こんにちは。やっと週末ですねー🎶

 

さてさて長いことお待たせ(?)しております、雪の降る夜の更新です!

パラレルになりますので、それでも良いよという方はどうぞ♬

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!仕事中に笑わせないでって言ったでしょ!?」

「されど、ウンス殿も納得されたでしょう」

「なによ、自分は悪くないって?」

 

 ヨンが家に来てから一週間、その間毎日仕事についてくるヨンにウンスは頭を悩ませていた。いや、ついてくる事自体は別段構わない。診察の合間に目を大きくとはどういうことか、鼻を高くとは?と、一つ一つの疑問に答えるのにももう慣れた。問題は……

 

 チェ・ヨンはウンスの診察中は基本黙っていてくれるのだが、たまに…そう、本当にたまに思わずといった風情で声を漏らすことがある。彼だって人間だ。ずっと黙っているのは難しいのだからそれはいいのだが、如何せんその内容が悪い。

 

 今日だって、派手な格好をした女性が…緑と赤のまだら模様が何とも言えない洋服だったのだが、診察室に入って来た時には———「森の奥深くにいる毒蛙に似ております」

 

 少々変わった、個性的というか芸術的というか…そんな化粧をした人には———「舞台での妖怪役でもするのですか?」

 

 そんなちょっとした感想を、わざわざウンスに言ってくれる。その度にウンスが吹き出すのだから、患者からは変な目で見られてしまうのだ。まさに言い得て妙。毒蛙なんてしばらく頭から離れなくって診察中笑いを堪えるのに必死だった。

 

 —————もう…。全く。

 

 ジロリとヨンを見たウンスは、はぁとため息をついた。それでも、そんなヨンといるのが嫌ではない自分もいる。彼といると正直楽しくて、そんなことを思うのは「危険」だとも分かっている。ただでさえヨンは幽霊で、彼はそのうち居なくなるのに————まだ、このままでいたいだなんて。

 

 彼がいるとよく眠れるのだ。それに、どんなに仕事で精神的に疲れようとも、前みたいに心が蝕まれていくような…そんな感覚に陥ることが無くなった。

 なんだかすっかりヨンに馴染んでしまった自分を振り返って、ブンブンと頭を振る。

 

 —————ダメよ、ウンス。彼は高麗の武士よ!

 

 そう。高麗の武士なのだ。

 高麗だなんてありえないと思っていたウンスだったが、この数日ヨンと一緒にいて少なくとも現代の人間ではないのだということを信じざるをえなかった。車やバイク、高層ビルや飛行機を見ては驚いている様子や、整形について全く知らないヨンの表情は到底演技とは思えなかったし、それに……ウンスはもう一度チェ・ヨンを見て息を吐いた。

 

 それにヨンの高麗の話は作り話や、まして台本だとも思えなかった。というのも、初日(彼が付いて来た日は覚えていないが)に夜中に二人で話をしてからというもの、寝る前はそれが毎日続いていて。

「あまり話すような事はありませぬが…」そう言いながらも少しずつ話してくれる彼の世界は戦いや近衛隊のことばかりなのに、妙に現実味があるのだ。とはいっても、ヨンの低く静かに届く声に、ついいつの間にか寝てしまっているのだが。

 

 —————でも…

 

 彼が本当に高麗の武士だったとしても、チェ・ヨンは史実上こんなに若くして死なない。性のチェも名のヨンにしても然程珍しくないものだから、あの「チェ・ヨン」とは別人のチェ・ヨンかもしれない。

 

 —————とにかく、情が移る前になんとかしないと!

 

 このまま甘えていては取り返しのつかない事になるような気がして、そんな考えを振り切るようにウンスはもう一度ブンと大きく首を振った。

 彼がいなくなると考えると、ぽっかりと穴が空きそうになる心に…すでに手遅れになりつつある事には、気づいていないふりをした。

 

 

 

***

 

 

「ウンス殿?」

 

 肩にかかった重みに、名前を呼んでみるが反応はない。

 

 ふぅと一息したヨンは、寝入ってしまったウンスを抱き抱えそっとベッドに横たえた。ウンスの額にかかった髪を退けてやると、ふわりとウンスが微笑み、やましいことなどないはずなのに思わずギクリとして手を退けてしまう。

 

 あれから毎日だ。寝る前に話しては、こうして肩に頭をあずけて寝てしまう。ヨンがウンスをベッドに運ぶまでが一連の流れとなっている。あまりの無防備さに心配になるが「お願い。話してる方がよく寝れるの」と言われてしまえば、断ることなどできなかった。

 

 ウンスの気持ち良さそうな寝顔を見てヨンはふっと口元を緩ませた。

 

 —————不思議なお方だ。

 

 ウンスには、何故か自分のことをよく話している気がする。聞き上手なのだろうか。自分の部下のことや仕事のことを、他人にここまで話したことはなかった。

 だが話した甲斐もあり、どうもウンスは自分がチェ・ヨンだと信じてくれたようだ。とは言っても、いまだに半信半疑ではあるようだが。

 

 —————よく知りもしない男に体を預けるなど…

 

 はぁとため息をついたところで、ウンスがもぞりと動いて口を開けた。何かを言おうとしているのだろうか?そう思って耳を近づけると—————

 

「ん、チェ…ヨン」

 

 ドクリと心臓が鳴った。一度は退けた手が自然とウンスの頬に伸びる。温もりを求めるかのようにスリと寄ってきたウンスの仕草に、引き寄せられるようにして顔を寄せ…

 

 ガタッと窓が揺れ、ハッと我に返り慌てて顔を離した。

 

 —————俺は今、何を――?!

 

 深くため息をついて、頭を冷やせと言い聞かせながらウンスに布団を掛けてやる。

 

 どうしてだろうか…ウンスといるのはどこか懐かしく感じるほど自然に思えた。この慣れない地で落ち着いていられるのは、ウンスの側だからだ。

 常に戦いに身を置く自分は、どこにいても無意識に神経を張っている。それが普通だと思っていたから、安らぎなどと考えたこともなかった。ウンスといるだけでこうも穏やかな気持ちになっていることが、自分でも信じられなかった。

 

 ウンスの笑顔は見ていて心地いい。なのにどこか気を張っているようで、それを悟らせまいと強がる姿が—————放っておけないのだ。

 時折見せる切ない表情を見ると、どうにかしてその憂いを取り除いてやりたくなる。眠れないと寄りかかってくるウンスが、まるで自分にだけは心を許しているようで…

 

 —————側に、いてやりたい——などと

 

 そう思ってしまう。自分は高麗の武士だ。それに自分が生きているのかすら定かではない。ずっとウンスといることなど出来ないのは承知していても、側にいることを—————心が望んでしまう。 

 

「ウンス殿…」

 

 ぽつりと呟く。

 

 窓の外には、依然として闇が広がっており、ウンスが瞳を開ける朝まではまだまだ時間がある。

 もう少しだけ、このまま—————そう思ってヨンは瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

本日のポイント:寝込みを襲うヨン(未遂)(゚∀゚)

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