救急車のサイレンから始まる妄想 | 見えない世界の真実が此処に®

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霊能力を生業としている方や、一般の方、霊媒体質の方のためのブログです。

 

 

ドン・サイゲンは、日本に移住してき6年が経っていた。

ドンはブラジルで生まれ育ったが、ドンの祖母が日本人だった縁で娘のライラが先に日本に移住していた。

ドンからみても、祖母の妹の長男の長男の家というちょっと遠い親戚の家にドンの娘のライラは住み込み始めたのだ。昔の家で、つくりは5LLDK。納屋が別に建っていた。

そして、さらにその家にドンが移り住んだのが6年前だった。

 

きっかけは祖母の妹の長男の長男の長男が外資系商社に勤めており、身寄りがなく独身だった彼は、偶然にも、ブラジルに転勤する事になり家を入れ替えるような感じで、

ドンは日本に移り住む事になったのだった。ライラ家族が遠慮する事なく彼の家に入り込んでいて、肩身の狭い思いをしていたであろう彼はこの転勤を喜んでいた事だろう。ちなみに彼の両親は彼が成人した直後に、そして翌年には彼の祖父も交通事故で亡くなったそうで、お仏壇という奇妙な物体がある部屋を、ドンは生活のスペースにしていた。

畳の上にベッドを置き、お位牌の前に十字架を置き、チラデンテスの肖像画、キリストの肖像画を先祖の遺影の横に並べて飾った。生粋の我々日本人にとってみれば奇妙な感じだ。ブラジルにいた頃の自分の写真を般若心経の掛け軸の上に貼りまくり、昔から使われていただろう衣装ダンスには、イエローの生地に緑の字が入ったTシャツをかけ、それが並んでいた。

日本に来て驚いたのはあまりにも寒かった事だった。ライラに頼み込み黄色のトレーナーを買ってもらったが、どうみても日本人には見えない顔の堀りの深さ。いやそれ以上に、ドンが着ている服がどうみても外国人、ブラジル人だった。

 

東京都豊島区の銀婚通り。

このストリート沿いにある古い家。ライラの日本人の夫も含め、家族5人で暮しても十分に広い家だった。

来日した当初、ドンは道に迷い続けた。

ブラジルから出てきたドンにとっては日本の道は、どれも同じ道にしか見えなかったのだ。

 

道に迷ったらストリートを聞きなさい!と、ライラは教えた。

 

GINKON TOORI

コンコン通り

 

そう書かれた段ボール紙をいつも持ち歩かされた。

 

池袋駅近くの幼稚園まで上の孫娘・ジュリア(樹莉亜)を迎えに行って!と頼まれる度に、道に迷った。

 

GINKONTORI DOKODESUKA ?

 

ギンコントオリ ドコデスカ ?

 

そして、例の段ボール紙を見せると、ほとんどの人が首をふった。知らないのだろう。

だが、知っているという人もいた。そして、決まって言われるのが、

ネクスト、ネクスト、ステーション

それでもドンとジュリアにはピンとこない。

何度かすごく優しい日本人に案内された事もあった。

そして、東長崎駅まで連れてきてくれて「ここだよ!」と言われて、笑顔で手を振ってくれたこともあった。

ジュリアとドンは人さらいにでもあったかのような顔で見つめ合った。

が、ジュリアにはドンの変な日本語とポルトガル語は通じない。

もちろん、ドンにはジュリアの日本語はわからなかった。

日が暮れて、娘ライラの仕事が終わるまで東長崎駅の近くで立ち尽くしていると、ジュリアは泣き疲れてドンの腕の中で眠った。

 

もう!迷ったら、タクシーに乗って!

と、ライラに言われた。

また迷ってしまった時には、例の段ボール紙をタクシーの運転手に見せると

「あ、イエス!アイノー!ドゥーユーライク フジコフジオ!?」

そう言われたが、意味がわからない。

ドンは、曖昧に、

Yes.I like…と答えてしまう。

観光客に間違われた。

黄色のTシャツでどうみても外国人。

確かに観光客にしかみえない。

連れて行かれたのは、藤子不二雄さんで有名なときわ通りだった。

 

とにかく孫娘のお迎えほど恐ろしいイベントは無かった。

 

娘のライラは、日本語を不自由なく話せ、幸運にも永住権を得ていた。

日本人の夫は楽天家のライラを補う懐の太さを持っていた。決して豊かではないかもしれないが、幸せな日々を送っていた。

 

 

それから6年後。ドンは日本に慣れ、持ち前の几帳面さで日本語を理解し少し話していた。もう池袋駅にも近隣の駅にも迷わずに行ける。家までの路線ではないが、東長崎の駅近隣から家までも迷うことなく帰れるようになった。

そして最近は、2番目の孫娘、2歳半になる孫のサイラ(彩羅)と、よく散歩をする。

 

Vem cá(ヴェムカ) サイラ!

こっちにおいで、サイラ!

 

サイラはドンと繋いでいた手を振りほどき、小走りでかけていく。

ドンは、慌ててポルトガル語と上手くなった日本語で叫んだ。

 

サイラはドンを振り返る事もなく小走りで進んでいく。

ドンはサイラを小走りで追いかける。

そんな毎日だった。

 

その日もサイラは笑顔でドンの手を振り払い、走り出した。

いつもの事ではあったが、今朝、奇妙な事があった事を思い出した。

仏壇の位牌の前にたてかけていた十字架が倒れたのだ。

ただ、倒れただけならばそこまで気にしなかったかもしれないが、なぜかカラランコロロンと音を出して倒れた。

 

遠くから救急車の音が聞こえてくる。

Oh!Julia!

はっと気づきジュリアを追いかけながら叫んだ。

 

ドンの頭の中に変な妄想が浮かんだ。

このまま車に轢かれてジュリアが死んでしまったら・・・。

数秒、時が止まった気がした。

ジュリアはさらに先まで小走りでかけていく。

 

ヴェムカ! サイラ!

 

ドンは急いで走ったが・・・急に目の前が真っ白になっていった。

胸が苦しい。

足がもつれ、体の力が抜けていくのがわかった。

スローモーションで目の前にアスファルトが迫ってくる。

 

ドンッ!

激しく顔面をぶつけた。

 

『危ない。車に気をつけろ。』

ドン・サイゲンの最後の記憶となった。

 

 

ライラ。大丈夫か。

激しく肩を震わせて泣くライラの肩を夫は優しく抱き、慰めた。

「心臓発作だったらしい。こんなに急に死ぬなんてな。」

病院の長い廊下の端っこ、サイラは目を真っ赤にさせながら、幼いライラと遊んでいた。

 

ドン・サイゲン 享年56歳

 

 

 

危ない。車に気をつけろ。

ドン・サイゲンの最後の記憶だ。

 

危ない。車に気をつけろ。

ドン・サイゲンの祖母の妹の長男の長男夫婦の最後の記憶。

 

危ない。車だ。

ドン・サイゲンの祖母の妹の長男の長男の最後の記憶。

 

人は死ぬと、霊体と記憶の存在となる。

霊媒体質の人は、その記憶の存在の影響を受けやすい。

 

 

 

ドンッ!が再現されない事を祈るばかりだが、霊媒体質の方にとってはなかなか難しい。

 

ライラ家族の誰かは、心配性になっていくだろう。

ライラ家族の誰かは、同じような亡くなり方をするかもしれない。

そして、これらの現象は人間が作り上げた作法や形式では解決できない。

 

 

シックスセンス管理人

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