木造アパートの運命なのか、隣人の生活音が筒抜けである。

目下一番の悩みは、隣の住人の大学生のイビキが聞こえるところである。就寝前から聞こえ出し、目覚めてもずっと聞こえているものだからたまらない。初めて訪れた名古屋銀映において、本舞台に「かんたんマイペット」が1日置いてあったのが未だ忘れられないぐらい、神経質で過敏な性格が災いして、そうそう疲れたとしても私はこの雑音で眠りにつくことが出来ない。学生はなんて時間があるものだと感心するのであるが。

 

昼間、よく女を連れ込むようで、少しでも騒いでいたら、咳払いか、壁を一発叩けば大人しくなるのであるが、

「イビキだけは我慢しなければ」と半分諦めている。他人の生活音なんてものは、多かれ少なかれ耐え難く、これがずっと続くのであると思うとぞっとする思いだ。

 

高槻に住んでいたころ、上の住人が煩くて、夜中に注意しに行ったら、イキりの大学生8人いたことがあった(笑)。

「どうにでもなれ」

とそのままの勢いで言い合いになり、深夜に家主を呼んで、話し合いになった。

彼の主張は

「今日は誕生日なので、許して下さい」

とのことであったのであるが(笑)。

 

隣人の中国人が騒いでいたこともあった。注意しに行くと、全く話にならないというよりもむしろ言葉が通じない。なにより街全体が薄い左寄りの空気に、耐え難い時を過ごしていたのであるが、根っからの反共の私にとっては、まさにこの相手だけは話し合いなどでは解決出来ないものとあらためて思ったものだ。今の住んでいるところでは、管理会社が

「警察へ通報して下さい」

というだけであり、しばらくすると静かになる。

 

新地でパコっている時の、薄い砂壁から聞こえる騒音としか思えないおばちゃんの呼び込みの声と、部屋に流れる煩すぎる有線、それに加え、ビジネスライクな喘ぎ声が混ざり合わさると、どう考えてもそれら雑音でしかないものと思っていなかったものが、うまく乳化され、そこの空気と馴染み、興奮を助長させるものとなるから、不思議なこともある。もっともそれは、その場におかれている状況が大いに関係するのにちがいないのであろう。

 

携帯のマナーモードなんてものは、時によってはアラームよりもマナーがなっていないことがある。静かな時に震えたら、アラーム以上に驚くこともある。その場の状況に大いに関係するのものと似ている。

 

マナーが良いとされる観劇中級者以上と思われる輩の爆音手拍子、音感無しタンバ、アッチムイテホイのリボンなど、これらが彼らの言う「姐さんの最大の応援」とはどう考えても私には思えない。一見の酔客が、良い感じで楽しんで観ている姿の方が、ストリップの本来あるべき姿なのかとも思えたりもすることがあるのである。

 

金津インターを降り、真っ暗な道を進んでいく。かろうじてわかるのは、周りが田んぼだけというぐらいだ。10数キロの間、当然コンビニは一軒もない。対向車も数台通るぐらいで、街灯もほとんど無く、道筋にある僅かな反射板を頼りに、ナビだけを信じ吹かしていく。やがて「あわら温泉街」という看板が見えたところで、近づいてきたなと感じさせた。カニ漁解禁まで1カ月強あり、温泉客もまだ本格的ではないことから、街全体がかなり寂れた感を帯びている。人通りもほとんど無い。しばらくすると、煌々としたピンク色の小屋に辿り着いた。私は1950分に入場した。音楽は鳴っていなくまだ始まっていなかった。19時半開演だと思っていたが、どうやら違うみたいであった。

 

従業員に聞けば

20時“ぐらい”から始めます」

というなんとも緩い感じが、田舎のゆっくりとした時間の流れを感じさせる。

マコちゃんも

「今日は土曜日だし3回やると思うよ」

とポラで答えてくれた。私はてっきり4回やるものと思っていたが、3回公演を基本としているのかもしれない。たまたま居合わせた知人に聞けば、客の入りによって、公演回数が激しく変わるようである。ストwikiの情報も多少の誤りがあるようだ。出し物も「“1個縛り”で、どうしてもというなら、中日替え」ということを聞いていたが、それも違うようである。

 

本舞台には2つのポール。緞帳には金の刺繍で「芦原ミュージック」と縦に書いてある。赤い螺旋階段はミルキーウエイのようにも思え、2階席も有り、ロビーには過去の出演踊り子の写真が所狭しと飾り、趣ある劇場である。

 

2回目が始まる頃、客が5人程度になってしまった。開演時は20人弱いたものの、土地柄なのか、3人香盤で1周1時間程度ではあるが、長く観る客は少ないのかもしれない。カブリセンターまで空くという本来はあり得ない状態だったので、私はそのスーパーシートに移動した。席はゆとりがあり足を伸ばせる。2回目、マコちゃんのポラの時にゾロゾロと浴衣を来た温泉客が入って来た。彼らは本舞台よりに座っていたが、マコちゃんが、

「こっちの方で踊り子さんが脱ぐので、よく観えるよー」

と言うと、大移動し、私をセンターにして囲まれた(笑)。

「騒がしいのに囲まれた」とマコちゃんに言うと笑った。

 

東京から来たというその団体は、浅草ロック座や渋谷道頓堀の名前だけは知っているが、ストリップ自体は初めてだという。相当酔っぱらっていた。

「お兄さんは?」と聞いてくるものだから

「僕は車ですから。コーヒー2缶で酔いが大分回っていますよ」

と私は答えた。話をすると色々と聞いて来る。

 

「踊り子に触ったらダメですね。あと、チnポを出したらアウトです。それ以外は全てOKです」と私は緩いルールだけを言った。

所謂、都会の小屋では当たり前の

「ステージが始まったら~」

「ベッドショー中は~」

ということを、私は一切言わなかったのだ。東洋なら厳重注意、それでも続くようなら即刻摘み出されるという、声を出しての観劇マナーについては、この場で言う必要を感じなかったのだ。

「わかりました、お兄さん」

と宴会の続きのような賑やかな場内が続いていった。

 

その後、ステージが始まるや、一枚脱ぐ度の絶叫に近い歓声、踊り子が足を上げると指笛が鳴り響く。オナベッドでは

「やばい、やばい」

を連発。このリアルな温泉客の呼応に、私は心地良かった。

「そうだ、その反応を俺は待っていたのだ、何といっても踊り子もとても楽しそうではないか」

 

「選曲やばくないですか、お兄さん?」

「やばいですね。踊り子さんというのは、お客さんを見て、どんな出し物を出すか決めるものなのですよ」

「やばい、BOØWYだー」

いつの間にか、センターの私は氷室京介のようであり、いつの間にか全員で大合唱していた(笑)。

 

オープンするオープンショーに、非日常を楽しんでいるかの如く、“ビラ”チップ連発に私は声を出して笑い続けた。

 

ひよりちゃんの「いいともろー」のオープンショーはタモリメガネ。

「東京の劇場で会いましょう。来てくれるかな?」

と私が言うと

「いいとも」

と答え、温泉客全員と握手して別れた。

 

 

20169中 芦原ミュージック

(香盤)

  1. 先島ひより (TS)

  2. 葵マコ (東寺)

  3. 水原メノ (TS)

 

3演目:葵マコ

2演目:水原メノ

1演目:先島ひより

 

 

東寺は出来れば避けて通りたい劇場で、距離、入場料、ポラを較べると東洋と晃生に劣る。

素人の絡みもあり、3回行く見通しが付かないので回数券も買えない。1週に2度観劇するなら、上記2館でこと足りるということもあった。事実、今年は1度しか訪れていないのであるから、私の選択肢からほぼほぼ無かったといえよう。

 

7中のある日、仕事が早く終わり、

「夕方の割引タイムに入れば、2回観られるではないか」

と高速を飛ばし、今年初めて東寺へ行った。この時、マコちゃんの「ハレハレホー」という演目を観た。

 

天に向かってどこまでも勢い良く昇っていく蔓が、生命に力強い息吹を与える。人々に豊穣の恵みを、幸福をもたらす。掴みどころのないようなリズムからは、古代の儀式の様にも思えた。照明も大きく左右されそうで、劇場によっては捉えた印象が変わってきそうである。

 

この演目を出している情報を得て、芦原行きを決めた。芦原での出し物は「ハレハレホー」、「周年作」、「きゅるきゅる」。他に出していたのかもしれない。

 

重なるということはある。顔が似ている、スタイルが似ている、同じ音楽である。雰囲気、香水など。その場の状況にもよるだろう。感じ方は各人それぞれ。暗い演目もあるのであるが、マコちゃんのステージの空気感こそが、そこにかつて愛した篠崎ひめの幻影を、どこかで見ているのかもしれなかった。

 

 

観劇日:9/17(土)