Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第十七回「レバノン」

 訪問時期:1997年5月

 訪問地:ベイルート、シューフ、サイダ、スール、アンジャル、バールベック、トリポリ、ブシャーレ、ジュニエ、ビブロス

 

左上:ファイルーズ「Maarifti Feek」…レバノンが生んだアラブ歌謡界の大御所。古典風、シャンソン風、ミュージカル風と何でもこなし、全アラブ人の心に生きる大歌手。

左中:マジダ・エル・ルーミー「Ouhibouka Wa Baad」…ファイルーズに次ぐ大御所。言葉わからないのに涙出そうになるほどの歌唱力を持つベテランながらアイドルのようなルックス。一番好きなレバノンのアーティスト。

左下:アマル・ヒジャジ「Akher Gharam」

右上:ジョアンナ・マーラー「Hatfdal Fi Kalbi」…シリアのCD屋でシリア人歌手の作品だと言われ買ったのに、後でレバノン人だとわかったケース。

右中:タニア・サレ「Tania Saleh」

右下:ハニーンとソン・クバーノ「Arabo-Cuban」…アラブ歌謡のボーカルとキューバ人によるラテン音楽バンドで編成された異色作品。なのにこれが見事に噛み合う!アラブ・アンダルース音楽とラテン音楽が遠い親戚関係だというワケも納得。

 

左上:マジダ・エル・ルーミー「Ibhath Anny」…最初に現地で買ったカセット。乗合バスのカーステレオでかけてもらうと「こいつ、俺達のスターを知ってるぞ!」と同乗者がみんな喜んでくれた。

左中:マジダ・エル・ルーミー「Words」…オーケストラがバック演奏し、まるでミュージカルのステージを見ているような曲の数々。彼女の名前、現地の人の発音を聞くと「町田留美(まちだ・るみ)」と聞こえ、より親近感が増す。

左下:ナンシー・アジュラム「Yatabtab Wa Dalla」…今のレバノン、と言うか今のアラブ世界で一番人気の女性ポップアーティスト。顔付きが似ていることから、日本のアラブ音楽ファンからは「レバノンの八代亜紀」なんて異名も!

右上:ディアナ・ハッダード「Ammanih」

右中:4 キャッツ「Al Donya Haik」…レバノンのモデルをかき集めて結成したポップグループ。アラブのスパイスガールズなんて言われることもあるけど、歌唱力はイマイチの評価も。

右下:マッド・ボーイズ「Mad Boys」…全然有名じゃないんだけどこのグループ、いやにSMAPに似てるなぁ、と思い購入。少なくとも中居、香取、草なぎっぽいのはいて、それにロン毛はキムタクか。意識したわけではないと思うけど…。

 

(Ling Muコメント)

・初の中東地域からの紹介ですね。

 

・厳密に言うと、レバノンポップスというものは無い。中華圏が一つの音楽マーケットであるようにアラビア語圏ではアラブポップスという統一されたジャンルとなっている。そしてアラブ各国それぞれにアラブポップスの歌手がいるというわけ。もちろん各国それぞれ自分の国の出身歌手を贔屓するので、ここでは各国別で紹介。

 

・そんなアラブポップスを牽引し、多くの歌手を生み出しているのは今も昔もエジプトとレバノンのツートップ。そこがシリアであれ、ドバイであれ、街中ではファイルーズを始めとしたレバノン歌手の曲が一番よく流れている。エジプトのポップスがちょっと脂ぎった濃いアラブ風なのに対し、レバノンは少し洋風で洗練された雰囲気。CDのジャケットを見ても洋風な雰囲気の美女は概ねレバノンの歌手(キリスト教徒が多い土地柄、程よく混血した美女が多いからか?)。

 

・そんなわけで、アラブ諸国のCD屋さん(今はあるのか?)に行っても必ずしもそこで買った作品がその国のものとは限らない。と言うか、その国の歌手の作品でない可能性の方が高い。店員がもしその国の人であれば、自国出身の歌手は知っているはずなので聞いてみればきっとどれなのか教えてくれる。それでも時折違う国の歌手の作品を掴まされることもあるが。

 

・独立前のレパント地方(シリアとレバノン)には既にアラブ最高の歌姫アスマハーンがいた。独立後はエジプトにウンム・クルスーム、レバノンにファイルーズという二大レジェンド歌手が君臨し、もはやアラブ人で知らぬ者はいない。レバノンの従来型歌謡スタイルはオーケストラがバックにいて、まるで劇中歌のようにドラマチックな仕上がりになっている。一曲がちょっと長いけど、一曲の間で複数回違ったメロディに変わることもある。僕はこってりアラブよりレバノンスタイルが好き。

 

次回はモンゴルを訪ねます。