22時までにセコムをセットしないとアラームが鬱陶しいぐらい鳴ることに加え、本社に改善報告書を提出せねばならぬため、終業しても会社を出るまで落ち着くことはない。文頭文尾を多少変えたコピペは、今年に入り何枚書かされたのかはわからない。およそそれは
「人が足りない」
と言葉を変えているに過ぎないのであるが、後々面倒なことになるのは目に見えているので出来ることならば避けたかった。年の瀬も迫り、どの業界も今まで以上に忙しさ、慌ただしさが増してくる。
今日は意外と早く終えたなと、急いで駐車場へと向かう。寓居まで20分足らずと通勤には調度良いぐらいの距離なのだが、会社を出る出入口の真ん中の横断歩道で一組のカップル抱き合っていた。そこを出て右折しなければ、私は帰路に着けないのであるが―。
男はすぐに私の車に気付いていたが、彼女の方は全く気付いていない。お互い何度も顔を横に振りながら、抱き合いキスをしていた。その度に彼氏は私の方をチラ見しているものの、彼女は相手しか見ていないようでもあった。「恋は盲目」というのは、この場合彼女の方だったのかもしれない。取って付けたような愛の言葉を何度もお互い囁いているのであろう。暗闇の中で何度も重なり合っている。わざとらしく煌く街のせいかな(笑)。
今までの私なら
「隣、神社やろが。口紅無くなるまで舐め回しとけや!」
と、NHKの集金人には20秒で沸点に達する私でさえ、この状況で夜中にクラクションを鳴らしまくるような真似をしなかった。そっとライトを消し、音楽のボリュームを絞ってあげるぐらいの心持ちは、私も少しは変わったものだとさえ思えたものだ。
「若いな。少しぐらいは良いか」
アラフォーにして少しは落ち着きある大人になっていた。調度その時、FMからBoAの「メリクリ」が流れて来た時は
「タイミングええなー」
と笑わずにいられず、私は車内でツッコミを入れるしかなかった。サビを終え、優しくクラクションを2回鳴らす。彼氏の方は深々とお辞儀をしていたあたりは好青年のようにも思えた。
「雪は降ってへんけど、お兄さんも幸せにしてあげなよ」
と片手を上げ私は応じた。
12月に入り、各劇場においてクリスマスの演目が増えてくる。それは結の中日頃まで続いていく。ハッピーに締めくくられるそのステージの多くが、心を晴れやかにさせてくれるものだ。それぞれの踊り子が思い思いに、ステージで演じてくれる。幼少の頃から今に至るまで、別段楽しかった思い出など皆無の私にとって、ある種今までのそれを挽回させるようにさえ思え、ひと時の寂しさを忘れさせる時期でもあった。「季節外れ」というものが嫌いな私には、季節を感じられる格好の場所が劇場なのだ。題材としてそれは使いやすいのかもしれない。踊り子の価値観、パフォーマンスにあったその個々のステージを観られるのもこの時期ならでは魅力でもあろう。
2017年12頭 東洋ショー
(香盤)
-
青山ゆい(東洋)
-
澤木夢(ロック座)
-
misaki(ロック座)
-
ゆきな(ロック座)
-
徳永しおり(ロック座)
2演目:青山ゆい/ misaki/ゆきな/徳永しおり
1演目:澤木夢
青山ゆいさん
かなりの頻度で観ている青山さん。これだけ東洋に出演していたら出し物にも困るのではないかと思ってしまう。と思いつつも、ラッキーなことに今週は新作。得意とする激しい曲でかなり踊りまくる演目。
“踊れる”というのはこのことを言うのだなという、終始激しく舞い続けます。
澤木夢さん
初見の踊り子さん。デビュー3週目とのこと。そのステージは初々しさを前面に出したものなのであるが、これからが大いに期待出来る。途中、可愛らしいロボットダンス。選曲にキラリと光るものあり、大成するかもしれない。
misakiさん
☆PURE
黒い衣装で舞い黒いセクシーな下着姿へ。鏡を使ったベッドは秀逸。ポラには「白雪姫の魔女をイメージした」と書いてあったので、「鏡よ鏡。この世界で美しいの誰?」と問いかけているのかとも思えた。misakiちゃんも相当美しい。とてもセクシーなベッドショーであった。
☆いやほい
軽いダンスが2曲程続いた後、一気に盛り上がる。ここまで楽しい演目は久しぶり。大きな振りは場内が一致すると異常に盛り上がりますね。4回目の東洋の雰囲気は好きだな。「1回目は年寄りが多すぎて~」というやつかもしれない。この演目の場合においては、仕事帰りの若い連中が多くて少しぐらい騒がしくて酒が入っているぐらいの方が調度良かったりするものなのだ。客が楽しければ、面白く感じれば、ステージの上で何やっても良いのだと再認識した。劇場に来るのであれば、多少刺激求めてらんらんとしている方が良いだろう。9頭で初めて東洋で観て好きになった踊り子さん。演目の魅力もさることながら、脱いだ時に女性らしいフォルムは、とても魅力的な踊り子でもある。
ゆきなさん
☆笑顔百景
黄色の着物にミニの噺家さん。1曲目から激しく踊りまくる。ベッドはサンタカラーでしっとりと決める。儚いバラードに合わせ情感に溢れ柔らかい体からポーズを決める様は、あまりにも美しい。桃瀬れなさんから譲り受けた演目とのこと。綺麗なベッドでも出来るのだなと思わせる。良い演目だ。
☆K645
ゆきなちゃんが1曲目から刀を持って客を斬りまくる。立ち上がりはひたすら飛び跳ねて踊りながら時折ポーズを決める様は、今までのストリップに無い斬新で新感覚なそのステージに、ストリップはまだまだ捨て物ではなく、大いに可能性を秘めたものでもあり、あらためてなんて楽しいものなのだと思えた。
6結にこの演目を観て、私は一瞬にして虜になってしまった。その再演なのであるが、やはり関西で受けるのかもしれない。何よりも一番楽しそうにしているのは、ゆきなちゃんだったりする。これは客の反応で大いに盛り上がる。今までに無いストリップの可能性を垣間見た瞬間でもあった。
ストリップの世界で“あなた”という奇跡を生み出したのかもしれない。ここまで客を楽しくさせるステージは今年最高である。
徳永しおりさん
☆白のタキシードで格好良く踊った後、赤い衣装へ。そこからベッドショー。
☆ピンクの着物姿。そこから襦袢姿へと変化しベッドショーへ。
宣材写真で綺麗な方だったのでかなり期待していたが、生で観るともっと期待以上の美人さんでした。踊りの上手い方でした。オープンショーの魅せっぷりの良さは“これぞロック座“という感じでお見事。
演者が全身でステージにぶつけるその熱を感じた時、客は惹かれる。
「これ以上踊りは上手くなりませんので、全体を観てくれればと思います」
以前ある踊り子のポラを買った時にそう書かかれてあった。私の中ではストリップは踊りの良し悪しを問うているものではない。毎夜レッスンを繰り返し、少しでも良い物を出そうとする熱き想いを感じた時、客は何か感じるのである。客というのは身勝手で、上手くなれば、「自分勝手だ」「一人よがり」だの言われ、あの踊り子は客に向いていないなど言われる。それは見る客人によって異なる。
「まだまだ踊りは下手だけど頑張る」
と書く新人の踊り子は多いのであるが、それはステージの魅力の一部に過ぎない。もっとも上手いに越したことは無いのだけれど、客はそれだけを求めているものではなかろう。踊り子がそのステージに全身で楽しもうとしている姿に、私は熱量を感じさせるのである。そう感じた時、「来て良かったな」と満たされるのである。
観劇日:12/1(金) ほか