こんばんは (*´∀`*)
今回は…い、石は投げないでください .・゚・(ノд`)゚・.




15



 相手を睨むように前を向き、キ・チョルの前に立ちはだかったウンスだったが、キ・チョルに腕を掴まれ、ぐいと引き寄せられるとチェ・ヨンのところに投げられてしまった。

「ちょっと!なにするのよ!」
「私を守ろうなどと…笑止」
「キ・チョル?」
「医仙。そこでじっとしていてください。すぐに片付けます」
「でもあなた!」

 キ・チョルは、それ以上は言うなという視線でウンスを黙らせ、手を前に着き出して内攻を捻り出す。
 バリバリとすさまじい音が鳴り響き、近寄って来ていた兵士達の動きが止まった。凍って動かなくなる兵士に、キ・チョルが「うぬぅっ」と叫んで手を振りかざすと、爆風が吹いて後ろへと吹き飛んでいく。

 ————すごい…

 大方の兵士をそれで片付けたキ・チョルは、目を閉じて強く剣を握りしめた。集中するように深く息を吐き出す。瞳を開くと同時に、一気に駆け出してあっというまに敵陣に入り込むと、内攻と剣術で次々と倒していく。

「危ない!」
「承知!」

 遠くから弓兵がキ・チョルを狙っているのが見えてウンスは叫んだ。だが、キ・チョルは既に分かっていたようで、放たれた矢をパキパキと凍らせて粉砕した。

 そんなキ・チョルの戦いを目の当たりにして驚いていたウンスに、一人の兵士が近寄る。

「きゃあ!」
「医仙!」

 ぐいと髪を掴まれて、剣が振りかざされた。

 ————切られる!

 ヨンを抱きしめ、目をぎゅうっと瞑ったウンスだったが、いつまでたってもその衝撃は襲って来ない。恐る恐る目を開けると、キ・チョルが立ちはだかっていて————

「キ・チョル!」

 その腹には剣が深く突き刺さっていた。

「ぬぅっ!」

 そのままキ・チョルは相手の首をがしりと掴むと、喉を凍らせて息の根を止める。近寄ってきていた兵士達に凍らせた兵士を投げつけて、刺された剣を引き抜くと同時にその剣で突き刺した。

 それが最後の兵士だった。辺りには多くの兵士が転がっており、酷い惨状だ。

「キ・チョル!」

 どさりと腰をおろしたキ・チョルの身体をウンスは抱えて、名を呼ぶ。
 裂かれた腹からは多量の血が流れ出ている。

「しっかりして!待って!今治療を…」
「い…せん」
「黙って!しゃべっては駄目!」
「もう…よいのです…医仙」
「よくないわよ!」

 キ・チョルはウンスの顔を見て、口を開く。
 あの時、ウンスが切られそうになった瞬間、なにも考えられなかった。気がつくと、ウンスの前に飛び出していた。

 身体が寒くて、視界が霞む。それでも…
 ウンスは目の前で人が死ぬのが嫌だと、自分の事を心配だと言った。だから…

 ————言わなければ

「よく、きいて…ください。いい、ですか。これは私が…好きでやったこと」
「え?」
「あなたの…ためでは…ない」
「キ・チョル!」

 ウンスの瞳から涙がぽたりとキ・チョルの頬に落ちた。

 泣くな…と手を伸ばしたいのに、凍った身体ではもう手さえ動かない。

「どうせ…わたしの命…は、もう、長くなかった。腹を刺されず…とも、内攻を、使った時点で、死は…覚悟して、おりました」
「どうして!?」
「どうして、で、しょうか」

 霞む瞳で、キ・チョルはウンスを見つめた。

 ————あなたを守りたいと

 ありがとう…と、少し怒ったように自分を見るその瞳を、失いたくないと。

 強く思った。

 そうして、今、ウンスはこうして自分の死を前に涙を流している。

「泣かず、とも…よい…、顔を…」
「え?」

     ————「ありがとう」————

「医仙の…真っすぐに、私を見る…瞳に」
「ねえ、よく聞こえないわ!」

     ————「恐ろしくはありませんか?」 「何故?別に?」————

「胸の…飢餓……感が」
「キ・チョル!」

     ————「もしや、医仙は私のご心配を?」 「そりゃ、するわよ」————


「医仙といると……薄れて…」


 身体が、凍っていく。それなのに何も感じない。


 もう、痛みさえも。

 
 ただただウンスの温もりだけが


 ————暖かい


「待って、駄目よ。お願い」


 ————こうして逝くのも


 最後に見た顔は泣き顔だったが————。


 ————悪くない。


 ここに来て、ウンスの色んな表情を見る事が出来た。
 思い出すと、胸に暖かい光が灯される。
 

 ————目を覚ませ。医仙を…


 飢餓感はもう感じなかった。


 ————守れ、チェ・ヨン。


 
 ぽたりと頬に落ちるウンスの暖かい涙を感じたまま



 キ・チョルは息を————引き取った。










Anne's fiction ~信義の創作部屋~

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