非受験学年の入学試験の見学には反対 -あえて受験生視点で①- | 2022中学受験(息子)と2027中学受験(姪) -A stitch in time saves nine-

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2022中学受験を終了した男子を持つ父のブログ
淡々と息子の学習(主にテスト)の記録をつけていたブログです。
息子は開成・筑駒をはじめ受験校全てに合格しました。
現在は2027年組の姪っこの中学受験アドバイザーです。

一部話題になっているが、入学試験日に学校界隈に様子を見に行く行為、私は反対である。理由は以下のとおり。

 

①混雑を助長する

②緊張して試験に臨む受験生を見物する行為は、仮に自分と息子がされた場合決して気分のいいものではない

 

以下私の想像した入学試験見学の悪影響をあえて受験生視点で。

こういうのは想像力の問題だと思う。自分(あるいは息子)がされて嫌なことは自分もしない(息子にもさせない)という当たり前の話ではないだろうか。中にはされて嫌だと思わない方もいるのかも知れないが。

 

最初にお断りしておくが、素人の適当な雑文である。背景を色々と盛り込んでいたら長くなってしまったが、ご笑覧頂ければ。

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今日、2月1日のA校の入学試験は、小学6年生のサピ雄にとって人生初の大勝負だ。これまで3年間通い続けたサピックス。ゲームを我慢し、大好きなサッカーをやめ、膨大な量の宿題・プリント・問題集をこなしてきた。そこまでがんばれたのは、どうしてもA校に入りたかったからだ。文化祭訪問で見たA校の生徒達は輝いていた。それまで何校も文化祭に行ったが、心の底から入りたいと思ったのはA校だけだった。問題は成績だ。A校は有名な難関校だ。しかし、サピ雄の成績は、5年生の二学期に算数が難しくなってからというもの見る見るうちに下がっていき、6年の最初の頃には、A校なんて及びもつかないものにまでなってしまった。サピ雄の母は思いきってサピックスの算数のB先生に相談した。B先生の話では、サピ雄君はきちんと理解はしている。演習量が少し足りてないだけで、そのうち結果はついてくるから大丈夫です、解けない問題は質問教室で私が教えるから、どんどん来るように言って下さい、とアドバイスをくれた。サピ雄はB先生の指導もあり、算数の成績は徐々に回復し、これに伴って総合成績もゆっくりとだが上昇していった。そして、6年生の最後の学校別模試では、A校の合格可能性60%というところまで漕ぎ着けた。

 

今日の朝食は母が準備してくれた。母は3年生2月のサピックス入塾以降、スケジュール管理や送り迎え、プリント整理など、サピ雄が勉強に集中できるよう、ありとあらゆることをしてくれた。母に怒られることも多々あったが、それもサピ雄が今日という日を自信をもって迎えられるためにしてくれたものだと今では理解している。母は常にサピ雄の一番の理解者だった。5年生の冬、サピ雄が当時の成績も省みずに、A校をどうしても受験したいと言った時、周囲からは冗談だと思われた。真剣に受けとめてくれたのは母だけだった。B先生に相談してくれたのも母だし、色々な先生に話を聞き、受験に関する本を読んで、サピ雄がA校に入るためにどうすればいいかを一番考えて、実践してくれたのは母だった。サピ雄は、母の思いに応えるためにも、どうしてもA校に入りたかった。

 

朝食を食べ終えたサピ雄の父は、サピ雄に「普段通りの力を出せば大丈夫だ」と軽く声をかけて仕事に向かった。あえてそっけない感じにしてるんだ、もうそんな必要ないのに、とサピ雄は思う。サピ雄は、父は仕事ばかりでサピ雄の中学受験に無関心なのだとずっと思っていた。しかし、両親とも中学受験に入れ込んでしまうと、サピ雄の逃げ場がなくなってしまうことを心配して、あえて無関心を装っていたんだと、6年生の2学期になって初めて父に聞いた。A校の合格に向けてがんばっているサピ雄の様子を見て、もうサピ雄が中学受験から逃げたくなることはないだろうと確信して、サピ雄に自分の期待を伝える気になったらしい。サピ雄は自分に無関心だと思っていた父に認められた気がして嬉しかったし、それからは父の期待にも応えたいと思うようになった。

 

入学試験は母と一緒に行くことになっている。当然電車のルートは調べてあるし、二学期に気分転換を兼ねて母とサピ雄で下見に行った。集合時間まで十分すぎるほど時間の余裕を持って出発した。

 

ところが、途中の乗換駅で思わぬ事態が起こった。どうやら事故があり、乗換先の電車がストップしているらしい。慌てて母がスマホで他のルートを調べ、そちらに向かったが、通勤通学客が流れ込んできて非常に混雑している。そのせいで遅れもでているらしい。サピ雄と母は多少慌てたが、早く出たおかげでこのルートでも何とか集合時間には間に合いそうだとわかり、胸をなで下ろす。サピ雄は、混雑する電車の中で、気は焦りながらも社会のコアプラスに目を走らせる。

 

ようやくA校の最寄り駅についた。想像どおり受験生と保護者で大変な混雑だ。下見で歩いた時にはA校までは10分だった。その通学路に大勢の人々がむかっていく。A校に向かう歩道は狭く、二人が横に並んで歩くのがやっとだ。途中で信号もいくつかある。そこを大勢の受験生と保護者が歩いていくので、列はなかなか進まない。行列は無限に続いているように見える。周囲のいらいらが募っていく。もう集合時間まで10分だよ。遅れたらどうなるんだろう。いや他の受験生もまだこれだけいるんだから、試験開始時間を遅らせてくれるんじゃないか。でもそうでなかったらー。そんな周囲の親子の会話を耳にしつつ、サピ雄は緊張と焦りを強めていく。

 

隣には母が黙って歩いている。時間が差し迫っているからか、駅についてからは終始無言だ。顔も少しこわばっている。たぶん母も緊張しているのだろう。間に合うかな、と話しかけようと思ったが躊躇した。母はどんな状況でも「絶対大丈夫よ」としか言わないだろう。サピ雄がどんなに酷い成績を取っても、「絶対大丈夫よ」と言ってくれたことを思い出す。3年間ずっと自分を信じて応援してくれた母の期待に応えたい、という気持ちが強くなっていく。そして、その気持ちにつられ、サピ雄の緊張感も高まっていく。寒い冬の朝だが、手袋の中は汗ばんでいる。

 

行列は遅々として進まない。のろのろと数分歩いて行くと、狭い歩道の傍らに、明らかに周囲から浮いている親子が立っている。4年生か5年生くらいの少年とその父親のようだ。集合時間が差し迫りピリピリした様子で歩いている受験生達とは対照的に、緊張感のかけらもなく、にこにこと何事か話している。来年はお前もああなるんだぞ、とか、さすがA校の受験生、みんな優秀そうだな、とか、ぎりぎりにならないように朝早くでような、などという父親らしき人物の声が聞こえる。少年の方は父親の言葉に大して興味なさそうな様子で、朝食だろうか、コンビニの袋をぶらさげて、菓子パンをほおばっている。その親子は歩道の端に立っていて、どうやら一応受験生の列に配慮しているつもりのようだ。だが、この歩道は二人並んで歩くぐらいの幅しかない。その親子が行列の行く手をある程度遮っているようにサピ雄には見える。この親子がいるからこんなに進まないんじゃないか、これで集合時間に遅れたらどうしてくれるんだろう、とサピ雄は憤りを覚える。実際にはこの親子の行列のスピードへの影響は微々たるものだ。だが、サピ雄の気持ちの中で、今日という大事な日に邪魔をしにきた親子への怒りが大きくなっていく。

 

サピ雄は徐々にその親子が立っている場所に近づいていく。5メートルくらいまで近づいた時、ふと見ると、その少年はサピ雄の方を指さし、何事か父親に笑いながら耳打ちしている。サピ雄は最初自分が指さされているとは思わず、振り返ってみたが、やはり自分のことを指さしているとしか考えられない。親子のところを通り過ぎる時に、同じ校舎にいる子だろうか、とよく顔を見てみたが全く見覚えがない。サピ雄が横を通りすぎると、親子は、ああほんとだね、でしょ?などと話している。サピ雄は、自分に何かおかしいところがあるのだろうかと服や鞄の様子を見てみるが、上着もちゃんと着ているし、シャツが出ているわけでもない、鞄もちゃんと閉まっている。念のためズボンのチャックも確認したが、きちんと締めてある。第一そんなことがあれば、母が注意してくれるはずだ。ではなぜあの子は自分を指さして笑っていたのだろう。思い当たることはない。ひょっとして自分がA校なんて難関校にふさわしくないように見えたのだろうか。いやでもこんな自分でも最後の学校別で60%の判定が出ているんだ、などと思いながら、サピ雄はその少年が見せた含み笑いが気になって仕方がない。実はこの少年は、サピ雄の鞄が自分の持っている鞄と一緒だね、と父親に伝えていただけなのだが、サピ雄がそれを知る由もない。

 

ようやくA校の校門にたどり着く、時間ぎりぎりだ。A校の校門前は狭く、激励にやってきた多くの進学塾の講師達で混雑していて、サピ雄の好きな算数のB先生が見つからない。サピ雄はA校に入る前にB先生に一言話したかった。模試の前にB先生に会うと、冗談ともつかない口調でハッパをかけてくれた。サピ雄はそれで緊張感なく模試に臨め、好成績を取ったことを覚えていたのだ。サピックスでの最後の授業の日に、B先生はサピ雄にA校の試験には激励にいくからがんばれよ、と声をかけてくれた。B先生と最後に握手をして、いつものように冗談で笑わせて緊張をほぐして欲しかった。握手ができれば受かる気がしていた。しかし、非情にも、もうすぐ集合時間だから速やかに校舎に入るようアナウンスがある。

 

結局、サピ雄はB先生と握手できないまま、A校の校門をくぐらざるをえなかった。サピ雄は緊張と重圧にさいなまれる。ネガティブな気持ちが増幅していく。ああ、B先生と握手できなかった。もうだめだ。ものすごく緊張してきた。算数で苦手分野がたくさん出たらどうしよう。これもあの親子が行列の邪魔をしていて時間ギリギリになったからだ。そういえばあの時、あの少年は自分のことを笑っていた。結局何を笑っていたのだろう。やはり自分はA校っぽくないと思われたのだろうか。あの父親も同意していた。サピ雄の中にあった自信が揺らいでいく。そして、目の前の試験に集中できなくなっていく。

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結末までは書かないが、私の想像する受験日の見学の悪影響を書いてみた。私はここで菓子パンをほおばっている父子のようにはなりたくない。なので、入学試験日の見学には絶対に行かない。

 

受験生はまだ小学6年生なのである。生まれて初めての重圧にナーバスになる子もたくさんいるはずだ。そんな中、試験にできるだけ集中させてあげたいと思うのは私だけではないはずだ。しかし、今年の受験生の親ではない私達にできることはほとんどない。できることは、できるだけ静かに離れて見守ってあげることではないだろうか。

 

ちなみに同じような理由で、合格発表日に見に行くことも絶対にしない。これについてはまた別の記事で書くかもしれない。

 

書きました↓

 

非受験学年の合格発表の見学には反対 -あえて受験生視点で②-

 

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