この前に 16話が上がってます。







N side







オレは今、ソファに座っている。

とは言っても
『夢の中のオレ』の膝の上で
伸びてるだけなんだけど。






「ねぇ 翔ちゃん。あれさぁ…眼福じゃない?」

「…まあ。」
「はいはい。本当は嬉しいクセに。」
「…まあ、ちょっと…複雑だけど。」




犬の耳の良さ、エグイな。

オレはソファにいて、
なんなら背中の向こうがキッチンなんだけど、キッチンにいる翔さんと相葉さんの会話が、数メートル離れた所にいるオレにまで筒抜けで



「だってさぁ、ニノちゃんがニノちゃんを抱っこしてるんだよ?」
「正確に言うと、ニノの膝の上で寝てる、だけどね。」
「もうっ いいの、そんな細かいことはッ」
「うん、ごめん。」




そう。
オレは、翔さんの顔をぺろぺろして満足したんだけど、何でだか夢の世界の『オレ』にも気を緩くしてしまった。


だってさ、…なんだろ。
こう…

オレの気持ちをわかってくれた。



……みたいな?






「くぅん」
「ふふっ  お前、本当にわんこって言うんだな。」



うわっ
自分で自分の笑顔を見るって
どことなく擽ったい。



「ね、見てよ。ニノちゃんが、ほらっ」
「ちょ、相葉くんっ  手元、気をつけてよ?」
「じゃあ翔ちゃんが切ってよ。オレは長いまま焼いても大丈夫なのに、翔ちゃんが言ったんだよ?ニノのひと口は小さいから、小さめに切ろうって。」
「シッ 聞こえるから…」



聞こえてますw
オレにはね。


人間の『オレ』は
どうだかわかんないけど。





「わんこはさ、ここでどうやって過ごしてんの? やっぱ、翔さんとは同じベッド…だよね。」
「くぅん。」
「クスクス。それもすごい話だよね。」
「くぅーん?」
「や、こっちの話。」



『オレ』は『オレ』で
ずっとオレに話しかけてきてる。

意外とオシャベリだな
こっちのオレも。




「ひゃっひゃっ!や、危ないっ 翔ちゃん、猫の手だってば!」
「うぉっ っぶねー……」




突然の大きな声に
人間のオレがビクッとしてる。

そりゃそうか
だって、さっきから二人の会話
聞いてなかったもんね、人間のオレは。


ずっと話が聞こえてたオレ的には
案外予想出来てたけどね
こうなるかなって。



「くふふふっ 翔ちゃんの指、残ってる?」
「なんとかねww」



翔さんが顔の前で
自分の手をヒラヒラさせてる。

どこも切ってなくて良かった。


どんなに聞こえてたとしても
やっぱ心配になるじゃん
ケガとか。




「良かった…」
「くぅん?」
「なんでもない。あのさ、お前のご主人様、料理するの止めさせられないの?すげー危なっかしいんだけどw」



その表情は…
見ただけでオレもすぐわかるやつ。


やっぱ『オレ』の好きな人は
翔さん…だよね。



じゃあなんであそこの2人は誤解してんの?ニノの好きな人のこと。『あの人』的なこと言ってたじゃん。

オレだってその会話聞いて
思わず誤解しちゃったし。




「ね、わんこ、見て。あの二人楽しそうだよ。」
「くぅん。」


ソファの背中越し。少し体を捻ってオレを抱っこしてる『オレ』。


もちろん、オレにもキッチンの様子を見せてくれてて。声だけ耳にしてたオレは、あーやっぱそんな感じだよね…的な感じで2人の様子を見てた。


でも『オレ』は……





「ほら、楽しそう。…翔さん、…相葉さんといる時、ホント楽しそうに笑うんだ…。」
「きゅ〜ん?」
「わかんない?  …わかんない…っか。」
「ぺろぺろ…」
「ふふっ  ありがと。お前、優しいな。」



オレは…
無意識のうちに
『オレ』の指を舐めていた。



だって
人間の『オレ』があまりにも
切なそうに微笑むから…。









殺せんせーー!(泣けたヤツ)