夢魔の恋 おまけ~その後の二人編コメ返し~




 散々ヨンに愛され気を失ってしまうかのように寝てしまったウンスが目を覚ますと、その気配に気づいたのだろう。ヨンも目を覚ますと、ウンスを引き寄せて優しく笑った。
 気恥ずかしくて、ヨンの胸元に顔を隠すようにすると、ヨンが頭を撫でた。

 甘いピロートークが…かと思いきや、そこはウンスだ。はたと昼間のことを思い出して顔を上げる。

「ねぇヨン」
「なんです?」
「明日も近衛隊に行っていい?また皆と話したいわ」

 そう言われては駄目という事も出来ずに、渋々了承したヨンだったがもちろん注意は忘れない。
 ウンスはヨンから「人の女人として」の指導を受けることになってしまった。

「よいですかウンス。女人がむやみに露出してはなりませぬ」
「はーい」
「それに、頬に口付けもなりませぬ」
「…はーい」

 そう言ったヨンにウンスはため息をついた。
 聞けばずいぶんと人間とは面倒なようで、肌を出すことや、口付けや抱擁等もってのほかとのことだ。人となった今、やはり夢魔のままで振る舞う事はできないらしい。

「色々と習慣が違い大変かとは思いますが…」
「そこよ!どう習慣が違うのかが分からないのよ。教えてくれたらちゃんとするわ」
「ではしばらく、普段通りにしてください。違いがあったらその都度言います」

 トルベの頬に口付けをして、ウンスはあれだけ怖い思いをしたのだ。悪魔より恐い人だなんて聞いた事が無い。

「人間って難しいわ」
「なにがです?」
「お礼の口付けも、嬉しいときの口付けも駄目のでしょう?」

 ただ、あの怖さが嫉妬から来たモノだと思うとついつい頬が緩んでしまう。あたりまえだという表情のヨンにクスリと笑ってしまった。

「感情を表す際に、他にどういったものがあるのです?」
「えー?別に普通よ」
「普通でないから困っておるのです」
「他には…そうね。抱きつくとか?」
「それもなりませぬ」
「えーーーー?!」

 ————抱きつくのも駄目なの?!

 ウンスは抱きつくのが好きだ。夢の中でも、この恋心を自覚していた訳ではなかったが、嬉しい事があるたびにヨンに抱きつきたくてウズウズしていた。こうやってが想いが通じたのだから、今後は抱きつき放題だと喜んでいた矢先に、駄目と言われては…あんまりではないかと頭を垂れる。だが…

「夢魔通りに振る舞うのは、私の前だけに」

 その言葉にばっとウンスは顔を顔を上げてヨンの顔を見つめた。

「チェ・ヨンならいいの?」
「ええ」
「口付けしても?」
「はい」
「抱きついても」
「ええ」
「嬉しい!」
「ウンス、こちらへ」
「ん!」

 ぱぁっと顔を明るくして喜んでいると、ヨンが腕を広げてウンスを呼び、ウンスも迷わずその腕の中に飛び込む。

 ————やっぱり落ち着く…

 ヨンの腕の中は安心するのだ。ついついぼんやりとしてしまう程で、ふふふとウンスはヨンの胸に顔をすり寄せた。

「抱きつくのはかまいませんが…」
「え?きゃぁ!」

 あっという間に押し倒されて、顔が赤くなる。寝台の中で何をするのか、嫌という程思い知らされたばかりだ。

「その後の覚悟もした上でされますよう」
「か、覚悟?」
「はい」
「こうなる覚悟を」
「ん!…んぅ…ふぅ」
「……よいですね?」
「あんまりよくないけど…」

 さっきだって身体がきつくてもう駄目と何度となく思った。それなのに、ヨンに触れられると何も考えられなくなってしまった。否、考えられないだけではない。
 身体をなでる力強くて優しい手。自分を見つめる瞳に…

「お嫌ですか?」
「そうじゃなくて…その。もっとしてって思っちゃうから…」

 もう駄目と口では言いながらも、やめないでと思っていた自分もいたのだ。

「ウンス…そのように煽られると…」
「あ!ん、ん…ん……?」
「これ以上は本当に止められなくなります。ウンスの身体が持ちませぬ故…」

 ————やめなくてもいいのに
 
 今も少しだけそう思った事は秘密にしておいた。ヨンが自分を大切にしてくれていることが伝わってきて、心が暖かくなる。
 
「じゃぁ、このままこうして寝て良い?」
「…はい」
「ふふ、おやすみなさい」

 そっとヨンの手を握るとすり寄ったままの体勢で、ヨンに足を絡めて暖をとる。
 暖かい腕に包まれて、幸せそうに笑みを浮かべてウンスは眠りについた。






「隊長はどうされた?」
「いえ…こちらに来てからずっとああして」
「寝たままか?」
「寝たままです」
「あのようお疲れの隊長は見た事が…」
「一体夜になにを…?」
「そりゃ、おまえ…」


 起きる気配のない隊長に、また新しい噂話が増える事を…

 二人は知らない方がいいだろう。






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