手持ちのカードはわずかに3枚。
そのカードの真ん中に鎮座するのはジョーカー。
相葉は自分の手を見つめながら、ゴクッと唾を飲む。
このままいけば……。
すると二宮がクスッと笑って、真ん中のカードに手を掛ける。
「え……?」
「そろそろ決めておかないとね?」
二宮はスッとジョーカーを抜き取る。
なんで~っ??
ニノ~っ!!
相葉が泣きそうな顔で二宮を見つめる。
「おっと~っ!ここでババが動いた!!」
ナレーターの興奮気味な声に、身を乗り出した櫻井の姿がカメラに納まる。
二宮は、しまった!という顔を作りながら、ジョーカーを手の内にしまう。
相葉は大野のカードを引きながら恨めし気に二宮を見る。
「なんで……わかってたの?」
「あなた、わかりやすいから!」
「なんだ、これで俺にもチャンスが回ってきたか?」
松岡は大野にカードを向けながらニヤッと笑う。
「チャンスになればいいですけどね?」
二宮がふてぶてしく笑う。
「なるだろ?この中にジョーカーがあるんだから!」
松岡は二宮のカードをじっと見つめる。
二宮のカードも3枚。
真剣な表情で一枚一枚指を掛けて行く。
もちろん、二宮の表情は変わらない。
「あれ?おかしくない?」
松本が首を傾げる。
「何が?」
隣の櫻井はモニターを見ながら、聞き返す。
「だってさ……。」
松本がしゃべろうとしたとき、松岡が右端のカードを引き抜く。
二宮のカードは、胸の前で持たれているのでわからない。
もちろん、松岡が何のカードを引いたのかも……。
松岡の手の内がゆっくりカメラの前に現れる。
松岡の引いたカードは……ダイヤの3。
それと同時に松岡は自分のカードと合わせてダイヤの3を場に捨てる。
「逃げのびた松岡~っ!そして、カードは後1枚!!
勝ち抜け決定だ!」
ナレーションの声に、応援会場から安堵の声が漏れる。
不満そうな松岡の顔とは裏腹に、櫻井は満足そうにうなずく。
いいぞ、いいぞ!さすがニノだ。
「これで、最弱王は嵐の誰かってことになりますが、櫻井さん?」
「は、はい!」
すぐさま顔を作って、カメラを見つめる。
「3人だったら、誰が有力でしょうか?」
「それは……大野さんじゃないかな?元々、最弱王なわけだし。」
櫻井はニコニコ笑いながら、相葉のカードを引く二宮を見つめる。
相葉のカードは二宮に取られ、残り2枚。
「そうですねぇ。大野さんも二宮さんと同じく3枚、相葉さんが2枚……。
あ~、松岡さん、最後の一枚を大野さんが抜いた~。」
ガッツポーズでカメラに向かう松岡だが、目が喜んでいないのは明らかで、
モニターを見ていた佐々木が、フッと鼻で笑う。
松岡の最後のカードを引いて、大野のカードは4枚。
二宮も相葉のカードを引き4枚になる。
「相葉さん、ラッキーですね。もうすぐ上がりそうじゃないですか~。」
二宮がクスッと笑う。
なぜ自分のカードが減っているのかわからない相葉は首を傾げてカードを見つめる。
「ね、見て。翔さん。」
松本に耳打ちされ、櫻井がモニターに見入る。
「ニノ、さっき3枚だったじゃない?松岡君に取られる時。」
櫻井は思い出して、うなずく。
「……3枚だった……おかしくないか?」
減っているはずのニノのカードが増えている……まさか。
「ニノ、やったか?」
ジョーカーを隠したな。
これはいい!ニノが最弱になったら、これを暴露して……。
待て。最弱じゃなかったら、これをバラして最弱になるつもりか?
反則行為で?
……今バラしても、反則で最弱?
お前は好感度とか、気にしないのか!!
いや、俺だって智君の為なら好感度なんか……。
「どうする?言っちゃう?」
「いや、待て。そんなことしたら……。」
「ニノが最弱王になるのはまずい?」
松本が意味深に笑う。
「まずい……非常にまずい。
できることなら、智君か、相葉君で……。」
「翔さんなら、そう思うだろうと思ってたよ。」
「嵐の好感度を下げるわけにはいかないし……。」
松本は、じっと考えて、周りを見回す。
「みんなは気づいてないみたいだね……。
ゲームの行方を見守るしかないか…。」
二人がモニターを見つめると、大野のカードが揃い、2枚に。
二宮のカードも揃い2枚、相葉は一枚で、大野のカードに手を掛ける。
「これで揃えば、相葉が二抜けだ~っ!」
ナレーションが響き、相葉がギュッと目をつぶって大野のカードを引く。
カードを合わせてみると、手持ちがクローバーのJ持ってきたのはハートのA。
「残念!合いません!」
ざわざわする応援会場。
大野はじっと二宮のカードを見る。
2枚の内、1枚は間違いなくジョーカーだ。
大野がジョーカーに手を掛ける。
「いいぞ、智君!」
櫻井が小さくつぶやく。
しかし、大野の指は隣のスペードのAに移動する。
「何してるんだよっ!」
櫻井の声がどんどん大きくなる。
「あ~、櫻井さんは二宮さんを応援ですか?
最近、仲がいいって評判ですが、それじゃ、大野さんが怒っちゃいますよ。」
ドッと笑い声が起こる。
「ははは。そういうわけじゃないんですけど……。
大野さん用に作ったジャケットなんで、最弱王の白いジャケット。
3人の中なら一番似合うんじゃないかなぁと思って……。」
なんとか、ごまかす櫻井を隣の松本が面白そうに笑う。
「さぁ、大野さん用に作られたジャケットを、また大野さんが着るのか!?
選ぶのはどっちだ!」
ナレーションと共に、二人の視線がモニターに集中する。
モニターの中では、大野がまだ悩んでいる。
「そろそろ決めてくださいよ、大野さん。」
二宮が呆れたように大野を見る。
「これで決まっちゃうだろ?ここは慎重に……。」
「慎重にいったって同じですよ。カードは2枚。どっちにします?」
大野はグッと指に力を込める。
「ええいっ!これだっ!」
大野がカードを引き抜く。
引いたカードは…………ジョーカーだ。