秋から初冬にかけて | トナカイの独り言

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 今年の秋は短く感じた。
 庭のモミジが紅葉したと思ったら、あっというまに落葉してしまった。ところが、なかなか本格的な冬にならず、秋と冬の間に空白の時間が流れている。
 

 こんな秋から冬に移る季節、必ず聴きたくなる曲がある。
 それはブラームスの交響曲第四番である。
 きっと同じ想いのクラシック愛好家も多いのではないだろうか。
 

 この曲を初めて聴いたのは高校一年の時。覚えるほどたくさん聴いたのは、高校三年の時だった。一人の友人がこの曲を愛好し、強制的に何度も聴かされたと言ってもいい。彼の第一の推薦盤はフルトヴェングラーで、彼の口癖は「ブラームス革命」だった。

 

 大学時代のわたしはブラームスに惹かれなかった。それどころか嫌っていたと言ってもいい。しかしスキーで大怪我をし、長く苦しい入院期間を経てみると、強烈にブラームスに共感するようになった。
 この時初めて、ブラームスの挫折や痛みを理解した・・・・と思った。

 

 それ以来、毎年秋から冬に移り変わる時期、この曲を聴きたくなる。
 数回聴くだけの年もあれば、怪我から回復する年や今年なら、何十回も耳を傾けている。
 こうしてもう四十年以上をすごしてきたのだから合計すると凄い回数になる。それにもかかわらず毎回新しい感動を与えてくれる。名曲中の名曲である。
 

 わたしが長い間愛好してきたのは以下の二枚。
 上がベーム&ウィーンフィル、下がワルター&コロンビアである。

 

 

 どちらも決定盤と言える名演奏だ。
 もちろんカラヤンも素晴らしいのだが、何種類かある彼の演奏は、どれも少しスマートすぎる気がする。起承転結が明確すぎると表現したら良いのだろうか。
 この曲にはもっと「侘寂」といった感覚や「ひなびた情感」が欲しいのだ・・・・わたしとしては。

 

 今秋、特別に惹きつけられたCDがある。それがこちら。

 

 

 有名なグラモフォン盤ではなく、EMI盤でオーケストラはシカゴ響である。
 ベームほどひなびておらず、ワルターほど侘寂はないのだけれど、深い情感のなかに「悲しみ」と「儚さ」が溢れている。

 名曲には、まだまだこんな発見がある。それが嬉しくて堪らない。
 もしみなさまに推薦盤がありましたら、ぜひお教えください。
 まだまだ聴き尽くせないブラームスの四番ですから。
 

 もしも聴いたことのない方がいらっしゃいましたら、上のどれかをお聴き下さい。ゆったりとした気持ちで、先入観を持たず。曲の流れを理解するのに、何度かお聴き頂けましたら幸いです。

 上記のCDの他に、愛好する演奏にザンデルリンク(ドレスデン)やプレヴィン、ギーレンなどもあることを記しておきます。