Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第二十四回「カルムイク」

 訪問時期:2004年9月

 訪問地:エリスタ

 

 

左上:マンジエフ・アルカディ「Избраннoe」…カルムイクポップスの音楽ソフトを売る店は少ないながら、見かけるのはほぼこの人のアルバム。

右上:マンジエフ・アルカディ「Бeлая Дoрoга」

左下:マンジエフ・アルカディ「Arkady Mandzhiev 2003」…日本で会ったカルムイク人留学生から貸してもらった現地ポップスの録音テープもほぼこの人の歌だった。

中下:アナトリー・ツェベコフ「Anatoly Tsebekov」…カルムイクの演歌、だろうか。不思議とモンゴル的と言うよりロシア民謡のような響きがある。

右下:オムニバス「Поюшая Калмыкия」…当時流行りのカルムイクポップスを集めたカセット。首都エリスタを称えているのか、歌詞にエリスタの言葉が入った歌が多い。

【収録アーティスト】A.アジャエワ、A.アンジエワ、A.リジェフ、A.マツァコフ、B.マンジエフ、D.リジェフ、D.シャルハノワ、E.カジエワ、E.オルガエワ、G.ナマエワ、M.バトゥテミロワ、マンジエフ・アルカディ、N.メシカチエワ、S.ビョルチェワ、W.バドマエフ、W.イルツァラノワ、W.ウブシェフ、Z.クショフ、G.バティレワ

 

(Ling Muコメント)

・聞いたことない国名だと感じる人の方が多いと思うのでまずは基礎知識。カルムイクはコーカサス北部、カスピ海とボルガ川に沿ったステップ地帯にあるロシア連邦内の共和国(つまり独立国ではない)。この国の過半数を占めるカルムイク人はチベット仏教を信仰するモンゴル系の民族で、見た目日本人そっくり。ヨーロッパと中東・中央アジアの接点という位置関係なのにこの東アジアチックな雰囲気はかなり不思議。

 

・共和国の国語はカルムイク語とロシア語だが、首都エリスタを見る限り、多くの人は日常的にロシア語を話している。そのためかカセットやCDを売る店に並んでいるのはほとんどロシアのヒット曲と欧米のものばかり。もちろんカルムイク人のポップスアーティストはいるのだが、彼等のカセットやCDはお土産屋で探す方が見つかる。

 

・カルムイクのアーティストの作品はカルムイク語によるポップスが多い。オムニバスアルバムではロシア語の曲もある。そんなカルムイクポップスも今はYouTubeで聴くこともできる。

 

・近隣国であるカザフスタンと同じドンブラという三味線風の伝統楽器があるが、ポップスの中にもドンブラ演奏を挟む曲がある。コーカサスにあっても音楽的にはややカザフ寄りな印象だ。演奏に合わせハイ、ハイ、ハイという合いの手と手拍子の入る曲などは沖縄のカチャーシーみたいで面白い。

 

・民族色をあまり全面的に出さないポップスを歌うアーティストとしてはマンジエフ・アルカディが独壇場に近い地位を築いているが、彼のYouTubeのビデオクリップではスターリン時代の強制移住を描いた映像もある。アルメニアもそうだが、悲しい歴史を背負った国の曲はどこか悲しげな響きがある。その曲調はモンゴルでも、ロシアでもないが、どこか日本人の心をくすぐる。

 

次回はバーレーンを訪ねます。