案の定広報が遅くなりましたが・・・
本年も、菩提寺宗禅寺様に於いて当教室の唯一の発表の場とさせて頂いている「春の文化展」が始まりました。
ご住職の高井正俊和尚様、創建400年を機にお寺に安置されている多くの仏像を修復された芝崎さんご夫妻と記念撮影。
先祖も拝んだであろう菩提寺の仏様を修復された技術者さんは、もはや他人ではない気がしてしまいます。
ご覧のように今回の特集はお寺の仏様がお厨子からお出まし下さり身近に拝観できるもので、
江戸時代の仏像ではありますが、文化財的な価値は抜きにして、村人(江戸時代までは川崎村と称しました)にとっては掛け替えのない存在なのです。
指導させて頂いている「宗禅寺木彫教室」の展示場。
殆どは能面の類ですがレリーフ作品等も並びました。
檀家さんをはじめとした大勢の方の様々な作品が本堂、庫裏等に所狭しと展示されています。
幸いお天気に恵まれるようですし、ご高覧頂けたら幸いです。
場所 「臨済宗建長寺派 医王山 宗禅寺」 東京都羽村市川崎2-8-20
会期 3月18日~20日
時間 10時~16時 (最終日15時半まで)
どなたでも拝観無料ですので、お出かけ下さい。
私は居られるかわかりません・・・
2年前に取材して下さった本が出版されました。
能楽の紹介と共にそれに関わる職人即ち、舞台、装束、扇、鼓の革、面の
「支える人たち編」に僭越ながら取り上げて頂きました。
小中学生向けの児童書?の類のようですが写真が多く平易な文章に読みがなも親切にふられ、無学な私でもスラスラと読むことができました。
15歳の読解力で止まっているのかもしれません。。
「痩男」
目の金具、鍛金とアマルガム鍍金。
銀紙で大凡の型紙を作ります。
和紙でもやりますし、大雑把に決めるだけなので色々使います。
0.5ミリの銅板に写して切り取り、目に乗せたところ。
コンロの火で赤くなるまで熱して冷まし、先の丸い金槌でザッと形を出したところ。
上記の方法は「焼きなまし」といって銅を柔らかく加工しやすくする方法です。
この目は小さいので必要ないともいえますが、そのまま叩き過ぎるとヒビが入るということを知りました。
形が決まって目の穴を開けたところ。
裏から穴あけポンチで穿ち、棒鑢で彫刻に合わせて広げます。
槌跡を消すように荒いペーパーから細かいものへ、鏡面状になるまで磨き上げます。
上の画像は江戸時代に制作された「川途」の修復で脱落して失われた目の金具を補います。形状が似ているので痩男と同時進行。
右の皿には白梅酢、左の皿には磨き上げた金具と水銀。
金具に梅酢を塗り、水銀を付着させます。
金箔を何回となく貼り重ねます。
水銀に吸い込まれるようになるのですが、光沢が無くなるまで貼り重ねた方が発色が良いようです。
それを直火で焙り、水銀を飛ばします。
光沢はありませんが、金に近いキレイな黄土色です。
さらに真鍮ブラシ等で磨くと金属らしく変化。
ご承知のように危険な作業です。
銅に漆で金箔を貼った方法が正しいと仰る先生もいらっしゃり、こちらの方が金色が鮮やかに出易いことは確かです。
色々やかましい時代・・・今後続けられるか分かりませんが、古来の技法に憧れと敬意を持って行いました。
某師よりご伝授の新技法を試しつつ肌作り。
金具を嵌め、墨や朱、金泥を塗って各所を古色でおさえつつ。
毛描き。
男面の髭や髪は巧拙が明確に出るのでコワいもの。
古面の優れたものは繊細でありあがら筆勢が同居するものですが、H先生のように書家の先生に弟子入りするべきでしょうか。そうすれば先人の仕事に近づけるのだろうか??
上記の「春の文化展」に出品予定でしたが間に合いませんでした。
毛描きまで終わり一見完成しているようですが、能面らしい位がありません。
”位”を「におい」「空気」「気配」とか表現されますが「生命感」や「詩」などと言い換えられる方も。
自作には程遠い境地ですが、優れた古面と対峙すると常に迫ってくるものです。
どこにでもある能面のようですが、新しい技法や秘伝をモノにしたいと挑んでみました。
ヤニ抜きせずに彩色したので、木汁によって流血しているかのような効果が現れれば良いなと…後は自然に任せます。