今晩は(。>ω<。)ノ 

今回は雪の降る夜(閑話)になります。

6話と7話の間あたりのお話です♬日常な二人。

 

 

 

 

 

閑話

 

 

「あ”あ、つっかれた…んっとにあのじじい…」

 

 ウンスは帰るなりコートを脱ぐと、そのままベッドにダイブした。ついつい口が汚くなってしまうが、すでに時計は22時を回っているのだから仕方ない。

 上司に声をかけられた際に感じた嫌な予感は見事に当たったのだ。急遽学会で使用する資料を作っておけだなんて、なんて横暴な上司だと文句を言いたくなる。「すまんね、今度飲みに連れて行くから」と言っていたが、これは居酒屋じゃ割に合わない。回らない寿司屋くらいは要求しても許されるはずだ。

 

「ごめんね、チェ・ヨン。仕事ばっかりであなたのこと何も出来てない」

 

 お風呂にも入らなくてはならないし、夕飯だって食べていない。と言ってもこの時間だからもう夕飯は諦めた。

 

「私のことは気になさらず。そんなことよりウンス殿は、その…働きすぎでは?」

「…そう思う?」

「天界の者は皆そうかと最初は思うたのですが、ウンス殿の周りを見ている限りそうは思えませぬ」

「そうよね!ほんっとに、皆して雑用を押し付けてくるんだから!」

 

 ウンスの勤めている美容外科には多くの医者が務めているが、ウンスはその中でも若い方だ。となると雑用の行き先は言わずもがな。やれ資料を探せだの、報告書を書けだの、看護師から出た意見を集約してこいだの、うるさい患者の対応をしろだの、外部の高名な医者が来るから相手しろだの、いい加減にしてほしい。

 

「少しはご自身も労ってやらねば、体を壊します」

「いくら私が若手だからって押し付けすぎなのよ!……何よ?」

 

 ヨンが少しだけ「は?」と言いたげな顔をした後にはぁとため息をついたが、変なことを言ったつもりは———もしかして…!

 

「あ!あなた今私が若手なのかって思ったわね!?一応、まだ若手に入るわよ!」 

「そこではありませぬ」

 

 間髪入れずに否定されたが、これで否定されなかったら少し落ち込む。とは言え、そうでなければなんだと言うのか。

 

「じゃあ何よ」

「若い故に押し付けられていると?」

「だってそうなんだもの」

「おそらく———そうではありませぬ」

 

 ヨンはウンスの認識のズレに驚いて、ため息をついたのだ。

 ここ数日ウンスについて病院に行っていたヨンは、ウンスが診察している間に病院内を観察していた。そのため、ウンスが遅い時間まで仕事をしている理由も分かった。

 

「ウンス殿のなさる仕事は的確である故に、依頼が多いのです」

 

 病院には若手が少ないわけでは決してない。それなのにウンスに集中している理由は、ウンスが秀でているからだとヨンでさえ見てて分かった。

 

 例えば資料探しでは、他の者が頼まれている所も目にしたが、何度も「これではない」と突き返されていた。例えば報告書では、同じく「もう一度書き直してこい」と。この二つの言葉を何度耳にしたか。ウンスが頼まれた時には、突き返されるような姿は見ていない。

 うるさい患者もウンスが宥めると落ち着くし、看護師という役目の者かは分からないが、周囲にいた者達からの信頼も厚いようだった。

 つまり、他の者に頼むよりウンスに頼んだ方が早いのだ。

 

「任務は出来る者に集まるものです」

 

 そう言うとウンスがポカンとした顔をした。

 

 自分の事を全く持って分かっていないウンスにどうしたものかと思ってしまう。

 ウンスはどんなに帰りが遅くなろうと「もうっめんどくさい!」と言いながらも、一人でやりきってしまうのだから、周りが頼るのも道理だ。

 それに、ウンスは男女問わず人気がある。特に若い男性など、声をかけようとウンスの周りをウロウロしている姿を何度も見た。どうにか話を繋げようとしていた者もいたが、サラリとかわしているウンスは無自覚なのだろう。これはウンスに伝えるつもりはないが、全くもって心配が尽きない。

 

「そ、そうなの…かな」

「見ておれば分かります。されど、だからと言うてウンス殿が引き受けていては身が持ちませぬ」

 

 ウンスはまじまじとヨンの顔を見てしまった。その顔から、冗談でもお世辞でもなく本当にそう思っているだろう事が伝わってきて。

 ヨンの言葉がじわりじわりと心に入ってくる。自分の仕事が認められているのだと言われて嬉しくないはずがない。そんな風に言ってくれたのはヨンが初めてだった。いや、よくよく考えれば「君なら出来るだろう?よろしくね!」などは言われていたかもしれない。押し付けるための謳い文句だと思っていた。

 

「そうだとしたら、嬉しいんだけど」

「嬉しくても、無理はされませぬよう」

 

 確かに仕事で信頼されているとしたら嬉しく思うが、この残業量は流石に堪えるのも事実だ。

 頑として譲らないヨンに、こんなにも体を心配されるなんて…と、少しくすぐったくなる。家族が居たらきっとこんな感じなのだろうか。

 ふんわりと心が暖かくなり「心配性ね」と言いながらも思わずくすくすと笑ってしまう。

 

「じゃぁ、手抜きでもする?」

「ウンス殿はそれも出来ぬでしょう」

 

 長い付き合いでもないくせに、お見通しだと言わんばかりでこれまた笑ってしまう。本当によく見ているものだと感心すると同時にやや気恥ずかしい。

 

「無茶なこと言われたら私だって…」

「それでも、引き受けた以上頑張られるのがウンス殿の性分では?誰にでも出来ることではありませぬが、少しは心配するこちらの身にも…」

「チェ・ヨン。大丈夫よ。やれる範囲で頑張るから」

「やれる範囲が問題なのです」

 

 くすぐったくて暖かくて、こんなにも柔らかい気持ちはいつぶりだろう。

 

 くすくすと笑いながら、目が熱くなってしまうのはどうしてだろうか。何故だか泣きたい気分になって、でもそんな所を見られたくなくて。

 

 

 ウンスは枕にボフッと顔を埋めた。

 

 

 

 

7話へ続

 

 

 

「ウンス殿、湯浴みは良いのですか?」

「分かってるわよ!もうっ」

 ————おかんか!

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