余命宣告 | 月のベンチ

月のベンチ

両親の闘病記


私は本人に、嘘をついてくれと言っているのではない。
残された時間がどのくらいか見当がつけば、やり残したことや、やりたかったことに着手できる。

どう生きて、どのように最期をむかえたいか、考える人は考えることができる。


父親は、外見はおおらかで小さいことにはこだわらない性格に見えるが、じつは非常に気が小さく、根に持つタイプだ。

兄は父親に知らせる前に、当時の主治医と、余命宣告について予め何も話し合わなかった。
兄も父親の気が小さいことは承知している。


私は本人にウソをついてくれと言っているのではない。

ただ、本人のやる気を根こそぎ奪ってしまうような言い方は、避けて欲しかった。
たとえ症例的にそうであっても、本人が真実を望んだとしても、医師は、家族の確認なしにズバズバものを言っていいわけではないと思う。

せめて、余命期間を少し曖昧に言うくらいはして欲しかった。





兄は仕事で、結局、父親をひとりで行かせたのだ。
父親は家族がいるのに、余命宣告をひとりで受けたのだ。

兄は、父親の余命期間すら医師に予め確認もしていなかったノンキくんである。

ばかやろうだ。