年に数回は行っていた関東に一度も行けなかった。端的に言うと連休が一度も無かったのである。初日に香盤順の答え合わせをする客の特性は、ほぼ2点で全国のそれをピタリと当てられる精度を私は保持し、ストリップからいつまでたっても離れられないのであるが、どんなに香盤を眺めていても、このぐらいのことしか出来ぬまま、ぐずぐずしたままなのであった。新幹線を使えばどうにでもなるのであるが、ストリップには“押し”という不確定な要因がある限り、私は歯痒い思いをし続け、もがき躊躇し続けた。繁忙期の80時間残業や、36協定などは全く意味をなさず、加えて管理職という役職は、どんなに働こうが給料が変わらないときたものだからたまったものではない。蔓延する人手不足は、多くの業界が打撃を受けている。単純な仕事でさえも限られた人数でこなさなければならず、辞めれば補充は効かない。会社には若い人が入らず高齢化し、生産性は落ち負のスパイラルに陥る。そして残された人間だけに労働時間が増え割を喰らうという成り行きなのであった。

 

たまに赴いていた関東では

「コンビニ店員にやけに外国人が多いな」という印象は前々からあった。

「日本語をもう少し勉強してから働きに来な」

当時、田舎者の私はそう思ったのも事実である。左派の虚しい応戦の甲斐も無く、外国人労働者の受け入れ法案が通った。これに私は大いに期待しているのであるが、地方にまで回ってくる日は遠い気がする。

 

12月は特に酷く、実勢で日毎2時間程仕事が増えた。「早朝から夕方まで」が「早朝から夜まで」働くこととなる。

「この単純作業を俺にやらせたら高いぜ」

プライドだけがそう思わせるが、前述した通り、実際のところ実入りに全く影響を及ぼさない。そして14日から休みが無かったわけであるから、冬季賞与を挟んだ前後の給与で非常に潤うのが毎年のように起こるのであるが、まさに使う暇さえもないという塩梅であった。

 

特殊浴場の給仕からは

「心折れへーん?」

と甘い言葉で言うものだから

「まぁ、折れるな。ストレスはヨソに逃がすしか無いもんやで」

フワフワとした不安定な所へうつ伏せにさせられ、神の涎を全身に垂らされた私には、悶えながらそう答えるのが精一杯であった。

「こういうとこ、来ること?」

「ふふ。筋肉を収縮させることさ」

馬鹿の一つ覚えみたいに、体を褒めることしか出来ない小娘相手に、束の間の現実逃避の時間を、仕事帰りにフリーで入室した私には、写真とは大きく異なったそのシルエットに激しく悔いたわけだが、目さえ閉じ、踊り子を思い浮かべてさえすれば何ら問題もあるまいと、自身に言い聞かせるしかこの場合他になかった。

 

ウチにいるバイトは決まって

「思っていたより楽勝でしたね」

と幾つもの内定を獲ってくる自ら就職活動を振り返っていた。私なんぞは、

「とりあえず、営業職以外で」

と平成大不況の中、苦労の末今の会社に決まったのであるが、就活生の諸君は、サラリーマンしかなる術がないというならば

「大手だけに絞りなさい」と先輩面して私は申し上げておきたい。

 

途中入社の方からは

「選択肢は多くあると楽ですよね」

と言われたが

「また20万から、今から一からやり直すのは、40を超えてからはさすがに躊躇してしまいますね」

と答えるしかなかった。中間管理職というものは、このままズルズルとしたまま定年だけを目標にしていくものなのかもしれない。

「この単純作業が、世界を回って出会った事の無い人の笑顔を作っていく」

ミスチルの歌詞のような境地に耽るのはまだまだほど遠い。私にはストリップに現を抜かしつつ、それが生き甲斐となり日常に彩りを加えるという日がいつか来る、そう思うしかないのであろうが――。

 

 

【演目】

ALLIY(ロック座) 「復帰作」 5結 in 東洋ショー

浅葱アゲハ(フリー) 「ギャッツビー」 11結 in 晃生ショー

武藤つぐみ(ロック座)「セマー」 12頭 in 東洋ショー

春野いちじく(TS) 「ワンルーム」 1中他 in 晃生ショー

チェリースター〈桜庭うれあ/星崎琴音〉(ロック座) 2頭 in 東洋ショー

浅葱アゲハ(フリー) 「フェアリー」 3中 in 晃生ショー他

安田志穂(ロック座) 「人間の条件」 3頭 in 広島第一

あすかみみ(ロック座)「結」 12頭他in 東洋ショー

ゆきな(ロック座)「待夢輪舞」 10in 東洋ショー

青山はるか(晃生) 「百花繚乱」 1中他 in 晃生ショー

春野いちじく(TS) 「イルカの調教師」 1中 in 晃生ショー

桜庭うれあ(ロック座) 「おばあちゃん」 12頭 in 東洋ショー

中条彩乃(ロック座) 「中条サンバ」 11中 in DX東寺

前田のの(ロック座)「ひまわり」 9頭 in DX東寺

ゆきな(ロック座)「いや/ほい」 4in 東洋ショー

清本玲奈(ロック座)「グレイテストショーマン」 6結 in 東洋ショー

矢沢ようこ(浅草)「恋は永遠」 12中 in 東洋ショー

玉菊きよ葉(TS)「バブルチャイナ」 7中 in 東洋ショー

 

 

 

1年でいったいどのぐらいの数のステージを観るものなのか計り知れないが、相当数のステージを観ていることに間違いない。私は概ね全員を2巡は観るようにしている。それでも5時間は滞在しているのだから、魅せられているのか、時間間隔が麻痺しているのかどちらかだろう。「全員が一演目なら1巡で帰る」と常々公言してきたのが良かったのか、投光技術が上がったのかはわからないが、最近は演目数が増えすぎて、困るという贅沢な悩みまで増えて来た。身勝手ながら周年作は1演目でも良いのではないかと思えてきた。

 

行った香盤を全部眺めてざっと選んでみたら18演目となった。2018年の1位はALLIYちゃん。噂に聞いていたが、凄いパフォーマンスを披露してくれた。東洋に1週しか乗っていないのは寂しい。

 

感度が鈍った私の奥底に深くに眠る琴線に触れ、思わず前のめりなるほどのステージに出会うのもこれまた喜びである。「自分が正しい」と確認し合う議論ほどつまらぬものはあるまい。そして読者自身の価値判断を思い返して頂ければ、私の目的の過半は達したこととなる。

 

※タイトルがわからぬものは、そのイメージとした。

 

【劇場】 4劇場 57

37回 東洋ショー

16回 晃生ショー

 3回 DX東寺

 1回 広島第一劇場

 

入場料だけを考えると、東洋だけになりそうだが、やはりそうはならなかった。日帰りで行けるとことなると限られてくる。ステージを観ることに限って言えば、東洋は、全く申し分は無いが、従業員の干渉度が高くストレスを生じる。晃生はステージのカット比率が非常に高い。東寺と広島は自宅からの距離とポラにやや難がある。しかしながら、自分が思うアレルゲンの無い100点満点の劇場などありはしないのだ。

 

【踊り子】 お会いした踊り子は調度100

10回 榎本らん/渚あおい/春野いちじく/ゆきな

9回 北原杏里

7回 あすかみみ/大見はるか

6回 浅葱アゲハ/上野綾/坂上友香/左野しおん/中条彩乃

 

以下省略

 

観られる劇場が限られるので毎年のことながら好まざるとも寄れる。

尚、ポラの枚数はわからない。上位で撮らない踊り子もいるが記さない方が良かろう。

 

 

【オープンショー】

中谷ののか(TS)

春野いちじく(TS)

中条彩乃(ロック座)

小宮山せりな(浅草)

ゆきな(ロック座)

青山はるか(晃生)

北原杏里(晃生)

 

楽しくてしっかり見せくれて、オープンしてくれたら良い(笑)。

 

 

ストリップを意識して観だして2019年で10年を迎える。その間紆余曲折はあった。短期の休みを挟みながら、今でも私は飽き足らずに劇場に足繁く通い、ステージを観続けている。気持ちはあの頃と何も変わりはしない。その時観ていた踊り子は、当然のことながらほとんどが引退してしまった。幸せに暮らしていると信じている。

劇場にいれば

「昔は良かった」

と年寄り連中の常套句を聞かされることが多々あるのだが、昔話に説教、それに自慢話も加わり、年寄りの垂れることなど右から左なのだが

「どうせエロ写真いっぱい持ってんだろ。勃たたないチnポを一所懸命こすってな」

と申し上げそうなところを

「篠崎ひめちゃんは良かったですね~」

と年寄りの好きそうな話題に終始し、嬉々とする彼らを相手することも多くなった。「いいね」や「シェア」が欲しければ、褒めとけば問題無いのであるが、「気に食わない」とか「物足りない」とかの所謂、ロビーの声などは聞こえもせず、それらはプロならば当然のことながら有っても良いのではないかと思う。それを親友のテラ氏に愚痴れば

「あなたも誉め言葉しか書いていない」

とお叱りを受けたのであるが

「大阪には2館しか無いですから」

と自己矛盾を指摘され、思わず発信する難しさを感じた次第である。

 

劇場の減少の流れに伴い20人程いた好きな踊り子が15人ぐらいに減ったぐらいで、当時好んで観ていた踊り子を現在の私が観たとて、その時の感情になるのかはわからない。それぐらい今のステージの方が優れていると、はっきりと断言出来る。大きく変わったのは、女性客が増えたこと、オープンショーでチップを渡す客が増えたことぐらいで、ハード面の変える必要はあろうが、ステージ重視なところに何も変わりはしない。

 

最初、私は自信に満ち溢れイケイケでストリップと対峙していくわけであった。踊り子のやりたいことはわかるし、他客との付き合い方もわかる。使える時間や金は他よりずっと多いはずであった。しかしどうしても納得できないもの、そしてただどうしても克服出来ないもの、それは私のステージの評価と世間とのズレであった。それが書くきっかけでもあった。

 

当ブログを立ち上げた頃は、文章に稚拙さが目立ち、今目を通しても目を背けたくなるものばかりである。これを機会に再編集し文体の統一を計ろうかとは思ったが、元よりそんな時間を確保すること許されることもなく、このままという形にして辱めを甘受しようと思う。文章表現技法は私の人間成長度合いを映し出す鏡だといえましょう。本当にありがとうございました。

 

(敬称略)