二十四節気では立秋だという。夏の暑さが幾分和らぎ、秋らしくすごしやすくなるのがこの日を境に多くなるらしい。「暑中見舞い」から「残暑見舞い」へと変わるのだと習った。しかしながら今のこの日本の暑さは、残暑厳しいというよりも、むしろこれからが夏本番といった具合で猛暑日が続いている。

夏の高い日差しが照る中、近くて遠い劇場、私はDX東寺へと2年半ぶりに、再び降り立つ。

東寺といえば、割引タイムを逃すと、日本一高い一般入場料金が必要とされ、客側にとっては関西2館と較べるとあまり好んで行ける劇場とはいえない。


以前は6人香盤で、静かな住宅街ゆえ定刻終了遵守の当劇場は、タイムテーブル通り進行には無茶というよりも無謀に近く、少しでも時間が押せば3回目は必ずカット進行となる。ステージをまともに観られない日々が多く続き、無策な方針に出来れば避けたい劇場であった。それに興行の多くが素人大会と、ステージを楽しむ分にはこれまた敷居が高い。

くわえて、撮影は昨今のデジタルカメラの時流に乗ることもなく、未だ懐かしいポラロイドカメラで、仕上がりが速いという点を除くと、出来映えはあまり良いとはいえない。1枚が全て1000円というのもいただけない。チャチなデジカメよりもinstax500の方が映りはマシと言う程度、手に取った瞬間、その場の空気が伝わるという懐古的な色合いがあるというだけでは、あまり食指が動かない。

良い点と言えば、投光技術の腕が優れているのか各踊り子の出し物の数にはリミットが無いようにも思え、演目多数出しの踊り子が非常に多い。1日で全ての演目を観られないことが多いというのは、客側にとって嬉しい悲鳴でもある。

照明は綺麗で、ベッドショーでは、客の顔が視界に入らないぐらいの按配で程よく暗く、踊り子のみが浮かび上がらせる。汗を帯びた裸体は、他劇よりも2割増しに美しく照らす。暗い場内は客席がほとんど見えず、おそらく自.慰をしても気付かれないだろう(笑)。「下の上」だと思っていた劇場従業員の接客レベルは、しばらく行かない間に、「中の中」までに上昇。しかし、壊れた椅子は前回来た時よりも散見され、まぁハード面は前回来た時とイーブンといったところか。


JR京都駅から果てしなく歩いた何も無い古い民家の密集した片隅に、劇場がある。すぐ傍の甘味所で、楽しみにしていた名物のカキ氷を買う。お椀でシャカシャカと宇治抹茶を混ぜ、オバチャンが奥から持ってくる。いかにも京都の和菓子屋らしい。

カップに入らんばかりの、大きなカキ氷をオバチャンにこしらえてもらった。巨大な氷を削るのには幾分時間を要する。

「オバチャン、この“どて栗”っていうの、美味しい?」

と私が聞くと

「えぇ、美味しいですよ」

と答えて下さる。

「踊り子さん、喜ぶかなぁ?」

「好評頂いております」

甘美な響きの“どて栗”とやらを差し入れで買ってみた。汗が引くまでは、背中へクーラーの風に当たりながら、苦味の効いた抹茶氷を頬張りステージを観ていると、踊り子さんに笑われた。




20158頭 DX東寺

(香盤)

1. 綾乃 (晃生)

2. 美緒 (東寺素人)

3. 葵マコ (東寺)

4. アキラ (道頓堀)

5. 青山はるか (晃生)



3演目:美緒/葵マコ/アキラ/青山はるか

2演目:綾乃

美緒さんは2演目確認。



綾乃さん

以前晃生で観た2演目。

先週の足の怪我を懸念していたが、一切かばうことなく熱演。見事な出し物。

バク転や側転など今まで観たと変わらない奮闘振り。プロ魂を感じた。

美緒さん
☆紺の浴衣姿から、情感溢れる手の振り。立ちオナから、ポーズベッド。中島美嘉のバラードが心に染みてくる。
☆穴の開いた黒系の衣装から、激しく攻めるダンス、ポーズベッド。

初見かと思っていたら、2年半程前、晃生のプロ香盤で一人素人として出ていた。顔出しNGの素人と言えど、ステージの内容はプロと遜色はない。

オープンショーで、低空飛行リボンが私の頬をかすめる。

「はて?オープンショーはオmコを観るものだと思っていたが」

と感じたが、美緒ちゃんは私にしきりに謝っていた。踊り子が詫びるのもおかしい。両眼を患い手術した私の眼に着弾しなかったから良かったが、これはどう考えてもいただけない。

晃生の開演前に格子戸さんが「踊り子や客に当てたら、リボンそのものを禁止」とアナウンスしている。この前訪れた川崎では、「客に当てたら謝罪せよ」とポスターが貼ってあった。長いリボンの先端が、どこへ向かっているのか、投げる人間はわからないのであろう。

晃生では当てられてことが無いが、東寺ではかつて散々当てられた経験がある。

4年程前、あまりに酷い低空リボンに嫌気が差し、従業員に

「踊り子や客に当てるリボンを止めさせよ」

と私は忠告したが

「当人同士で解決してくれ」

とあっさりしたものなのであった。あまり赴く劇場ではないので、そっとしておこう。


葵マコさん

3個出し。

随分と前、晃生で一度だけ観ている。その時よりもかなり細くなり、良い感じの女性らしいクビレが際立っていた。

演目はどれもストーリーがあるようで、観ていて楽しい。

無邪気で無垢な少女が大人の女になっていくのを、ステージで表現していた。

海岸で乾杯というシーンで、盆横に座っていた私は、マコちゃんからビールを貰えた。

ダイエットで禁酒中、車で来ていたから、飲むのを躊躇してしまった。

あと5kg痩せたら、一番初めにこのビールを飲むことにしようか。


アキラさん
3個出し。

3年半前、晃生ラストでお別れを言い、もう会えるとは思っていなかったので、これ再会の喜びはたまらない。長かった髪はショートカットになっていた。腕に刻まれた黒蝶のタトゥーも変わらない。回転を軸としたゆっくりとかつ大胆な舞は、私が初めて観て好きになった頃と変わらないステージを披露していた。

2011年に私が初めてまさご座に行ったのがアキラさん目当てであった。その頃から膝に大きなサポーターをしていた。以前はステージを観ていたら、膝が抜けるような感じがたまにあり、相当悪いのかもと思っていたが、今週はそれが取れていたので、全快したのかもしれない。ピンと足の親指まで伸びたブリッジからの片足上げは、往時の時と変わらない。


青山はるかさん
晃生で観た演目の3個出し。
長い花道、2つの回転盆を、ステージ中上手く使っていた。

ベッドでの魅力はスト界でダントツかな。盆の回転速度が遅いのも東寺ならではで、回っていないかもと錯覚してしまう。東寺で照らされるはるちゃんは、晃生で観る時よりも美しいと言っても間違いない。

2回目頃、大学生の5人組が登場。草食男子の彼らはなかなかマナーが良く、騒ぎもせず見入っていた。普通は仲間同士で来たなら、少々騒がしいものだが、ステージを多少気に入ってくれたのかもしれない。その入れ替わりで外人4人組が入って来た。こちらはノリが良く、リズムのある音楽ではとても楽しそうであった。スマホを広げた黒人に注意するのは、少し怖かったが。

終わってみれば、ポラは2枚しか撮っていないので、入場は回数券であるから、劇場へ落とした金額は6000円と、他の劇場と相違ない。

帰りは下道でゆっくりと。ライトアップされた東寺を横目にやりながら大阪を目指す。しかし2時間弱かかるのは、近くて遠い劇場には、今後も変わらなかった。

観劇日:8/6(木)ほか