「お~っ!これは面白くなってきました~!!」
ナレーターが騒ぎまくる。
大野の眉間に皺が寄り、口が尖る。
鼻もピクピクと動く。
それを見た櫻井が首を捻る。
あれ……智君、勝つ気なの……?
わかってる?
負けたら、誘われちゃうんだよ!!
違う、勝ったらだ!
ええい、ややこしい!
櫻井がモニターを見ながら、口をパクパクする。
モニターの中の二宮は、フンッと鼻を鳴らし、
面白くなさそうに相葉のカードをチラッと見る。
「これだから、天然は……。」
相葉のカードを一枚抜く。
「おっと~、二宮さん、ここでAを引けば上がりなんですが、
全然考えずに引きましたね~。」
ナレーターが、不思議そうにつぶやく。
「あれ、考えてないんじゃなくて、わかってるんだって、誰か教えてあげたら?」
松本が面白そうに笑う。
「ニノには……相葉さんは手に取るようにわかるんだろうねぇ。」
二宮の引いたカードは、案の定クローバーのJでゲームは動かない。
「さぁ、今日一番の山場か!?
現最弱王の相葉さんと、初代最弱王の大野さん、
本当に最弱をかけての戦いです!これは面白い対決ですね~。」
応援会場がドッと笑いに包まれる。
どちらもポーカーフェイスが作れない。
しかし、引きは強い。
相葉が大野のカードに手を掛ける。
「大ちゃん……、最弱になったら……んぐふふ!」
相葉が、ぐふっと顔を赤くする。
「ん?」
大野が首を傾げると、モニターを見ていた櫻井も首を傾げる。
「あれ、休日デートできるよねって言う意味?」
櫻井が隣の松本に話しかける。
「にしては、あの笑い方……?」
「まさか、さらにその先……。」
櫻井が言いかけて、眉を吊り上げる。
「まさかぁ!雅紀に限って……。」
松本が大きな目を大きく見開く。
モニターの中では、ぐふぐふ笑いながら、大野のカードを見つめる相葉。
「どっちかなぁ。これで終わっちゃうかも……。」
「終わるわけないでしょ?ジョーカー持ってない人からしか、終われないの!」
「そうなの?」
相葉は首を傾げて大野を見る。
「ん~、おいらに聞かれても……。」
大野も首を傾げる。
「まぁ、いいですよ。さっさと引いちゃって。」
「じゃ、どっちにしろ、終わらないなら……これっ!」
相葉が大野のカードを引く。
「おお~、相葉さん、引きましたね~。さぁ、ジョーカーは移動したのか!?
引いたのは……ジョーカーだっ!魅せます!さすが、現最弱王!
ジョーカーに愛されています!!」
相葉の手の中で、ジョーカーが笑う。
応援会場でもどよめきが起こる。
「さすがだね。魅せてくれる!」
松本が歓声を上げる。
「いや、ダメでしょ?それじゃ……。」
櫻井の顔色が悪くなる。
これでニノからJを引いたら智君上がり?
まずいよ、まずいでしょ。
ニノと相葉さんなんて……一瞬で勝負が決まっちゃう!!
大野はホッとしたのか、安心しきった顔で二宮のカードを引いていく。
「あ~、そんな簡単に……。」
櫻井の危惧も大野には届かず、大野が引いたのは……クローバーのJ。
「大野さん、二抜けだ~っ!」
大野は相葉と二宮をニコニコ見ながら、カードを場に捨て、手を上げる。
「残るは相葉、二宮の戦い。一騎打ちです!」
ナレーションに、応援会場のテンションが上がる。
いつの間にか、大野の休日争奪戦のことも忘れ、試合に身を乗り出すゲスト達。
「相葉か……はたまた二宮か……。」
二宮はじっと相葉のカードを見つめる。
相葉はコチョコチョとカードを変え、うん、とうなずくと、二宮の前にかざす。
「どちらかがジョーカーってことですよね……。」
「ん~、そうかもしれないし、違うかもしれない。」
「違かったらババ抜きにならないから。」
「ひゃひゃひゃひゃ。そうだね、そうなっちゃうね~。」
相葉が笑ってじっとカードを見つめる。
「俺とお前の仲も、もう20年……。」
「その件(くだり)、前回、やりましたから。」
「総武線で……。」
「それもやりました。」
二人のやりとりに会場中が笑う。
「俺のこと、愛してるかっ?」
「それは……やってません。」
ゲスト達がドッと笑う。
「愛してるなら……引くカードはわかってるなっ?」
「わかるか、そんなのっ!」
二宮が笑いながら、相葉のカードに触れる。
「愛がある方を引いてくれ。」
「愛?愛なんてあるかっ!」
二宮の丸い指が、相葉のカードを行ったり来たりする。
「あるのよ、愛!」
相葉がクスクス笑う。
二宮はカードに触れながら、じっと相葉の様子を読み取る。
ジョーカーは……。
二宮がジョーカーに指を掛けると、相葉が小さな声でつぶやく。
「ニノが~、大ちゃん大好きなの知ってるよ……。
でも、絶対死守するからね。」
何を死守するんだか……。
二宮は、はぁと溜め息をついて、カードを選ぶ。
「相葉さん……、私が選ぶのは……こっちだぁ!」
二宮が大きく腕を振り上げてカードを引き抜く。