この一年 | 月のベンチ

月のベンチ

両親の闘病記


母の気管狭窄が未治療に終わり、大学病院から戻って来てからのこの一年、私の口癖は『ちょっと待って』でした。

どこにいても、何をしていても、次から次にやることがあり、『ちょっと待って、ちょっと待って』と言いながら一つ一つを片付けてきました。

病院ではスタッフさんたちが母のお世話をしてくれます。
でも何十人もの患者さんのケアをしなければなりません。
やはり細かい点は家族でないとできないことが多いです。
家族だからこそ、気になってしまうことがあるのも、しかたがないことだと思います。

意思疎通の難しい四肢麻痺の人のケアをしたことがない人からは、毎日病院に行っていると言うと、ただ顔を見に行く程度だと勘違いされます。
実際は汗だくになってベッドサイドを動き回っています。

母については、何度も書いてしまっていますが、昨年の急変からいろいろなことがあり、余裕と言うものがなくなりました。
それまでは何とか時間を作って母のための学習会やマッサージの講座に通ったりできました。
それが今は自分のことも一切やる気力も余裕もなくなりました。

時間を作るということは、今やっているすべてのことをさらに早くやらなければならないということです。
どこかで手抜きをすれば、あとで全部自分に返ってきます。
それは嫌というほど実感しました。

土日祝日も年末年始も、休みはほとんどずっと病院に行っているので、日中は家にいたことがありません。
家に帰ると、父親やネコの散らかした後片付けをしながら家事や母の洗濯物の処理をします。
母の物はネコの毛がつかないようにとにかく気を遣います。

何かに行き詰まると、私は『ちょっと待って』と呪文のようにブツブツと呟くようになっていました。


仕事をしていても、病院で母のケアをしていても、ニャアニャア鳴くネコにも、そして次から次へと出てくる家事に対しても
『ちょっと待って』と呟きながら延々と動き回る自分。



自分はいったい何者なんだろう?



倒れ込むようにそこら辺で寝るか、あるいはほとんど眠れないか、そういう一年でした。



結局、あれ以来ヘアカットにも行かず(行けず)、浮いたヘアサロン代は、そのまま母の入院費の足しになりました。。。



オシャレするのが好きだった自分は、いったいどこに消えたのか

何だか他人事のような気がします。





とにかく、疲れた。

そのひとことです。