ニューファミリーと呼ばれる、児童幼児とその親をターゲットにして作られたのがこの遊園地で、
入り口のゲートサインには、チューリップの花びらを模したゲートサインが掲げられています。
その遊園地は夕暮れになると、
遠く博多湾の海抜けの風景となって夕陽に染まっていきました。
香椎辺りの駅で降車する人の波が去ると、
奈多を過ぎる頃には車内の空気が少しだけ緩むような
ゆったりとしたモードに変わります。
やはり初秋がいいのかもしれません。
蝉時雨がツクツクボーシの鳴き声に変わり、
季節は確実にうつろってゆきます。
かしいかえんに出掛けていた子供の時分には、
やれ玩具を買ってくれだの、綿菓子が食べたいだの、
欲しいものがたくさんありました。
和白を過ぎて、新宮も過ぎて..
白くて大きな提灯が飾られた古い海の町の家々、
大音量の蝉の音、ジリジリと照りつける日差し..
やがてホワイトノイズのような蝉時雨が聞こえなくなり、突如として訪れる無音の世界。
目の前の景色もすべて色の無い白い世界に。
ふと我に返ると、
もう電車は古賀ゴルフ場前へ。
子どもが忘れたのか、置き忘れられた虫網と虫かご。
緑色のプラスチック製の虫かごには、蝉の抜け殻がひとつ。
もう誰も乗っていない電車は、私だけを乗せて
廃線になったはずのレールの上を走っていました。
途方に暮れるほど、
取り返しのつかない時間が流れてしまい、
つくづく欲しかった様々なものたちも、すっかり色あせてしまっていました。
ツクヅクホシイ ツクヅクホシ ツクヅクホシイ ツクヅクホシ
もう欲しいものなど何も無くて、
ただ叶うならば、もう一度、西鉄電車に乗って海沿いの町を走ってみたい、そう思います。