本年もどうぞ宜しくお願いします、今更ですが。 | 面打 能面師 新井達矢の制作日記

面打 能面師 新井達矢の制作日記

日本の面に向かう日々

一月中の更新がかなわず今になりましたが、本年も宜しくお願い申し上げます。

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初めての四国、松山の東雲神社さんに行ってまいりました。
ご秘蔵されている数多くの優れた面を拝見調査に参加さて頂き、名品に出会い恍惚の時間・・・
ホテルと神社の往復を繰り返す濃密な3日間でしたが、別の機会には路面電車でかの有名な温泉へも行きたいです。


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これは所謂、布袋様の面で神楽面として制作しました。
羽生光長作の大黒と、面六という関東では有名な作者の写真を参考に自分なりの布袋尊、
久しぶりの創作面です。


最近は修復が多くなり、年明けからは有り難くそれらに追われる日々。
お預かりしている古面の画像等をご所蔵先の許可無く公開することは倫理に反しますので、
自らヤフオクで落札した面の修復過程。

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「邯鄲男」
修復前の画像。
彩色層が大きく剥落し、その周囲は木地から浮いています。
浮きを押さえるのが大問題で、膠とフノリなど水溶性の接着材を用いる方と合成樹脂などを用いる方に大きく分かれるようです。

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浮いた彩色を木地に接着したあと剥落した彩色層を補う「補彩」に入った段階です。
胡粉と膠の混合液を塗り込むことが殆どだと思われますが、別の素材を用いる先生もいらっしゃいます。

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修復完了。
上記の白下地の上に上塗りの肉色胡粉を塗り古色で色合わせ、
更に疵彩色などを加えたり光沢を調整して周囲との違和感を無くします。

修復前と色味が違うのは撮影環境?の影響で実際は変化がありません。
どの程度キレイにするか?が毎回悩まされるところですが、今回は経年変化で付いた表面の疵も面の雰囲気を作り出す要素だと考え最低限の補彩に留めています。

多く見る男っぽいものと違い醤油顔の邯鄲男。
まるで今若のようですが、造形的には明らかに邯鄲なのですよ。
膠が弱まった艶消しの彩色と相まってなかなか良い風情を醸し出しています。

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東京国立博物館で興味深い展示が始まりました。

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昭和45年出版の目録以降、東博所蔵の仮面専門の図録等は出版されていませんでした。
当時のものは大変なプレミアもので、手に入れるには大変苦労しました。

今回は金春家の伝来品に限りますが、装束も含まれカラーで面の正面と面裏。
重要作品には側面と斜めの画像も掲載された豪華なもの、お薦めの一冊です。


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蠟梅がやっと花を咲かせてくれました。
種から育てた苗を頂いたもので、前の家の庭に植えて数年?家の建て替えに伴い畑に植え替えて三年以上経ってのこと。
これを吉兆として前向きに歩んでいきたいものです。
近所のオカシナオバサマが深夜から早朝にかけて不法侵入して蕾をむしるようですが・・・



【雅号と花押】

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長澤氏春先生の珍しい焼印。
15年ほど前に同じ印の面を修復にお預かりしたので直接お伺いしたところ、
戦後間もない30代頃使っていたものだと伺いました。
ちなみに北沢如意先生は同じく丸印で平安耕雲の印があるようです。

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鈴木慶雲先生の刻銘。
師匠である高村光雲の影響でしょうか同門の先輩にあたる西村雅之師も同じく刻銘が多いようです。

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天下一若狭守の焼印。
現在は天下一角坊の焼印でないという考えが多数かと思います。
では誰なのでしょうか・・・・

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江戸出目家初代(越前出目家4代) 古元休満永の朱漆書きによる名と花押。

最近は歴史上の人物の名前を捩ったり、近代の名工の跡取りとなられて雅号とされる方がいらっしゃるようですが、私にはそのようなセンスも巡り合わせもありません。
親からもらった名前は決して嫌いなわけではないのですが、
漢字を連ねた重々しい響きに何と無く憧れますね~
江戸期の面打は初名、俗名。
家督を相続し剃髪してから名乗る雅号?など色々あるようです。