おはようございます (*´∀`*)
コメ返し小話を纏めて♪という大変嬉しいお声をいただきましたので、まずはウダルチ編でのコメ返しに加筆してUPです♪
予想以上に長くなりました(笑)





夢魔の恋 おまけ~ウダルチ編コメ返し~



「おい、どうした?なにがあったんだ?」
「いや、こいつらさっきから固まってんだよ」
「お。トルベ…お前顔おかしいぞ?」
「おーい、トルベ?」
「だめだな。完全に固まってる」


 そんな会話がされていた後日のこと。

 
 トルベ達を見かけたウンスが微笑みながら駆け寄って来た。
 その姿に、いけないと思っていながらもドキリとして…
 つい辺りをキョロキョロして鬼、もとい我らが隊長がいないのを確認してしまうのは、もはや仕方のない事だろう。

「あ!トルベ…さん、それに皆も」
「ウンス殿!」
「先日はごめんなさい。あの後チェ・ヨンに言われたわ」
「言われた…とは?」

 しょんぼりと項垂れ、長い髪がさらりと落ちてウンスの顔を隠す。あの後、隊長に酷く叱られなかっただろうかという心配が、的中してしまったようだ。そう思ってウンスを慰めようとしたのだが…

「頬への口付けは、こっちでは感謝の気持ちを表すのではないんでしょう?」

 ————か、感謝?

 耳を疑ったのはトルベだけではない。だが、気が遠くなったのはトルベだけだ。あの後の葛藤は一体何だったのか。

 隊長の想い人がまさか自分に想いを寄せて…?ああ、高麗のカサノバである自分はなんと罪深いのだろうか。どんなに想い合ったとしても、隊長の想い人を奪う事など俺にはできぬ。なんという悲恋…

 そんな事を思っていた自分を殴ってやりたい。

「か…感謝?頬への口付けが?」
「ええ、私の故郷ではそうだったらから」
「なるほど…それで」
「だから、あの時はごめんなさいね。トルベ…さん」
「いえ…それよりも、私のことは呼び捨てでかまいません」
「そう?」
「はい。呼びにくそうでいらっしゃるゆえ、ご無理なさらず」

 名前を呼ばれてはっとトルベはウンスに向かい、とっさにウンスを気遣ってみせた。
 動揺など微塵も表に出ていない所は確かに高麗のカサノバだな。そう思いながら周りがそっとトルベに生温い視線を送ったことは言うまでもない。

「ウンス様、その…感謝を口付けでというのは聞いた事がありませぬが、ご出身はどちらで?」

 そんなトルベとウンスに割って入って声をかけたのはチュンソクだった。じっとチュンソクを見つめたウンスはしばし考えてた後に「ああ!」と言って嬉しそうに名を呼ぶ。

「あなた副隊長さんよね?あってる?名前はチュンソク!」
「え、ええ。合っております」

 自分の名を覚えられていたことに少し驚いたのか、目を丸くしたチュンソクにウンスは微笑むと「皆の名前も、結構覚えているのよ?」とその場にいる者の名を思い出しながら言っていく。名が正解する度に、満面の笑顔を見せるのだから隊員達がドギマギしてしまっている。

 ————しっかりしろ!俺!隊長だ!隊長の女人なのだ!惑わされるな!ウンス殿の顔を隊長の顔に置き換えるんだ!

 そう思っていた者が何人いたのかは分からないが、一度しっかり惑わされてしまったトルベが「ほら見ろ」とでも言いたそうな顔をして笑う。

 自分の顔を見ながら、近衛兵達が必死にヨンを思い出しているとはつゆ知らず、ウンスは素直に質問へ答えようと頭をひねる。

「出身は…うーん、なんと言ったらいいのか。すごく遠い所よ」
「高麗ではないので?」
「ええ」
「近隣国ですか?」
「近隣と言えば近隣になるのかしら…」
「それとも海を渡ってこられたので?」
「それも違うわね」
「では一体?」
「えーと…秘密!ってことにしておいて」

 曖昧に笑って誤摩化すが、聞いている側としてはやはり気になるというものだ。
 何と言っても、感謝を表すのが口付けというのなら他にはどんなものがあるのか。それが気にならない程皆若くないわけではない。

 ————そんな!どこなんです?!そんな男に取って夢のようなところは!

 だが、次の瞬間、答えを聞き出そうと乗り出していた身が、後ろからの声にピタリと止まった。
 
「ウンス?一体なにを?」
「あ!チェ・ヨン!」

 慌てたのは近衛隊だ。何もやましい事はしていない。してないのに何故か焦ってしまうのは、ウンスの魅力に多少なりともドキリとしてしまった自分自身のやましさの所為だ。
 自分達は聞かれてもいないのに、何をしていたのかを口早に弁明してしまう。

「隊長!」
「ウンス殿のご出身を尋ねていたのですが…」
「そう。だから秘密って言ってたんだけど」
「秘密と言われると余計に気になります」
「お礼の習慣やご衣装など高麗では珍しくいらっしゃるので…」
「それは…」
「隊長はご存知なのですか?」
「……知っておる」
「チェ・ヨン!?」

 隊長ならば知らない筈がないのだ。「知っている」との答えに「やはり!」と歓声が上がり、何故か焦った様子のウンスを見ないふりして問いつめる。知っているのなら是非教えてほしい。

「ではどこなのです?」

 期待に満ちた瞳で見つめられたヨンは一つため息をついた。

「天だ」
「は?」
「ウンスは私が天から連れ去ってきた」

 ————天?これは冗談か?笑う所か?
 ————いや、違う。あれは冗談を言っている顔ではない
 ————だが…しかし

「ほらウンス、もう行きますよ」
「はーい。じゃ、またね」

 声も出ていないというのに何故か意思疎通が出来て唖然としている近衛隊を、ヨンはちらりと一瞥すると何事も無かったかのようにウンスの手を取り背を向けた。手をほんのり振りながら去って行くウンスに呆然としながらも同じく手を振りながら見送っていたのだが、姿が見えなくなった所で一人がポツリと呟いた。

「天…天だと?」
「じ…冗談だよな?」
「いや、でも隊長なら…」
「馬鹿言え!どうやって天に行くというのだ」

 そうだ。いくら隊長と言えど…天など。だが、隊長なら完全に否定出来ないかもしれぬとどこかで思ってしまう自分がいるのだ。

「だが、そうであればウンス殿が突如現れたのも説明がつく」
「ご出身を聞かれて困るのも納得が…」
「まさか…」


 こうして、チェ・ヨンの噂は一気に広まる事になる。それは尾ひれをつけて————


「おい、聞いたか?チェ・ヨン隊長の話!」
「なんでも天女を我がものにするべくその足で天界へ行ったらしいぞ」
「天をも恐れぬとは…まさに鬼神であられる」
「そしてウンス殿は天界の姫君だとか…」
「天界一の美貌をもっていらしゃったと…」
「道理で…」




***


 

「ねえ聞いた?チェ・ヨン、あの噂!」
「なんです?」
「私ったら、天界の姫君だったらしいわよ」

 うふふとウンスはヨンに笑った。なんと言っても元悪魔である自分が天女で、しかも…

「しかも天界一の美貌ですって!」

 これだ。嬉しくない訳が無い。

「なんの話です?」
「あなたが天から攫ったーなんて言うから、皆信じてるのよ」

 ————チェ・ヨンを鬼神て言っているのは黙っててあげるわ

 きっと慌てるであろう近衛隊員たちを思ってくすくすと笑う。

「ふふっ、おっかしい。天なんて本当に真逆よね」
「まぁ、まさか悪魔だったとは思いますまい」
「ま、そうよねー。人からは見えないんだし」

 ヨンが言ったのはそういうことではない。
 ウンスは見るからに悪魔という印象からかけ離れているのだ。それは外見というよりも、むしろ内面で。

「いえ、そうではなく…」
「なに?」
「悪魔とは、皆そうなのですか?」
「そうって?」
「明るく、こちらが思うのとはずいぶん…」
「人と同じで色々いるけど、私は夢魔としては落ちこぼれだったみたい」
「落ちこぼれ…とは?」
「夢魔ってきいたことある?その…夢の中で……」

 落ちこぼれと言う割にはあっけらかんとしているウンスに、その意味を問うたのだが返ってきた答えは思いもしなかったものだった。
 夢魔とは夢で異性との快楽を。そんな話はどこかで耳にしたことのあるものだが、ウンスが所謂そういった経験が無かった事など……ヨンが一番良く知っているのだ。

「ええ。ですがウンスは…」
「そう。あれが本来の夢魔なんだけど。私はなんか嫌で、そういうことしてこなかったから」
「あなたが……落ちこぼれでよかった」
「え?」
「たとえ夢でも、他の者があなたに触れる事など許せませぬ」

 ウンスはふふっと笑うと顔を赤らめた。

「だから、今では良かった思ってるわ。あなたが初めてになったから」
「ウンス…」

 緩む頬をそのままに、クスクスと笑うウンスの手をとるとそっと引き寄せる。
 そっと包み込むと、ウンスはすりっと顔を胸にすり寄せて広い背中に手をまわして————。

「それでも私は元夢魔なんだから、人をたらし込むのよ。これからもずっと…あなたをね」

 そう言って悪戯っぽく微笑む顔に、ヨンは口付けを落とした。


 ————たらし込むなど…私は十分、ウンスに参っております


「もう、これ以上ないほどに」

 

 終♪




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