深度8「貧乏とゆで卵」の巻
僕の周りの貧乏さんについてお話します。
貧乏な家は、やっぱり家に問題がある。
離婚してたり、親父が大酒のみだったり、両親揃ってギャンブラーだったり、親が病気がちだったり。
仕方ないと同情してしまう家から、ちゃんとしろよ!って言いたくなる家まで原因は様々。
■Aくんの場合
Aくんは高校の時、友人からフルーツ弁当って呼ばれていた。
お弁当の中身が、白ご飯とみかんだったから。
「みかんはおかずになりにくいよ。腹もちも悪いしさ。」なんて話していたのを思い出す。
■Bさんの場合
Bさんは、遠足の時、お弁当の包みを開くと、塩せんべいの受け皿(駄菓子のサラダせんべいが段々に
なって乗せられている、透明のプラスチック)に海苔巻きがならんでいたそうだ。
友だちは可愛いマンガのイラストが入ったお弁当箱に、色とりどりのおかず。
恥ずかしくて、泣きながら隠れて食べたのだという。
■Cくんの場合
Cくんは5人家族でワンルームの部屋に住んでいた。子どもの頃は良かったが、妹が年頃になっても二人の
兄の前で着替えるしかなかったそうだ。それがとてもかわいそうだったと話していた。
その他にも、味噌汁に麺を入れたものを、家では味噌ラーメンと呼んでいた。とか、小学校の職員室にまで親の借金取りが取り立てに来たなど、貧乏で随分苦労している人は多い。
昔はみんなが貧乏だから良かったと思う。ちょっとしたものでも有難かったから。
向田邦子の「ゆでたまご」という短編小説をご存知でしょうか。
(うる憶えですが)
足の悪い娘がいて、その娘は皆の足手まといになってしまう上に憎まれ口ばかりたたいて嫌われていた。
ある遠足の日、遠足先でお弁当を広げているところへ、その娘のお母さんは、大きな袋に沢山のゆで卵を持って現れる。出来立てホカホカのゆで卵を、娘のクラスメイト一人ひとりに配りながら、「うちの子は、あんな子だけど
仲良くしてあげてね」ってお願いしながら配っていたお母さん。・・・たしかそんな話。
たとえフルーツ弁当でも、味噌汁ラーメンでも、サラダせんべいの受け皿でも、僕は母親の愛は感じずにはいられない。むしろ、お金が無い中での工夫さえも感じられる。この愛情を受け継ぐことが出来れば、貧乏も悪くないって思う。家族を思う気持ちも貧乏だからこそ生まれる。