こんばんは(。>ω<。)ノ 

「雪の降る夜」の更新です♬

 

クリスマス&正月企画もやってます( *´艸`)♪

先着ですので、ご興味ある方はリンクからぜひ!

クリスマス&正月

 

 

 

 

 

 

 

「待って!」

「ウンス殿!?」

 

 ガシリと腕を掴まれたヨンは、突然の大きな声に何事かと目を丸くした。

 先ほどまでウンスが背中を預けてきて、何か囁くような、どこか密やかで甘い空気だったというのに。すっかり霧散してしまったそれに、少々落胆してしまう自分は悪くないと思いたい。

 

「え?」

「どうされました?」

 

 ウンスの様子はどこか焦っていて、腕を掴んだのはウンスだというのに何故か驚いた顔をしている。驚かされたのはこちらの方だ。

 

「え?あなた…今、消—————」

「私が何か?」

「い、いいえ。なんでも、なんでもないの」

 

 何でもないと言いながらもその顔は強張っている。その様子に落胆している場合ではないと、ウンスを落ち着かせるためポンポンと背中を優しく叩く。

 そうしていると少しだけウンスの力が抜けたのが伝わってきて、改めて理由を問おうと口を開きかけたが、やはりその前に先ほどから気になっていることを伝えることにする。

 

「ウンス殿。その…大きな声を出されましたが、良いのですか?」

「え?ああっ!」

 

 すっかり歩道橋を行く人から注目を集めてしまっている。

 ウンスは少し焦ったようだが、わざとらしく耳元を触りながら「ちょっと、電波が!一回切るわね!」と言うと、周りの視線がなくなった。電波という言葉も分からないが、一体何を切るというのだろうか。まあ何にせよ上手く誤魔化せたらしい。ウンスが奇異の目で見られるのは自分にとっても本意ではない。

 

 ウンスは一つだけふっと息をつき「帰ろう」と言って歩き出した。足早に帰ろうとするウンスに問いかける。

 

「ウンス殿、先程は一体…」

「私もまだ分からない。けど、帰ったらちゃんと話すわ」

 

 いつからか雪は止み、地面もほとんど濡れてはいない。これであれば滑るようなことはないだろうが、急ぎ歩くウンスの足元が少し覚束ないように思えて、いつでも支えられるようにとヨンはウンスの横について行った。

 

 

 

 

 

 —————さっきの、あれは…?

 

 ウンスは歩きながら先ほどの事を思い出した。見間違いなどではない。確かに一瞬ヨンが消えかかったのだ。確かあの時は、強い風とともに雪が舞って…

 

 —————雪?

 

 チェ・ヨンは、ここに来た日も雪が降っていたと言っていた。正しくは自分が初雪だと呟いたらしいが残念ながらその記憶はない。

 

 —————もしかして…

 

 歩道橋と雪。この二つが鍵になっているのではないだろうか。彼が本物のチェ・ヨンだとしたら、そして彼が幽体として彼の体から出ているのだとしたら?受けた傷が癒えるとともに彼も消えるのではないだろうか。その時に時間を超えるきっかけが、あの場所と雪なのかもしれない。

 

 —————ああ、どうして…

 

 こんな事、気づきたくなかった。気づかなければ一緒にいられたのに。気づいたからには、ヨンを戻すために試さなくてはならないだろう。そうして自分の考えが正解だと知るとともに、自分はヨンを失うのだ。

 

 —————いいえ。まだ、推測に過ぎないわ。それに彼が本物のチェ・ヨンかどうかなんて…

 

 ウンスはふるりと頭を振った。自分を誤魔化したところで意味がない。本当はもう分かっているのだ。自分はいつもこうだ。気づきたくない事に気づいてしまう。自分を取り巻く人々の打算的な行動、孤児である自分に同情しながらも裏にある優越感…その表面の優しさだけを見ていれば、傷つかなくてすむのに。自分の勘違いであって欲しいと思えば思う事ほど、その勘は当たってしまうのだ。

 

 今回も自分の考えが正しいのだと…何故だか確信があった。だからこそ、もう日にちは残されていないことも分かってしまう。

 彼が消えかけたということは、傷が癒えてきているのだろう。受けた傷が癒えて尚、体に幽体が帰らなければ彼はどうなる?それこそ、本当の死に繋がるのかもしれない。

 

 —————次、雪が降ったら…

 

 ヨンとの別れだ。

 

 彼は先ほど迎えに来ると言ってくれた。その気持ちを疑ってはいない。

 でも時空を超えるなんて、それを信じられるほど夢を見られる年齢でもない。

 

 —————ああ、でも…

 

 それでも自分はきっと待つのだろう。

 だって、知ってしまったのだ。泣きたくなるくらい心が暖かくなる彼との時間を。彼のストレートな優しさを、ぎこちなく触れる指を、熱い瞳を—————。

 そんな自分が、チェ・ヨン以外の誰と一緒になれると言うのだろう。だからきっと自分は待つのだ。信じれないまま、信じたい気持ちだけを持って—————ずっと、一人で。

 

 闇の中を歩くような錯覚に襲われ、フルリと体が震える。

 もしウンスが何も言わなければ、幽体であるヨンはずっと此処にいるのかもしれない。

 

 —————気づかなかったフリができる?あの人が、死ぬかもしれないのに?

 

 

 ウンスはふっと笑う。そんな事、自分には到底無理なのだ。

 

 

 —————彼を救えるのはウンス…あなたしかいないのよ

 

 

 彼は自分を望んで…必要だと言ってくれた。もう、それだけで十分だ。

 だから、例えその先に一人でいる未来が待っていたとしても。

 

 

 

 

 —————望むところよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次、雪が降ったら…

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