久しぶり過ぎて、書いてる自分が忘れそう(;^_^A。
どんだけ京都にいるんだよ…。
良かったら読んで|д・)チラッ
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竹林から10分ほど、すっかり日が落ちた静かな通りを歩く。
観光スポットから離れたせいか人影はなくて、たまにすれ違うのは多分仕事帰り、セカセカ家路を急いでるような人ばかり。
肩がぶつかるほどにくっついて歩いても、へーき。
「顔!」
「ふへへ」
にのに背中をどつかれても、全然へーき♪
ニヤニヤ緩みっぱなしの顔で周りわ見れば、
…辺りに高い建物なんてのは全然無くて、両側にまばらに並んでる家並の向こう、沈む夕日に縁取りされた山々のシルエットが地平線にクッキリ映えて、
ああ、遠くに来たんだなって思う。
あの日、
東京から京都、一人きりの新幹線。
15のにのにとって、かなりの長旅だったはず。
なのに、ようやく辿り着いたあいつに、おれはへんな誤解をさせた。
「…あん時、驚かせたよな」
唐突なおれの言葉に、にのは、え?って顔上げて、目玉をキョロンと動かすと、
「…ああ、ったくだよ。もうオレ、終わったって思ったもん」
と、返した。
おれの頭ン中なんて、お見通しなんだな。
言葉足らずのおれのキモチをいつも汲み取ってくれる。
「んはは、悪りぃ悪りぃ」
「今更謝ってもらってもねぇ」
ふふ…
はは…
二人の笑い声だけが薄闇にフワフワ浮かぶ。
静かな、とても静かな…
「ひぃっ!」
不意にびゅうっと風が吹いてフワフワのそれも持ってかれた。
にのの小っちゃな悲鳴と一緒に。
「先輩、寒みぃっすよ、あとどんくらい歩くんすか?」
咄嗟に風よけにしたおれの背中で、ブルッと肩を竦める。
「ふぇ?あっあ、ああ」
こんままずっと歩いてくのもいいなー、なんてすっかり浸ってたおれは、間抜けな声で慌ててスマホを取り出した。
「大丈夫っすか?」
マネに入れといてもらったデータをスクロールさせて…。
にのはそんなおれを横目で見ながら、ニヤニヤ笑ってやがる。
「…んと…」
地図から顔を上げ、グルリと辺りを見渡す。
「あそこだ。…あと100mだって」
右側に緩い上り坂。
もうそっから宿の敷地なんだろう。道沿い、凝ったデザインの街路灯がポツポツ先を教えてくれてる。
「マジ、隠れ家って感じっすね」
「だろ?」
「さすが、先輩っす」
「ふふん」
二人の言葉が、闇に溶けて。
頼りない光を辿ってくうちに、緩いカーブになってたのか、振り向けば後ろに何も見えなくなってた。
音も光もない山ン中、にのと二人きり。
サラサラ、ザワザワ、葉っぱたちの声がおれらを包む。
普段、途絶えることない色んな音の中で暮らしてるから、こんな静寂、信じらんない。
なんだか狐か狸に化かされてるような気分になってくる。
これは…、夢?
足が止まったおれを置いたまま、前を歩いてくあいつ。
「にの…」
暗くて寒くて不安で、思わず呼び止める。
「ん?なに?」
振り向いた顔が、わずかな光にほんわり白く浮かぶ。
「どした?」
頼りない笑みで小首を傾げて…。
それがめっちゃキレイでこの世のモノじゃないようなヘンな気分。
「…来て」
右手を差し出す。
「なに? もしかして怖いの?」
「まさか…」
おれに怖いモンなんか無いのは、お前だって知ってる。
こんな暗い道だっておばけ屋敷だって、俗にいう世間の荒波的なモノだってどうって事ねぇ。
「繋いだげよっか?」
ただ…
枯葉踏んで戻ってきたにのが、手を伸ばしておれの筋張った指に触れる。
おれはその手を掴んでグイと引っぱって、冷えた体を腕の中に抱き込んだ。
「……にの」
「…なに、まだ早いよ」
「…うん、ちょっとだけ…」
良かった、狐でも狸でも無ぇ。
おれのにのだ。
「ほら、行くよ」
「ちゅうだけ、一回させて」
「…あなた、路チュー好きだよね…」
呆れた顔してふんわり笑うと、どうぞって軽く目を閉じてくれた。
美味そ…
ふるふる震えるまつ毛を見ながらそっとキスして、ヒンヤリした感触を楽しむ。
気持ちい…
うっとりしてたら、にのがパチッと目を開けておれの胸を押した。
「おしまい。ほら、離れて…」
「やだ」
こんなんで終われねぇ…
もっと濃いのを仕掛けようとするおれと、体を捩じって逃げようとするにの。
「やめろって、ばか…」
「もっかい、もっかいだけ!」
「ちょ、誰か来るって!
「来やしねぇって!」
「っや、やめ…」
bububu……
密着した腹の隙間で震える携帯。
「ほら、電話だよ」
にのが焦った顔しておれのポッケから携帯取り出して、顔面に押し付けた。
「ったく、すぐ盛るんだから…」
プリプリふくれっ面してっけど、耳、真っ赤。
「くそ、邪魔しやがって…」
お預け喰らいつつもニヤニヤしながら表示を見たら、マネの名前。
「はい、なに?」
腕ン中でジタバタしてるにのを押さえながら携帯を耳にくっ付ける。
『あ、大野さん、今どこですか?』
なんか、焦ってる。
「なんで?」
『まだ到着されないって、旅館から連絡があって…』
あ、のんびりし過ぎたか。
「あと5分で着く…」
「いーえ、あと10秒でーす!」
携帯に言い放って、にのが腕ン中から逃げた。
「あ、こら!」
「5分も時間かけて、なにする気なんだかっ!」
してやったりの顔であかんべしながら後ずさって、そのまま一気に走ってった。
いつになくすばしっこい。
…やっぱ、狐か?
(コン♪)
のんびり後を追いながら、ふと、いつかのにのの言葉を思い出す。
『オレは、ずっとあなたの背中を追っかけてたんだよ?』
お前はそうゆったけど、おれだって、ずっと待ってたんだぜ?
無邪気な顔してウルウルの目ぇして必死こいておれのあとにくっ付いてくるおまえを、何度取っ捕まえようとしたことか。
…どんだけ、我慢したことか。
そう、あの日も。
続く。