らんたん | 沖田峯子 人生をクリエイトする。

沖田峯子 人生をクリエイトする。

日々思うこと、創作のこと、大好きな映画鑑賞などなど好きなことだけを自由に書き綴っています。

「らんたん/柚木麻子」の感想です(長いよ!)



この本はジェンダー問題に前のめりに取り組んでいる、知り合いのジャーナリストの方にお勧め頂きました。

「なぜ自分は男に生まれなかったのか」

昭和育ちの女性なら、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。この本は意識高めな女性におすすめしたい渾身の一冊です。

この本の感想を一言で言うとすれば、「夢のある女性はかっこいい!」です😆

1ページめくるたびにドキドキワクワクして、うっとりして、共感して、涙して、心が忙しく流動して、全く前に進めませんでしたw

最初、この本の帯にある

「私達は姉妹です。ずっと手を取りあって、生きていきましょうね」




……。


「あー女同士の仲良しこよしな話かな」

と、嫌悪したのは正直なところ。が、本を閉じた今は違います。

「世界平和は女達が握っているのだ!」

と、本気で思いましたw

物語は実在する女性を主人公に、明治~大正~昭和初期~第二次世界大戦~終戦後と進んでいきます。まさに日本が破壊と再生を繰り返した動乱の時代ですね!

近年、ジェンダー関連の問題に少しは注目が高まってきましたが、日本女性の自己肯定感の低さが「社会の刷り込み」からきていることに気付かず、自分を責めている女性が多くいます。そんな私もつい最近までは「女に生まれた自分が悪い」と思って生きていた一人です。

しかし、この本の主人公、河井道さんは違います。

彼女は現在も経堂にある「恵泉女学園」の創立者、明治生まれには珍しいバイリンガルな女性です。平安末期から続いた御師制度が明治政府によって廃止され、伊勢神宮の神職から無職になった河井道の父は一家と共に夜逃げのように北海道に移住。キリスト教へ転向した父の影響を幼い頃から受けて成長した河井道はアメリカ留学を経て、日本と海外の矛盾を目と肌で感じ、「日本の女性の地位の低さ」を目の当たりにします。

・日本は少女を結婚させ、強制的に「大人」にさせるが、アメリカでは長い青春時代が与えられている
・日本は男や子供の世話をさせるため、女性を自立させない良妻賢母の呪縛がある

河井道は生涯独身を貫いて、日本女性が男性と同じ教育が受けられるように、女性の自立を目指す理想の女学園に人生を懸けました。

当時、家父長制度の下にあった日本は

・女性の売春が公認されていた(現在でもまだグレーだが)。
・女性は選挙権もなかった。
・女性は富士山にも登山できなかった。
・女性だけ簡単な教科書に変更させられた(女性に知識を与えない教育)。

そして、当時の文学といえば「女性が悪役、女性が死ぬ」が鉄板でした。男が書く女性像は不幸な女ばかりで暗い物語が多かった。「苦労」「忍耐」「儚く散る」が美しく、女性がお洒落したり、明るくおしゃべりしたり、駆け回ったりする物語は好ましくないとされていた。日本は「女性達が楽しく」過ごしていることを軽視する傾向にあった。(←うちの兄もいまだにそうですw)

この本は始終、日本をディスってますw
戦争を美化しようとする男たちをコテンパンにやっつけてますww

「女がやりたいことをやって、男の世話もせずに長生きするのは許されない」

そんな時代を呪っているような作家の思いがヒシヒシと伝わってきます。同じようなモヤモヤを抱いていた私にとっては、とっても気持ちのよい、自分を肯定できる本でした。

タイトルにもある「らんたん」のくだりがとても素敵。その光景が目に浮かぶようだし、この河井道さんの人生をも表現している。

女の敵は女ではない。
夢を追いかける女性は美しい。

私も次の世代にバトンタッチできる一人でありたいと思います😆