル★ アフンド・アフガニスタン首相(イスラム原理主義政権)
政権掌握後2,3か月にして最短記録の銀獲得おめでとうございます。そもそもあなたに独裁的権力があるのかもよくわかりません。アクンザダ師、バラダル師、ハッカニ師?もっと権限持ってそうな人がゴロゴロいそうですが、とりあえず権力バランス上の妥協点からトップになったのだと思います。ここはタリバンという団体戦としてのメダルでしょうね。表向きソフトな呼びかけをしていても、女性や音楽家、外国通、少数民族等が弾圧、殺害されるニュースがあちこちから流れてくる所、20年前の恐怖支配から変化は見られず、明るい未来は全く感じられません。

 

★金メダル★ ベルドイムハメドフ・トルクメニスタン大統領 (社会主義政権)
前職は絵に描いたような暴君で、「中央アジアの北朝鮮」という異名を欲しいままにした。現職は就任して日が浅かったから少しは現実的になるのかなと前大会では思ったけど、あれから10年、やはり前職と対して変わらない様子。さすがに自分の黄金像は作らんだろうと思ってたけど見事作ったし。しかも中世の王様じゃあるまいし騎馬像を。ABUフェスで聴く限りポップスにさえ彼を讃える歌詞があるし。永世中立国って聞こえはいいけど、やりようによっては閉鎖的な独裁国家を作り易いんだな。ちなみにコロナ感染者は当初からゼロ。異論は一切認めません。

(入賞)

ラフモン・タジキスタン大統領(社会主義政権)
ジャパロフ・キルギス大統領(右派民族主義政権)
トカエフ・カザフスタン大統領(開発独裁政権)
ミルジヨエフ・ウズベキスタン大統領(社会主義政権)
カマロフ・カラカルパクスタン議長(社会主義政権)

アリエフ・アゼルバイジャン大統領(社会主義政権)
タリボフ・ナヒチェバン議長(社会主義政権)

 


【中東地区決定戦】

 


★銅メダル★ エルドアン・トルコ大統領 (右派民族主義政権)
元々はイスラム原理主義政党の出身ながら、その中でも穏健かつ合理的なグループで新党を作り、ほどよくイスラムと民主主義を共存させたモデルケースとしばらくはもてはやされていたのに、どこで道を間違えたのか。クーデター未遂辺りから自分に都合の悪い人間を次々に投獄。首相から大統領になって更に権限を強化させる彼は一体どこへ行きたいのか? 厳格なイスラム国家と言うより目指すはオスマン帝国の復活? 自由だった国が強権化した2020年代の典型例。

 

★銀メダル★ シーシ・エジプト大統領 (軍事政権)

ムバラク打倒までのあの熱気は何だったのか。ムバラク政権の母体である軍部は中立を装い、「アラブの春」を静観することでポイントを稼ぎ、選挙で勝ったイスラム原理主義勢力による新たな強権と戦う名分でクーデターを敢行。あっという間に軍部独裁を復活をさせてしまった。しかも一定数の民衆の支持も得た上で。こう見るとエジプト軍部ってなんて計算高いんだろうと思うけど、いずれシーシ体制にガタがきたら、軍部は彼のために体を張らず静観するのでしょうね。彼がしたように。

 


★金メダル★ アサド・シリア大統領 (社会主義政権)
内戦では政権崩壊まであと一歩の所まで追い詰められたもの、最後はそれによりアメリカが得るものよりも、ロシアが失うものの方が大きかったということでロシア全面介入。40万人の犠牲者と600万人の難民を生み出し、「アラブの春」をバッドエンドにして今なお権力を維持。父アサド的な上手い駆け引きでデモを静かに治められれば、欧州の移民排斥やイスラム国の台頭といった最近の諸問題は激化しなかったのでは?と思うも後の祭り。最初のデモで子供さえも容赦無く殺戮した時点で彼の悪魔性が勝ってしまった。


(入賞)

ライシ・イラン大統領(イスラム原理主義政権)

タタール・北キプロス大統領 (右派民族主義政権)

ミカティ・レバノン首相(軍事政権)
ナワフ・クウェート首長 (絶対王政)
ハマド・バーレーン国王 (絶対王政)
タミム・カタール首長 (絶対王政)
ハリファ・UAE大統領 (絶対王政)
ハイサム・オマーン国王 (絶対王政)

ハディ・イエメン大統領(軍事政権)
サルマン・サウジアラビア国王 (絶対王政)

アブドラ・ヨルダン国王 (絶対王政)
アッバス・パレスチナ議長 (右派民族主義政権)

ベネット・イスラエル首相(右派民族主義政権)
ドベイバ・リビア首相(イスラム原理主義政権)
テブン・アルジェリア大統領 (社会主義政権)

モハメド・モロッコ国王 (絶対王政)

特に今回取り上げた地域はもとより民主主義が根付かず、むしろ独裁者がいた方が国が安定しているなんて言われる地域。カラー革命もアラブの春ももはや幻想なのかも知れないし、僕には当然何もできやしないけど、ただずっと見ています。どんなに無名の国であっても、興味を持って何が行われているのか見ています。

 

すみません。前編のすぐ後に後編やるはずが、何だかモチベーションがガクっと落ちてしまい、気が付いたら年を越してました…。