好きだった引退した踊り子のブログ中に

「ストリップは戦う男のためにあるんだ。私がお客さんの心を笑顔にしてあげる」

とかつて語っていたことがある。途中で舞台を降板させられたのか、体調不良で自ら降りたのかわからぬが、その週の中頃には劇場に出なくなった。心配する客を慮り、その後に書いたものだと記憶している。ツイッターが流行る前のブログ全盛時代、比較的長い文章が多く、彼女の文章には心を打ち、惹かれる部分も多かった。そして今とは違い女性客はほとんどいなかった。ストリップは外で戦うサラリーマンにとって、調度良い息抜きの場所でも在り、這う這うの体で観るそのステージに、勇気づけられ、前向きに生きられるという、寂しい男達の集まりだという側面もある。現在でも私は「浮世のしがらみを一時でも忘れられたら」と思うものだ。最近のストリップは少し様相が変化して来たところもあるが、やっていることは当時とはそう変わらない。演目が全てだと私は思っているが、そう思わぬ客も多くいることだろう。求めるものは客人各々が違うのである。私は比較的暗い演目よりも、明るい方が好きなのだが、心に残るもの、ふとした時に過るものは、年間を通してそれ程あるまい。またその時の感情の持ち方にもよるだろう。

 

 

【演目】

石原さゆみ(道頓堀)「サザン」 8中 in 渋谷                                              

黒瀬あんじゅ(TS)「エクスタシー」 11結 in まさご

春野いちじく(TS) 「ファンタジーソープ」 5結 in あわら

南まゆ(ロック座)「百物語 8景」 8中 in 浅草

虹歩(蕨) 「ガガ」 7中 in 晃生

高崎美佳(ロック座) 「女鬼慕情」 11頭 in 東洋

小宮山せりな(浅草) 「スパイダー」2頭 in 東洋

石原さゆみ(道頓堀)「四季」 3頭 in 晃生

中条彩乃(ロック座)「ノンフィクション」3頭 in 東洋

チームプリティ(ロック座) 5中 in DX東寺

南美光(TS) 「獅子舞」 1結 in 晃生

桜庭うれあ(ロック座) 「Western6結 in 東洋

ゆきな(ロック座)/中条彩乃(ロック座) 「おんざろっく。1st」 8結 in 東洋

小宮山せりな(浅草) 「インド」 2頭 in 東洋

 

※タイトルは可能な限り調べたが、わからぬものはそのイメージとした。

 

2019年の演目ベストは以上になる。毎年のことながら、「何を今さら」という向きもあろうが、こればかりは私の性分ゆえ、観た香盤を眺めながら書き記していたら、異論は大いにあろうがまとめたらこうなった。

 

旅先で観る舞台というのは、やはり格別なもので、その浮ついた気持ちと楽しさに由来し、それは財布の紐の緩さだけで無く、観る目もイージーになるのかもしれない。いやそんなことはあるまい。例えこれらのステージを東洋や晃生で観たとて、私の評価基準に変わることは何ら変わること無く、仮に投げ銭だけの評価があるとするならば、きっとこれらになることだろう。これら1ステージだけを観るためだけに入場料を払ったとてしても後悔はあるまい。専業とか副業とかは関係無い。板の上では皆、同じである。

 

「僕はね、一度デートしてみたいのですよ」

と一緒に劇場に行った知人に言われた。

「何をそんな中学生みたいなことを。裸を観れる踊り子にですか?」

「はい、そうです」

「中学生ですら、デートのその先のことしか考えていないですよ」

とお互い笑っていたのであるが、ベッドで全てを晒した踊り子の裸身に浴びたその姿は、神々しく、畏れ多く、むしろ衣装を纏っている方が、最近の私は昂っていることの方が多いものだ。

 

当然のことながら、読者の方々もリクエストされれば、本年も踊り子の再演がある得る。尚、全員現役である。読者自身の評価基準に照らし合わせてくれたら、私がここで書く目的の過半は達したことになる。

 

 

【劇場】 7劇場 59

35回 東洋ショー

17回 晃生ショー

 2回 DX東寺/まさご座

 1回 あわらミュージック/渋谷道頓堀劇場/浅草ロック座

 

 

年頭の石原さゆみちゃんの復帰宣言で、私の行動が大きく異なってしまった。当初、ここまで晃生に行くはずではなかった。「軽々しく物申さじ」というより、自身の「フットワークの軽さ」を褒めてやりたい。いかようにも観劇スタイルなど変化し得る、まさにうべなるかなというやつである(笑)。進行の拙さに起因するダンスカットは、熱が醒めるということが多々有ったことも事実であり、一巡すら観る事無く、そのまま東洋へのハシゴというのも一度や二度では無かった。劇場通いも東洋だけなら、預貯金は大きく増えていくのであろうが、毎年のことながらそうはいかない。今年は仕事の面でも、AI化と働き方改革の恩恵受け、労働時間は変わらずとも有給は取れそうな環境にある。小旅行が増えそうな予感がしているがどうであろう。未訪問の劇場にも足を伸ばしてみたい。仙台と那覇がある時は不可能と思えた全館制覇も射程距離に入った。

 

 

【踊り子】 お会いした踊り子は87

14回 石原さゆみ

11回 春野いちじく/ゆきな

10回 望月きらら

 8回 上野綾/榎本らん/小宮山せりな/真白希実/夢乃うさぎ

 7回 鈴木千里/水元ゆうな

以下省略

 

年々、出会える踊り子の人数が少なくなってきているが、同じ香盤に自身が数回行っていることが大きな要因である。一期一会を信条とし、薄く目立たぬ客を気取っているが、「中日で演目変えた」という情報が入れば、これ以上の食指をそそられることは無く、「何としてでも行かねば」となるのであるから困ったものである。1年のスパンで毎年寄れるのは必然となる。上位が関東所属というのも面白い。「わかりやすい性格」と自他ともに認めている。上位でも撮らない人がいるのでこの場では多くは語るまい。思い出は撮るものでは無く、心に刻み残していくものだろうと格好良く言っておこう。私の中ではストリップは観るものなのだ。

 

 

【オープンショー】

宇佐美なつ(道頓堀)

小春(ロック座)

春野いちじく(TS)

小宮山せりな(浅草)

ゆきな(ロック座)

北原杏里(晃生)

くるる(晃生)

あらきまい(東洋)

 

近年「いったいどこを観るんだ」というものが増えている。それは私の求める本来あるべき姿のオープンショーとは大きく異なる。卑近な言い方をすると「目が合って、オープンして、ニヤリ」というものだ。チップ数人という時代に育った者にとって、景気が底上げされたのか、それが末端にまで回って来たのであろう、毎回というのはいかがなものかと思える。そう思っている客も少なからずいるだろう。踊り子ファーストとはいえ、初速は良いと思えても、これが続くのはやはりいけない。

 

10年続く趣味もそうあるまい。好きな踊り子が引退するたびに「俺も一緒に辞める」と何度も言ってきた私は、今年もそれを言うかもしれない。しかしながら「今週は東洋、来週は晃生が熱い」と抜かしつつ、恥ずかしくも無く大きな顔をして今でも劇場通いを続けている。当初、俄かのスト客が「ペンは剣よりも強し。言霊が宿っている」と勝手な使命感に燃え、学生時代に多少物書きを目指したところもあり、少しでも綴り続ければ現状が多少は変わり得るかもしれないと思っていたが、ブログなどという古めかしいツールは、タイムリーに発信されるSNSの普及に勝てる筈も無く、劇場へ向かう一助にすらなっていないことを今では痛感している。それ故、今まで以上に縷々と書き下ろすことはあるまい。とはいえ、劇場に行くことは、私にとって非日常で有り、刺激的で、これが良いのか悪いのか、このまま定年後も劇場通いをしていそうな勢いであるのは間違いない。

 

(敬称略)