こんばんは♪
連載更新前ですが、急にSSが書きたくなりまして。
ウンスと離れている間のヨンのSSです。
それでは、どうぞ( ˘ω˘ )
今日はどれだけ切っただろうか
後悔などしてはいない
どれだけ人を切ったとしても
どれだけ血に染まろうと
あなたに再び逢うためならば
ただ、こんな日はどうしても
イムジャ、あなたと————————
覚悟
己の剣を鞘に収め、ヨンははっと短く息をはいた。周囲の刺客の気配はもうなく、張り詰めてた神経を解くとどっと疲れが押し寄せて来る。
どさりと腰を下ろし、壁に背を預けて呼吸を落ち着けようと深く息を吸った。
何人切っただろうか。向けられた刺客を全て斬り伏せる頃には、もはや数など数えていられなかった。どろりとした血が手を染めている気がして嫌な汗が流れる。振り切るようにヨンは頭を振った。
殺し、殺され、これが自分たちの常識であり、切る者と切られる者、どちらかしかないのだ。だからこそ、相手だっていつどうなろうとも覚悟は出来ていたはずだ。ずっと、ヨンもそう思っていた。
それなのに—————自分は知ってしまったのだ。死にたくないと思う心を。
愛しい人を置いて逝きたくない。
己の手でずっと守って生きたい。
ウンスが帰ってくるまでは、何があっても—————死ぬわけにはいかない。
自分が切った者にも、そう思う相手がいたかもしれないと思うと、じとりと泥のような何かが体にまとわりつく。だが、自分とて負けるわけにはいかないのだ。だからこそ切った者の屍を、その山がどんなに重かろうと背負い続けて生きて行く。
それでも、こんな血に染まった日は—————
暗い影が差した瞳をぐっと閉じて、ウンスの声を、表情を、記憶を辿る。
—————貴方の側は、安心する
—————花のいい香りが血のにおいを和らげてくれるわ
—————いつだって鮮明にある記憶。
思い出すだけでふわり…と風が吹き、ヨンの手から血を拭っていく。ウンスへの想いが、記憶が、自分を支えている。
だからこそ、どうしてもこんな日は——————————逢いたい
そう、心が叫ぶ。
ウンスに逢って、その輝く瞳に自分を映して欲しい。
その甘やかな髪に触れ、腕に閉じ込めたい。
それが出来るのならば、決して屍の山などウンスに見せはしない。
どんなに重くとも、この身一つで背負ってみせる。
だが…とヨンはウンスを思い出してふっと笑った。きっとウンスは自分がどんなに隠そうともどうにかして見つけるのだ。そうして「私も持つわよ!こう見えて意外と力持ちなんだからね」などと言って譲らないだろう。
今もそう、ウンスは戦っている。時と言う名の空間の狭間で—————
それならば
「俺が、弱音を吐くわけにはいかぬな」
願わくば、一人ウンスの歩く道が少しでも平穏なものであるよう———
強くて弱い彼女が、すぐ泣くくせに泣くまいとする彼女が、一人で涙を流すことがないよう————
泣く時は、自分の腕の中で。
それが叶うのならば
例え鬼でも、その名を刻む己の剣で斬り伏せてみせる。
地獄の道でも修羅の道でも、この身一つで喜んで行こう。
その覚悟ならば—————とうにできている。
閉じた瞳をゆっくりと開けると、その瞳にすでに影はなく…
強い意志を秘めた瞳がしかと前を見据えた。
横に置いた鬼剣をしっかりと握ると、
ヨンはゆっくりと立ち上がった。
終
お願いだから、無事でいて————