ばーちーの出演している舞台をはるばる名古屋くんだりから観に行って来ました。
このたび観て来た舞台はこちら。
「世界は笑う」
作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ
初日~1週間ほどコロナ感染者が出た関係で公演が短くなってしまいましたが、幸い千秋楽のチケットを取っていたので無事に観劇することが出来ました。こういうとき遠征する者としては舞台チケットよりもお高い交通費が痛いんでハラハラします…
過去にケラさんの(ナイロン100℃)舞台は10本くらい観てると思う。あとプラチナペーパーズのオムニバス公演に出演した時、4名の作家さんによる書き下ろしだったのですが、ケラさんも参加されていました。(私は堤泰之さんの作品で出演していました)
ケラさんの描く、シュールで、誰もが持っている二面性、とくに裏の部分の表現の仕方が好きです。
実はナイロンのオーディションを受けたこともありますw
落ちましたが
私の持ってるイメージですが、ケラさんの女優さんへのこだわりは強く、2パターンあるとみてます。①マネキンのように綺麗な女性、②個性の強い女性。私はどちらにもあてはまらなかったようです。
話それました。
舞台レポ
※ネタバレあり。京都公演お楽しみに待たれてる方は読まない方が良いかも。
今回、ばーちーのFCチケットのおかげで千秋楽のセンター席が取れました
結構、後ろの方でしたけど。
でも、コクーンは傾斜があるので前列の方の後頭部に邪魔されることなく全体を見渡すことが出来ます。
距離的にはメガネで役者の顔がぼやけて見える程度。
ポーの時はヅカファンのおすすめでオペラグラスを使ったけど、基本、演劇はオペラグラスは使いたくない。
役者一人じゃなくて全体を見たいから。
オペラグラス使ってる間、芝居に集中できないから。
舞台の予備知識は昭和戦後の喜劇をやっている役者の話。
開演待ちに「ヤンマー」の曲が流れたり、昭和感が漂う。
この舞台はケラさんのノスタルジアなのだろうか?ケラさん私と同年代?いや…ちょい上くらいだろうか?いくつなんだろ?などと考えているうちにきっかけ曲が流れる。
わーこの曲なんか好きー。時計が逆に回り出していく感じ。世界観伝わるー。と、明かりが点くと、浮かんだ世界観ぴったりの私好みの舞台セット。
月と高架橋、手前には昭和30年代の新宿。
わーわー。めっちゃ好き。
舞台上にカツカツと現れた伊藤沙莉さん演じる撫子。その後を追って来る撫子の兄、勝地涼さん演じる大和。
撫子が夢中になっている喜劇役者のばーちー演じる是也を追いかけてきた様子。
ここで息ピッタリの掛け合いにプッと笑いが。ここが最初のつかみか。本日の客層はほんわか層かな。(ケラさんのtweetに日によって全く笑わないシリアス層の回の話をしてたので)
「喜劇役者の男なんかやめろ」と、自身も喜劇役者のくせに妹を思いやって引き止める兄。
それが分かっていても是也に依存しつづける幸薄そうな撫子もまた兄と是也と同じ芝居小屋「三角座」に属する踊り子。
二人が去った後、のろりと女装の男が現れる。
「お兄さん、行ったわよ!」
ふらふらと酒に酔った様子で登場した是也(千葉雄大)は、売人である女装の男から覚せい剤ヒロポンを買っていたようだ。
絵に描いたようなダメ人間。
(チラシからばーちーの役どころはチャラ男かなと想像してたけど、どうやらヤクチュウ男らしい…)
けれど、喜劇に対する情熱は人一倍のようだ。
彼のオープニングに突入する前の台詞は、今思い出しても鳥肌立つくらいにめちゃくちゃ良かった。
千葉くんの声、劇場内に響き渡り、心にも響いた。振動した。ものすごい良かった。魂が込められててぞわわっとした。胸が熱くなった。いまも私の記憶の中にいる、芝居を愛し続けていたあの頃の私が本気で震えていたよ。
あああ、願わくばここで拍手したかったよ~~~。
いまも相変わらず日本は舞台は静かに観る風潮ほんとニガテ…
(あれ、この舞台。千葉くんが主役だったっけ?)と思わせるような始まりから、昭和っぽいメロディとプロジェクションマッピングを使ったキャスト紹介。
リズムカルで、シャレオツで、めちゃくちゃカッコよかった!
正直、メインキャストめっちゃおるなーwと思ってしまいましたww。
これは確かに。全員に見せ場を作ろうとなると上演4時間位にはなるよね…(^^;。
主役を張れる役者さん勢ぞろい。
とにかく役者さんも豪華だけど、セットも照明も素晴らしい。
キャスト紹介が終わり、物語に戻る。
電気屋さんのテレビを観て文句を言っている温水洋一さん演じる単一。いま現在もそうだけど、笑いの流行りはどんどん変わっていく、そのことについて不満があるらしい。
時代に置いていかれた我が芸風を変えられず、それに固執し続ける頑固おやじな単一。
この後出てくる三角座でかつては人気喜劇俳優だった大倉孝二さん演じる鰯(いわし)も、単一と同じく頑固だし、すぐ怒鳴る。昭和の典型的な男!って感じだった。
その逆に…時代が時代だったとはいえ今回登場する女性達は、
男に依存する女
男を待ち続ける女
元女房と不倫して勝ち取った現女房
男に仕事を強請り続ける女
先立たれた男先輩を想い続ける女…
正直、ひとつも憧れたくない女性像ばかり。
舞台に登場している男たちは、やりたいことや、未来のことを好き勝手に語ってるのにね!!
やっぱりそういう時代だったんだな。
萩尾望都先生も言ってたな。
「木を登るにも夢を語るにも、女には理由が必要だった。その点、男には理由が必要ない。だから主人公を男にする方が漫画が描きやすかった」
やっぱり、だからか、これだけ個性的な女優さんが出てるのに、ほとんど印象にないんだな。
「男性を立てるだけの昭和の女性」が陰の存在であったように、その役どころを演じる役者さんもそうなってしまうんだなと思った。
犬山イヌコさんのお芝居大好きだけど、今回は地味に収まっちゃったなーと思いました。いい意味でも悪い意味でも「普通の女性」という役どころで、でもまあ、普通ほど難しいものはないとは思いますが。
主役の瀬戸康史さんはいい味出してました。
好青年かと思いきや、空気の読めない、あわや相手も不機嫌にさせてしまう言葉もさらっと悪気なく笑顔で言ってしまう是也(ばーちー)の兄。思わず、いるいるこういう人!って思ってしまうような、いそうでいない人。こういう役がはまるってもう才能でしかないと思ってしまうのですが。
顔が似ていると言われるこのお二人を兄弟にしてしまうとは。ケラさんやるなあ
始終、全体的に大きな展開もなく時系列のままに進む会話劇で、ちょっとした笑いがありつつも、ぶつかったり、ライバル視したり、喜劇団員の慎ましやかな日常を描いている内容でした。
怒ってるシーンが多かった印象なので、出来たら、笑いにこだわりを持ち続ける団員たちの劇中劇を観たかったかな(稽古シーンがあったけど、もっと本格的な)。彼らがどれだけ笑いに命を懸けているのか、それだけ言うんだから、それだけのものを作ってるんだろうねという形として出来上がっているのを目で確かめたかったという思いもあります。
でも、そんな展開もなく板の上に乗っている役者の芝居のテンポだけで見せていくという、(もちろん舞台セットの素晴らしさもありましたが)腕達者じゃなきゃ飽きさせず見せられない観客に媚びない4時間の舞台。
私の隣の女性はずっと舟漕いでました…。
なので、好みの分かれる舞台と思います。はっきり言うと、歌や踊りがあるような2.5次元ミュージカルのようなのが好きな人には退屈かと。
そうそう。ここの笑いも分かる人と分からない人と別れるだろうなと思いました↓
終盤の方で、既に精神を病み始めている是也の妄想、ウェイターを茶化すとこ、私はめっちゃツボでした。でも、撫子の反応が一般的だろうなと私も思いました。
創作者のインスピレーション、頭の中はなかなか理解されない。
もっと面白いものを作りたい。
ただ、それだけなのに。孤独なんですよね。クリエイターは。
是也の「世界を笑わせたいんだ!」(台詞は裏覚えです)
と言った時、分かりみが深すぎてまたゾクゾクしました。
自分を追い詰めて追い詰めて、好きなことにとことん向き合い続けて限界を迎えた人にしか分からない極地だろうなと思います。
だから、是也の行き着いた精神崩壊状態も私には分かるのです。
私も鬱になりましたから。
芝居が好きで好きで好きで好きで、本気で愛して、ある日わかんなくなりました。なにも書けなくなりました。鬱になると脳が停止するというのは本当のようです。
あのシーンのアングラな感じ好きだったなあ。
そして、ラスト。
希望ある展開に、いまの自分にも、まだチャンスはあるかなって背中を押されたような気がしました。
舞台は「喜劇」へ対してだけど、私は「演劇」への思いを重ねて観ていました。
やっぱ演劇好きだなーと思いました。
幕が降りて、ケラさんも出て来て、挨拶あるかな~と期待しましたが何もありませんでしたw
まだ大楽が残ってますからね
あと、ここで書くことではないけど、大劇場の幕間休憩で女子トイレが長蛇の列になる解決法はないでしょうかね…。
ロビー降りたのにトイレ待ちの列はロビーを横切って、最後尾を追ったら2階席階段まで登り直すってなんなんって思いましたよ。男子トイレは並んでないのにね。開始ベルが鳴ったころ、私はまだトイレに並んでましたよ…。
これはどこへ行っても必ずぶちあたる女子ならではの悩みですね。
女子に生まれたことを後悔してます。
話それました。
どうか、これ以上一つのステージも潰れず、ラストまで駆け抜けられますように。
以上、私の個人的感想レポでした。