豊島岡の「算数・英語資格入試」の導入についてーインパクトは見た目ほど大きくない | 2022中学受験(息子)と2027中学受験(姪) -A stitch in time saves nine-

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  豊島岡の「算数・英語資格入試」

 

昨日以下のような情報がXの中受界隈を駆け巡りました。

 

 

 

 

まだ入試日程などの詳細が明らかではないものの、現時点の情報でこの「算数・英語資格入試」を考察してみましょう。

 

  帰国入試・算数入試のバリエーションでは?

 

英語資格では差がつかない

 

この豊島岡の新型入試を捉えて、「すわ難関校でも英語入試が本格的に導入か!英語教育もがんばらないと!」とする向きもあるようですが、もう少し冷静に見るべきだと思います。

 

まず募集人員は現時点では若干名です。一般の4教科入試での募集人員の増減は現時点で明らかではありませんが、おそらく変更があってもごく少数でしょう。

 

そして英語の配点と評価方法も重要です。英語は300点満点中の100点であり、しかも英検級やCSEスコアで形式的に換算するもので、独自の英語入試問題を作成するものではありません。

 

またその点数も、準一級以上を100点として、一級との差を設けていません。二級でも90点で、一級・準一級と10点しか差がないのです。英検二級を取ることは、きちんと準備をすれば小学生でも難しいことではありません。どの時期の英検級が必要になるかはわかりませんが、いずれにせよ英検はCBTも含めて何回も受験できますので、英検二級取得のハードルは本気で取り組めばあまり高くないのです。帰国子女ではあればなおさらです。

 

つまり、英語能力を入試において評価するのは間違いないのですが、おそらくこの入試方式の志願者はほぼ二級以上、せいぜい準二級取得者以上になると考えられ、事実上英語では差がほとんどつかないことになると思います。

 

勝負は算数

 

そうなると、結局この入試方式での勝負は算数で決まることになります。ここで豊島岡の今年の第1回の入試結果を見てみましょう。

 

  第1回
平均点 受験者
平均
合格者
平均
国語
(100)
71.68 78.46 6.78
算数
(100)
43.41 54.70 11.29
社会
(50)
35.83 38.72 2.89
理科
(50)
35.53 41.56 6.03
合  計
(300)
186.45 213.44 26.99
算数寄与率   41.8%

 

算数寄与率は、合格者平均と受検者平均の差のうち、算数による差の割合です。つまり合格するための算数の重要性を測る指標になっています。

 

豊島岡は女子校の中でも算数の難度が高いです。そのため、どの中学でも概ね算数寄与率は高いのですが、豊島岡の算数寄与率は比較的高くなっています。ちなみに詳細な表は記載しませんが、今年の第2回入試の算数寄与率は50.6%、第3回入試の算数寄与率は43.9%となっています。

 

4教科入試の300点満点中の100点の算数ですら、その寄与率は40%を超えるのですから、英語でほぼ差がつかない「算数・英語資格入試」の勝負は算数で決まると言っても過言ではありません。おそらく算数寄与率は90%以上になるのではないでしょうか。

 

あくまで仮定ですが、上記のデータのうち理社を削除し、英語資格での差が上記の国語レベルとして、算数の配点を倍にした表を作ってみましょう。

 

平均点 受験者
平均
合格者
平均
英語
(100)
71.68 78.46 6.78
算数
(200)
86.82 109.40 22.58
合計
(300)
158.50 187.86 29.36
算数
寄与率
  76.9%

 

実際には英語資格では受験者平均と合格者平均の差はよりつかなくなると思いますので、算数寄与率はもっと高くなると思います。つまり、これは英検2級、あるいは準2級以上を取得した受験者による算数1科入試と言えるのではないでしょうか。

 

  豊島岡の狙いは?

 

豊島岡でこの入試方式を導入する意図はいかなるものでしょうか?

 

豊島岡にはいわゆる帰国子女入試というものはありません。しかし、「帰国子女の優遇措置」なるものがあります。これは帰国子女について、総得点に5点の加点措置があるということです。つまりもともと帰国子女を高く評価するという姿勢はあるわけです。

 

しかしながら、他の学校のようにいわゆる「帰国子女入試」を実施しないのは、英語だけではなく、一定水準以上の他の科目の基礎学力は必要だという考え方だったのでしょう。

 

今回、英語力を評価の枠組みに加えることで、正面から英語能力を有している枠を設けることとしています。「帰国子女入試」という形は取っていませんが、より英語のできる受験生を取りたいという意図は見えます。

 

他方で、上述のとおり英語を独自入試問題ではなく、英検資格を評価基準とし、しかも二級以上であればあまり差がつかないものとする一方、算数の配点を高くしたのは、英語しかできない受験生はとらない、という強い意図を感じます。

 

大学受験、特に国公立の受験においては、数学と英語ができることが非常に重要です。豊島岡としては、英語を評価する入試枠を設けながらも、算数能力を重視して、国公立の進学実績をさらに伸ばしたい、という意図があるのではないでしょうか。

 

  入試実施方法はどうなるか?一般入試の救済枠?

 

現段階の「一般入試と並行して実施・併願可」という情報からの推測としては、以下のような入試方式でしょうか。

 

志願者は通常どおり2月2日・3日・4日の一般入試を出願する際に、英検資格の証明書を提出して、「算数・英語資格枠」での併願する形をとります。そして、当日は一般入試を4科目受験します(一般枠を希望しない場合は算数のみ)。4科目で合格点に達すればそのまま合格、4科目の合格点に達しない場合でも、算数の点数を2倍にし、英語の換算点数を加えて、「算数・英語資格枠」単願者と並べた上で、上位から若干名に入れば合格させます。

 

つまり、一般入試枠から漏れてしまったが、英語がある程度できて算数が抜群にできる子を救済しよう、という枠と評価することもできそうです。

 

代わりに、今までの帰国子女優遇措置は廃止になるのでしょうね。

 

  受験生としてはどうするべきか?

 

現時点の情報では、もともと英語に力を入れていたり、帰国子女である場合を除き、この「算数・英語資格入試」を目指すために英語をがんばろう、というのは早計だと思います

 

まず第一に、この枠は若干名の募集です。そして、算数ができなければ合格できません。

 

個人的には、一般入試と並行して行う、ということですから、想定される合格者像は、算数だけは大得意だけど、他3教科はやや苦手で一般入試のボーダーには達しないが、帰国子女などで英語能力は結構あるという子、というイメージです。

 

もちろん、もともと英語を頑張っていて、英検2級を6年生までに取得できそう、というのであれば、保険として取得しておいてもよいでしょう。しかし、この豊島岡の入試方式のためだけに高学年になっても英語を頑張る、というのはやりすぎです。好きで英語の勉強をするならまだしも、他の難関校で英語入試が導入されていない以上、やはり高学年では4教科に注力するべきです。

 

確かに豊島岡という難関校で、英語資格を評価する枠ができたというのはエポックメイキングではありますが、上述のとおり実際には算数1科入試のバリエーション、一般入試の帰国子女救済枠のような色彩が強く、見た目ほどのインパクトはないように思います。

 

この流れが他の難関校にも波及すればまだしも、「すわ一大事」と帰国子女でもない高学年で英語に注力するのは慎重に、と思います。

 

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【レビュー】「中学受験国語 選択肢問題の徹底攻略」

5年生で取り組んだ問題集 理科・社会編

低学年時に使った問題集 算数編

5才頃からのパズル本

 

↓社会科を得意とする子向けに、さらに一歩先に行くためオススメの本の紹介です。

社会科でさらに一歩先行く資料集・読み物 歴史編

社会科でさらに一歩先行く資料集・読み物 公民編

 

↓以下は主に6年生向けのオススメ問題集に関する記事です。

英俊社『合格トレイン 理科計算問題』はオススメ

東京出版『図形の必勝手筋』はオススメ

東京出版『必ず解きたい算数の100問』

『記述問題の徹底攻略』シリーズの使い方

 

↓以下は幼少時のオススメ知育玩具などに関する記事です。

幼少時の知育玩具や教材(就学前①)

幼少時の知育玩具や教材(就学前②)

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