もう分かって生きているのです。
遠い先の話ではなく物語が終わることを。
だからこそ生きるのです。
出会う人も、喜びも、試練さえも、みんな愛しく思います。
惜しむように味わって、よく噛んで下します。
やがて、別れが訪れます。
人も、喜びも、試練の時も、いつかは流れ去って、小さくなって見えなくなります。
年相応に分別くさく生きようが、
青くさい夢を置き去れずにいようが、
好きにすればいいのです。
それも、いつまで..
そのとき、思い出すのは、遠足で食べたおにぎりのことかもしれない。
そのとき、よぎるのは、涼しくなった秋風の中で聴いた虫の音かもしれない。
そのとき、浸るのは、あなたとつないだ手の愛おしさ、
そのとき、そっと置いてくるのは、きっと些細だけれど素敵なことたちだと思います。
ぜんぶ味わって、堪能して、満足して、また次の旅へ。
惜しむように味わって、よく噛んで生きていくのです。