Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第十三回「インド」

 訪問時期:1994年8月

 訪問地:デリー、アグラ、ハイデラバード、ビサカパトナム、アムリツァル

 

左上:アパッチ・インディアン「Make Way For The Indian」…日本でも一時話題となった在英インド人のレゲエアーティストの作品。

左中:アパッチ・インディアン「Real People」

左下:レモ「Old Goan Gold」…インドでは珍しい映画ソングとは無関係のシンガーソングライター。ゴア出身だけあってポルトガル色濃いアルバム。

右上:チャダ「Chadha Sings Japanese Songs in Hindi」…インド人演歌歌手チャダによる演歌の名曲19曲をヒンディー語でカバーしたアルバム。インドの日本愛好者向けなので日本でほとんど流通していないレアもの。

右中:チャダ「踊るマハチャダ」…代々木公園のインドイベントでチャダ氏再デビューライブの際購入したシングル。サインももらった。

右下:パンジャビーMC「Mudian To Bach Ke」…在英インド人アーティストのシングル。インド本国と違うインド音楽シーン、面白そう。

 

左上:アマー「Mein Aur Tu」…在英インド人アーティストの作品。ホイットニーのあの名曲がヒンディー語に!

左中:サーシャ「All Or Nothing」…同じく在英インド人アーティスト。ちょっと欧米寄りかな。

左下:XLNC (エクセレンシー)「Out On Bail」…シーク教徒の在英インド人バンド。

右上:ステレオ・ネイション「Oh! Laila」

右中:オムニバス「Love Birds」…映画のサウンドトラックアルバム。見てないけど、アパッチやレモがプレイバックシンガーに挑戦したとのことで買ってみた。

【収録アーティスト】アミット・クマール、アパッチ・インディアン、アスラム・ムスタファ、バリ・ブランバット、ハリハラン、クマール・サヌー、レモ、S.P.バーラスブラマニアム、ウディット・ナラヤン

右下:オムニバス「Muthu」…日本でも有名な映画「ムトゥ 踊るマハラジャ」のサントラ。タミール語の作品です。

【収録アーティスト】A.R.ラフマン、ハリハラン、S.P.バーラスブラマニアム、スジャータ、ティアニ・クジャランマル、ウディット・ナラヤン

 

左上:アパッチ・インディアン「Nuff Vibes」…衛星放送の普及で在英アーティストの曲もインド本国で流行り出した90年代、口火を切ったのはアパッチだった。

左中:レモ「Politicians Don't Know to Rock'n' Roll」…英語曲が多いレモのメッセージソング。権力への皮肉や未来への希望を歌っていて、インドを旅中に心が折れそうになった時、元気付けられた。

左下:アリーシャ「Made in India」…インドのアイドル。実は来日して舞浜で多数のアーティストと一緒にライブをしたことがある。会場の99%はインド人始めとした南アジア系で、そこは異国だった。

中上:ババ・セーガル「Thanda Thanda Paani」…ヒンディー語でラップしたアルバム。水のことをパニと言うのはこれで覚えた。

中中:オムニバス「1942 A Love Story」…インド現地でインド人と見に行った映画「1942 愛の物語」のサントラ。これを聴くと、映画の内容はもちろん、旅したあの日を思い出さずにいられない。

【収録アーティスト】クマール・サヌー、カビタ・クリシュナムルティ、シバジ・チャットパジャヤ、ラタ・マンゲーシェカル

中下:オムニバス「Roja」…映画「ロジャー (The Rose)」のサントラ。見てはいないが、やや下火気味だった映画音楽に大革命をもたらした音楽家A.R.ラフマンが手掛けて大ヒットさせた最初の作品。

【収録アーティスト】ババ・セーガル、ハリハラン、ミンミニ、S.P.バーラスブラマニアム

右上:オムニバス「Raju Ban Gaya Gentleman」…これも日本でブームをもたらしたインド映画「ラジュー出世する」のサントラ。B面余った所に別映画の曲を数曲入れてるのはお国柄?

【収録アーティスト】アルカー・ヤーグニク、アシャ・ボースレー、クマール・サヌー、プーミナ、サドナ・サルガム

右中:オムニバス「Raja Hindustani」…映画「ラジャ・ヒンドゥスタニ」のサントラ。

【収録アーティスト】アルカー・ヤーグニク、ウディット・ナラヤン

 

(Ling Muコメント)

・インド・ポップスのほとんどは映画の挿入曲で、今も昔もその体系はほぼ変わっていない。劇中のミュージカルシーンで登場人物の俳優が口パクで踊る時、プレイバックシンガーと呼ばれる歌手の歌がまるで「役の人物が歌っている」かのように挿入される。そのためどんなに有名な歌手が歌っていても、観衆は映画の話の中に入っているので、劇中の人物が普通に歌っているものと脳内変換している。売られているカセットやCDも歌手としてのアルバムではなく、映画のサントラ盤としてのアルバムがほとんどで、そのジャケットにプレイバックシンガーの顔を見ることは無い。どんなにヒットが出ても歌手は「縁の下の力持ち」である。

 

・僕がインドを旅した90年代は音楽面でいろいろ激動があった。まずスターTV等の衛星放送の普及で音楽番組を見る機会が増えたため、映画とは関係の無い「ポップス歌手」が現れ、ヒットを出すようになった。レモやアリーシャといったシンガーが代表例。そしてこれまでインド本国とは完全に別の音楽シーンだった英国在住のインド人コミュニティの音楽も本国に発信される機会ができ、アパッチ・インディアンのヒットにもつながった。

 

・民族色の濃いゆったりした感じの従来型映画音楽も若年層に飽きられかけていたが、そんな映画ソングを欧米的・都会的に磨きを入れ、洗練された音楽へと変貌させたのがヒットメーカー、A.R.ラフマン。90年代後半から今にかけて数多くの映画音楽を手掛け、不動の人気を誇っている。結果的に今もポップスの中心は映画音楽に変わり無い状況。

 

・英国のインド人コミュニティの音楽はなかなかわからない世界でこちらも興味深い。パンジャブ州出身者が多いため、ご当地民謡「バングラ」をベースとしたポップスが独自の発展を遂げている。

 

次回はインドネシアを訪ねます。