Ling Muのアジア旅コレクションを展示する「Ling Museum」。旅で訪れた順番にアジア・中東から一か国ずつ、その国のポップスのCDとカセットテープの数々を展示します。

 

★第三十八回「トゥバ」

 訪問時期:2011年9月

 訪問地:キジル

 

 

左上:サインホ「Out Of Tuva」…日本の追分を思わせる伝統的な超高音歌唱を現代風のメロディに盛り込んだ技巧作。日本で初めてリリースされたトゥバポップスの作品。

左下:ヤトハ「London 2005」…ホーメイの一種で超低音のカリギュラーという歌唱法で奏でられるロックバンド「ヤトハ」は海外にも知られているが、これはロンドンでのライブアルバム。頭蓋骨が振動するほどの低音と表現されたことがあるが、サインホは超高音だし、トゥバポップス極端過ぎ。

右上:イゴール・オンダル「Хоругдал」…トゥバの谷村新司か堀内孝雄か。昭和なテイストを少し感じるトゥバ語の歌謡曲。

右下:ベッラ「Bella」…こちらはもっとポップな感じのトゥバ語曲。ホーメイとか伝統音楽を意識しない普通の現地ポップスがやはりいいね。

 

 

左上:オムニバス「Roman Ondar - Anchy Salchak」…同国の中堅歌手二人のカップリングアルバム。細身の方のアンチ・サルチャクはトゥバのテレビの歌番組で司会をやっていた。

【収録アーティスト】ロマン・オンダル、アンチ・サルチャク

左下:オムニバス「Гитарамга Уян Ырым」…懐かしさ溢れるフォークな感じの曲を多く集めたアルバム。ホーメイ歌手として有名なコンガルオール・オンダルもギターの弾き語り+ホーメイという少しモダンな曲を収録。現地を訪れた時、郊外散策に行った際にいろんな縁があって車を運転してくれたのは何と、ここに収録されたアーティストの一人、サイダシュ・モングーシュ。

【収録アーティスト】アイディスマー、アンドレイ・モングーシュ、アヤス・ダンジリン、エルティネ、コンガルオール・オンダル、メルゲン・クーラップ、ラディク・チョリューシュ、サイダシュ・モングーシュ

右:オムニバス「Нoвoe Иeсни, Нoвoe Иeвци」…上記とは打って変わって、こちらは若さ溢れる男性アイドル系歌手達のオムニバス。トゥバの歌番組でも彼等がステージに上がると黄色い声が飛び交っていた。

【収録アーティスト】アイダル、アイディン・アリグ、アルディン、アンチ・サルチャク、アルティシュ・アカー、アルティシュ・ダルジャイ、チャリム、チャリシュキン、チンギス、ダンダル、ヘレル・メクレル・オール、メルゲン・クーラップ、ナチン・ウェル、シルディス&エレス、トゥメン、イシュキン・オール

 

(Ling Muコメント)

・聞いたことない国名だと感じる人の方が多いと思うのでまずは基礎知識。トゥバは東シベリア、モンゴルの北西にあるロシア連邦内の共和国(つまり独立国ではない)。この国の大多数を占めるトゥバ人はチベット仏教を信仰する民族で、見た目日本人そっくり。未知の国ながら意外にも日本と同じ東アジアに位置している。喉を駆使して高音と低音を同時に発生するホーメイと言う伝統歌謡(モンゴルではホーミーと呼ばれる)が有名。

 

・共和国の国語はトゥバ語とロシア語。先に訪ねたカルムイク共和国では多くの人が日常的にロシア語を話していたのに対し、こちらは街中ではほとんどトゥバ語が話されている。2011年時点であるが首都の街中ではスーパーとか、キヨスク風の店舗で現地ポップスのCDが売られていた。全てCD-Romにコピーしたようなものだったが、一応ジャケットのカラーコピーも付いていて、辛うじてCDアルバムの体裁は保っている。むしろ正規版ってあるの?って感じ。

 

・ホーメイに代表される伝統音楽なら「フーンフルトゥ」というグループ等が世界的にも有名。ホーメイ歌手の故コンガルオール・オンダルも有名であるが、上記アルバムではギター伴奏でホーメイを歌ったり、アメリカのブルース歌手とのデュエット作品をリリースしたりと現代を意識した作品を作っていた。ポップスでは追分を思わせる高音の歌唱をベースにした女性歌手サインホや、逆にカリギュラーというホーメイの超低音の歌唱をベースにしたロックバンド「ヤトハ」等が世界的に有名。案外彼等のアルバムは普通のCD屋さんではなく、むしろお土産屋さんで見られた。

 

・トゥバのテレビには独自のチャンネルはなく、普通のロシアのチャンネルがある時間帯だけトゥバ語放送になっていて、その時間枠の中で歌番組も放送されていた。アイドルオンステージのような番組では数々の男性アイドルがトゥバ語のポップスを歌い、観客の女性達が熱い声援を送る所なんか世界共通。ホーメイ等伝統歌謡に現代のテイストを織り交ぜたアーティストよりも、トゥバの一般人の間ではこうしたトゥバ語による普通のポップスが主流なのだな、と感じた。

 

次回はトルコを訪ねます。