おはようございます。
本日は中編でございます。
こちらも前編に引き続きシリアスモードですが、週末には何か明るい短編を書きたいなぁと思っております笑
それでは、どうぞ!
ねえヨン、最後に一緒にいられて嬉しかった。
もう、このままでもいいかなって思った。
忘れてしまえばいいって、思ったわ。
でも、やっぱり、ずっと考えてしまうの
もしも、何も考えずに王の言う事に従ってたら?
もしも——————私があの場にいなければ…って
そしたら、あれは起きなかったかもしれない
それは仮定でしかないけれど
でも皆…ヨン、貴方でさえ——————
あの時もしも…とやり場のない後悔を抱えているのも分かってしまうのよ
誰も私を責めていないのは分かってる
それでも、私は私を許せない
自分を許せないままでも、生きていける強さが欲しかった。
貴方と一緒に、乗り越える強さが欲しかった。
こんなに弱い自分、知りたくなかった。
————————————嗚呼、師父…
貴方の声が聞こえる——————許さないと。そう言うのね…
師父、ヨン——————本当にごめんなさい。
愛する人(中編)
数日をかけ、メヒは少しずつ回復し自分で動けるようになった。
「ヨンったら心配しすぎよ」
「まだふらついているだろう」
「もう大丈夫よ」
そんな会話を笑顔でするメヒに、ヨンは安心していた。
ただ————師父の名が、その下鍛えられた懐かしい過去の日々が、互いの口から出ることは、一度たりともなかった。
***
「では隊の集まりに行ってくる。大人しくしとけよ」
「分かってるわ。少しくらい動いても大丈夫よ」
心配げに見てくるヨンに笑って見せると「そうだな」と行ってポンと頭を撫でた。
「…ねぇヨン」
「ん?」
「やっと、ここまで動けるようになった。本当にありがとう」
「ああ」
————やっと。逝ける
「行ってらっしゃい、気をつけて。怪我しないでね」
「ただの話し合いだ。心配するな」
「そうよね…ねえヨン」
「ん?」
「————ううん。何でもない。それよりあの話…きっと皆も納得するわ」
「ああ、そうだといいが」
「大丈夫。貴方は————強いから」
ふっとヨンは笑うと「行ってくる」と行って部屋を出て行った。
パタンとドアが閉まる。
ヨンが出て行った扉を見つめ、力なく囁いた。
「行ってらっしゃい————元気で」
目に溜まった涙を落とし、きゅっと瞳を閉じて
どのくらいの時間そうしていただろうか。
長いような、あっという間の時間だった気もする。
ゆっくりと瞳を開けると、メヒは立ち上がった。
***
「メヒは回復しているそうだな」
「ああ」
「そうか、良かったな。それで、決めたのか」
今後の赤月隊を————とは言わなくとも分かった。今日はそれを伝えるために集まったのだ。
ヨンは赤月隊の隊員を、昔より随分と少なくなってしまった全員を見回し、続けた。
「赤月隊は師父の思いを継ぎ、このまま王に仕える事に決めた。だがあの王に使える意義を————俺は見出せぬ。だから、高麗への思い、高麗への忠臣を赤月隊の誇とし、これからも王に仕え、そして————」
————殺し、殺され、全ては高麗のためにと。だが、それで得たものは何だったのか。
ヨンは一人一人の顔を見て、息を吐いた。
「皆、己で決めてほしい。隊を抜けるか否か。赤月隊は、俺が死ぬか…最後の一人になった時点で、俺の代で————終わらせる」
————もはや隊に残ることが意味するのは、死しかないことを誰もが理解していた。隊を去るか、赤月隊として逝くか、選択肢はそれしか残されていなかった。
「ヨン、その後お前はどうする?」
「さぁな。まぁ、漁師にでもなるさ。生きていたらな」
そんな事は遠い夢だと、分かっている。
「ふっ、それはまた…お前ならそのうち伝説の人魚でも釣りそうだ」
「不老不死のか?死んでも御免だ」
「だが金にはなる」
決して明るくない未来を少しでも忘れようと、ふざけた話でもしなければやっていられなかった。
続