メディナ、スーク

 

 

夜明け前
湯に遊ぶ



『養華天』のてっぺんに、帰蝶が居ました。
来てくれました。
「刀自古郎女、好きよ」

美しいとも
賢いとも
優しいとも、愛されたとも
何も記されない。
天寿国繍帳をのこしたのは妃の一人 橘大郎女
太子と同じ墓に眠るは、ほぼ同じ時期に亡くなった故か、母の穴穂部間人大后と
妃膳部菩岐々美郎女。
彼女の娘が刀自古の生んだ山背大兄王の妃となる。
刀自古郎女は声を発せず、


「それでも 馬子の娘として生きたのよ」

貴女はいつもそう
限りない優しさで、歴史の波間に沈んだ 命を 愛おしむ。

養華天の差し伸べる枝に腰かけ
過去を
未来を
時の有様を視る


湯に、まだ咲かぬ桜の夢を散らし、さながら刀自古郎女が残したかった
天寿国が湯気の中に浮かび上がる・・・多分、

橘大郎女と太子を偲びたかったであろう
夢が広がる
 

 



曼荼羅の 湯では ありませんか !

ものすご・・・・・

養華天が満開の花を咲かせ 湯の夢殿を覆う
幻の満開の桜が 私を包む。

湯は爛漫、ああ、この時間の潤沢さよ

 

    オークラトーエンの梅模様

 

 

 

梅香の馥郁たる

夢の中