初任給20万なら手取りは156万になる。若くして家庭を持った入社2年目の私の後輩は、小さな子供を二人抱え、そのあまりに少なさに愕然とし、自分の叩き出した稼ぎに社会の厳しさを痛感したにちがいない。給料は気合入った学生のバイト並み。苦労して大学を出たにもかかわらず、しかしこれが日本の現実。私大卒で、際立った能力の無い多くの人はこれぐらいにたいていは落ち着く。

「俺なんか、独身で給料から10万近く引かれるから、結婚してる人は優遇されてんねんで。そしてこの間の会議で、会長と社長が『成績悪い人は給料とボーナス下げる』って、のたまってた。あと、年齢給も無くすって言ってたよ~」

と私は追い討ちをかける。

「まじっすか?」

と後輩は驚いている。

「まだ若いから、一年でまぁ4000円ずつぐらい昇給すんで。でも転職するなら早い方がいい。でも手取りはそう変わらんと思うで。」

「そうですよね。実は僕、アフリエイトやっているんですよ。」

彼は目を光らせる。

「へぇー、月なんぼぐらい稼げるん?」

「月2万円ぐらいです。したくもない、商品紹介とかせなあかんのですよ。」

「自分の意に反する、ブログを書き続けるんやな。芸能人もなんか商品紹介して、問題なってたもんな~」

「そうなんですよ」

「俺、ブログで月間2万PVぐらいあるで。」

「たぶん出来ますよ。」

「そうなんや。でも大人のブログやから、アメーバなら審査に落ちるな。」

と、二人で笑った。

世には、稼ぎ方を教えるIT社長が異常に多い。社長業務がよっぽど暇なのか、ペタペタしまくっている。「最後に教える~」ってパターンの文章がどれも同じという、名前付きの若社長。この程度の文章なら、私なら余裕だなと思う(笑)もう少し、文章の勉強をした方がよろしいかと、誰しもが思うだろう。



5月の給与明細に本年度の査定の結果が決定された。結果は2000円のマイナスに落ち着いた(笑)1年間微減した月給で過ごさないといけない。夏の賞与も期待できないから確実に年収が下がっている。アベノミクスバブルは当社にはまだ届いていない。

夏季賞与で色めき立つ頃、ボーナスは年間20万単位で下落していっているのだから、夏のボーナスも期待出来ない。もう私の会社に上向きは見込めない(笑)


まるで芥川のように「漠然とした不安」を抱え、多くのサラリーマンは生きている。

どうしたもんかと、このままズルズルと仕事を続けていった方が良いのかと悩む。転職して収入が増える見込みは多くあるはずも無く、リスクも多い。ユニクロやマクドの社員の労働時間をググレばすぐにヒットするように、流通、外食大手でそうなのだから、中小はもっと過酷になる。経営を全く携わらない名だけの管理職が多くを占めている。月間で100時間を越える無給労働をどこでも強いられ、過労か鬱にならない限り、問題が表面化されることはまずない。

「副業か。」

私の頭によぎった―

会社にバレることなく副業をする。公務員以外は、職業選択の理由からか副業は法的には認められているが、民間企業の就業規則には、原則副業禁止のところが多いのが現実であって、これは同業他社に、情報が漏れることを危惧してのことであろうが、法的拘束力を持つことはない。

さて何をするか。というより、どういう条件かを私の中で考えた。

私の本業は少なく見積もって12時間程度拘束されているから、副業は帰社後になる。色々と考えた末、行き着いた絶対条件は

本業の会社にバレてはいけない。

日払いであること。

労働時間が4時間程度で、そこそこ稼げること。

午前5時までには家に帰れること。



会社にバレて目立ってはいけない。副業禁止であるから最悪解雇もありえる。それは無かったとしても、人事に良い顔はされないであろう。降級もあるうるかもしれない。調べると住民税でバレるようであるから、証拠が残るかもしれないところは避けないといけない。本業の会社からそこそこ遠いところでしかやってはいけないし、接客業はできない。

この国は稼ぎすぎたら、税金の関係でややこしくなるので、一つの事業所で年間20万円を超えるとやっかいになる(笑)20万円をメドに会社を変えていく。すぐ辞められるように、日払いの会社を渡り歩く。

さすがに本業の労働時間と副業の通勤時間を考えると、4時間ぐらいが限度であろうかと思う。12時間働いて、そこから副業するという考えも可笑しいのであるが(笑)

本業の仕事が午前6時から始まることも多いので、このぐらいの時間に終わらなければ、本業に支障をきたす事になる。

以上の条件のみで探すが、そうない。行き着いた結論は、デリヘルのドライバー。新卒で十数年働いた結果がこうなのであるから、何か切なさを感じる部分もあろうが、「人生にハク」がつくのだと自身を納得させるほかなかった。

私のマンションのポストにもチラシがよく入っている(笑)さっそく、チラシ裏に書かれてあった、店のはずなのに携帯の電話番号にかけてみる(笑)対応は素晴らしく直に面接に来て欲しいとのこと。


私は大学3回の時以来、十数年ぶりに履歴書を書いた。名前は偽名で、学歴と職歴は架空にしておいた(笑)一応、本業は仕入先の子会社の名前を借り、何の仕事をしているか即答できるようにしていた(笑)これで準備は万全のはずであった。

面接場所の店に、指定の間の5分前に入室。店長というか、マネージャーは強面ながら紳士であった。聞けば日払いで、時給は900円プラス歩合。チラシ裏に書かれた高額保障とは名だけのもので、週5日の半日拘束。まぁ聞いているうちに、初日でバックレる予定に考えが変わったのはいうまでもない(笑)仕事は指定先のホテルか家にコンパニオンを送るという簡単なもの。待機中はひたすらチラシをワンルームのマンションに投函し続ける。ガス代は自費(爆)どう考えても続くはずがない。とりあえず一日だけでも働こうと面接の対応は完璧にこなした。本業の話などで軽く盛り上がったりもする。私は冷静であった。おぉ、一発目で決まるのかと思いきや、

最後に

「運転免許証を出して。コピーを取るから。」

と言われ、寒すぎる室内にいたにも関わらず、一瞬で汗が吹き出たのを覚えた(笑)

一応、財布の中に入れておいた免許証を探すふりをするも、ツタヤカードで隠れて見つからないように演じる(笑)

「すみません、入れてくるのを忘れました。」

「え!今日、車で来たんじゃないの?じゃぁ、身分のわかるものある?」

と言われ、探すふりをするも

「すみません。あまり持ち歩かない主義なので、入れておりません。」

「そうか。採用なら後日連絡するから。」

私の携帯が鳴ることはなかった。

デリヘルドライバーという選択は拘束時間の関係から、社会人はまず出来ない。とりあえず夜の仕事を探すも、これまた難しい。条件に合わない。日払いで、採用が緩いこと。

休みの日にパチ屋で凌ぐか・・・

学生の一時期、スロット、パチンコで学費を返したことを一瞬思い出すも、現在のスロットは技術介入が少なく、パチンコは高交換に変わり、玉単価下落で喰うにも厳しい。今更、目押しや釘読みが多少出来るからといって、保障されるものではないと結論づけた。自称セミプロと調子に乗っていた時期も時間給に直すと500円程度にしかならない実力しかなかったのであるが。

もう一度探していると、キャバクラドライバーというのがあることに辿り着いた。下調べすると、サラリーマンには人気の副業で日給は50006000円程度で、ガス代は自費。終電が無くなったキャストを自宅まで送り届けるという簡単なもの。

今は求人誌を買わなくてもwebで応募出来る様なので、片っ端から20店舗に登録フォームから一気に送った。連絡があったのは2店舗。HPに書かれてあったすぐ折り返し連絡するというのも全く嘘の世界。水商売なんてそんなものだ。複数連絡があれば、時間単価が一番高いところから面接に行く予定であった(笑)イメージで黒服はスーツを着ているから、バイトの面接とはいえ、スーツを着て行き仕事帰りを装った。前回の教訓を生かし名前は本名、学歴と職歴は前回と一緒とした。結果を先に申し上げると、この2店からも私は面接に落ちることになる。1店目は前日にドライバーが決まって、系列店舗が足りていないから、そこから連絡させると言われ、待てど暮らせど、連絡は無し。

2店目は

「採用なら電話するし、不採用ならご縁が無かったということで。」

と言われ、ご縁が無かった(笑)

3店舗目の面接もさっそくとりつけた。少し遠いところであったが仕方ない。面接慣れしたのか、対応が出来ていたのか、そしてここに私は決まった。社会人になり、初めてのバイト、副業。場所は大阪市内の繁華街。そう旧十三ミュージック近くの業界では有名らしいキャバクラである。最後に強引にストリップと絡めてみた(笑)

②以降は、アメ限です。私が実際キャバドラをして、辞めるまでを綴ろうかと思う(笑)

尚、全てフィクションです(笑)