こんばんは(。>ω<。)ノ 

「雪の降る夜」の更新です♬

 

リク企画もやってます( *´艸`)♪

先着ですので、ご興味ある方はリンクからぜひ♬

 

 クリスマス&正月

 *クリスマス話のリクは締め切らせていただきましたm(_ _)m

 引き続き、お正月・その他のリクは受け付けておりますヾ(●′ω`)ノ 

 また匿名希望のリクはメールにて受付いたします♬詳細はリンクページへ。

 

 

 

 

 

11

 

 

 

 サクリと雪の上を歩く音が響く。

 

 階段を登りきると、夜の歩道橋は白く彩られていた。ウンスはふうっと白い息を吐いて手すりを掴み、はらはらと落ちる雪を眺める。

 眼下では多くの車が行き来しており、吐いた白い息が光に重なり優しくぼやけた。

 見回すと、歩道橋からほど近い場所にある神仏像がぼんやりと青い光を放っているのが見え、あんなところでもイルミネーションをしているのねとクスリと笑った。

 

「ねえチェ・ヨン、今年もクリスマスは雪が降ってるのよ」

 

 ウンスは少しだけ後ろを振り向き、また空へと瞳を戻し寂しく笑った。

 

「高麗は、どう?寒くて風邪引いたりしてない?」

 

 答える声はない。そんな事は分かっていても、こうして問いかけると声が返って来るんじゃないかと————何度繰り返しただろうか。

 

 

 ————もう、3年も経つのね

 

 

 今日はヨンが高麗に帰って3回目のクリスマスだ。雪が降るたびにこうして歩道橋に来るのはもはや習慣になっている。

 ふっと白い息を吐いたウンスは瞳を閉じて冷たい空気を頬に当てた。

 

 あの日、二人でここに来た日————。

 

 

**

 

 

 遅い時間だからか、それとも雪が積もり始めたからだろうか。歩道橋には人が居らず、深々と降り積もる雪を街灯が淡白く照らしていた。

 

 はあと息を手に息を吹きかけると、ヨンがその手を取り握った。霊体だと言うのに、ずっとこうしてヨンの温度を感じていた。ふんわりと暖かい手をきゅっと握り返すとヨンが優しく笑い、とくりと心臓が鳴った。

 

 ————————本当は…ずっと一緒にいたい。

 

 だが、こんなことを言ったって困らせるだけだ。

 ヨンを返すと決めたのは自分なのに、そんな弱い自分をどうして見せることができるだろう。今までだって一人で何とかやって来たではないか。だから大丈夫。

 

 ウンスは自分に言い聞かせ、最後の日にと考えていたセリフを言おうと口を開いた。

 

「チェ・ヨン!」

 

 そう名を呼ばれたヨンはウンスの顔をじっと見つめた。

 ウンスはこちらを見ないままに、声だけは明るい。きっと無理をしていることを悟られたくないのだろう。

 それでも、自分には言って欲しいのだ。

 

「私、あなたに会えて良かった。私のことは心配しなくても大丈夫だからね。それにしても、こんなに楽しいクリスマスは初めてだったかも。チェ・ヨンったら水族館であんなに…」

「…ウンス殿、こちらを…向いてください」

 

 ふるりと首を振るウンスの頬に手を添え、優しくこちらに向けさせる。その瞳には涙が溜まっていて、ヨンはそっと指で瞳を拭った。

 

「本音を。俺には隠さずに」

「楽しかったわ…本音よ」

「ウンス」

「……でも」

「俺が受け止めます。全て」

 

 そう言ってウンスを抱き寄せ、背中をトントンとたたきながらウンスの言葉を待っていると、やがてポツリとウンスが声を出した。

 

「わ、私は…大丈夫…じゃない……かも」

「はい」

 

 ウンスの手がヨンの腕をぎゅうと掴む。

 

「一人はもう……嫌なの」

「はい」

「でも、あなたと会って…あなたを、知ってしまった。もう、あなたじゃなきゃダメ…だからこそ、この先ずっと一人なんだって考えると…すごく…怖い」

「ウンス…」

「無理って分かってるわ。分かってるけど…お願いしても…いい?」

「何でも」

 

 ほとりとウンスの目から涙が落ちた。

 

「お、お願いだからもう…一人に、一人にしないでぇ」

 

 そう言うと、堰を切ったように次から次へボロボロと涙が溢れ、ヒックと息を詰まらせる。

 

「もっ、もう一人は、いっ嫌…。一緒に、っ…い、いたいの」

 

 そう言ってヨンの胸に顔を埋めて抱きついてくる。

 

 ——————ああ、やっと聞けた。

 

 これが、弱みを見せないウンスの素の心なのだ。幼子のように一人にしないでと泣くウンスが、何よりも————愛しい。

 

 ————————この方から離れられぬのは俺の方だ…

 

 このウンスを今から置いて行かなくてはならないことが、どれだけ苦しいか≈。心臓が千切られそうに痛む。

 

「ウンス殿、私は必ず戻ります。あなたを————迎えに」

 

 こくこくと首を振るウンスの肩を掴んで少しだけ離し、顔を覗き込むようにして瞳を合わせた。

 

「言うたでしょう。高麗の武士は必ず誓いを守ります。故に、私が決してあなたを一人にはいたしませぬ。何としても迎えに参ります。ご安心を」

「本当…に?」

「本当です」

 

 その時だった。ふわり…とまるで待っていたかのように、ヨンの周りを雪が舞う。

 

「チェ・ヨン!」

 

 するりとヨンの手が頭に触れたかと思うと、ぱさりとウンスの髪が広がった。

 

「必ず返します。それまで、待っていてくだされ」

 

 そう言って懐にウンスの簪をしまうと、ウンスの瞳から涙を拭おうと手を伸ばして来た。甘えるように瞳を閉じて手にすり寄り、そうして瞳をあけると————

 

「チェ・ヨン?」

 

 ヨンが居たはずの目の前には、音もなく雪だけがハラハラと落ちた。息を吐いた途端、急に雑踏が聴こえて、何時もの歩道橋のように人の行き来する姿が目に入った。さっきまであんなに静かだったのが嘘のようだ。

 

 ————行って…しまった 

 

 迎えに来ると言ったヨンを信じてみたい。それでも、迎えに来るのは難しいだろうことはわかっている。信じたい気持ちと無理だと思う気持ち…相反する二つが混じって、ウンスは苦く笑った。

 

 

 

 

 そうして、その気持ちを抱えたまま三年の時が流れ—————

 

 

 

 歩道橋の上ですっと息を吸って、落ちる雪を見ていた。

 冷たい空気が、ひんやりとして気持ちがいい。

 

 

 

 いつの間にか人の姿が消え、辺りはしんと静まり返っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

3年も経っちゃった…(´・ω・`)

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