こんばんは!予告通り雪の降る夜のUPです( *´艸`)♪

リク企画でアメ限のお話もUP済ですので、そちらもぜひ♬

 

さて、今回はやっとの再会…再会?

 

 

 

 

13

 

 

 

 ハラハラと落ちる雪がウンスの頬に落ちては溶けて消える。

 すでに暗くなった空から落ちていくそれを、ウンスはぼんやりと眺めた。

 

 雪が降るたびにこの歩道橋へと来るようになって三年————。

 

 ————早いものね…

 

 彼がいなくなって一日はとても長く感じるというのに、どういうわけか三年はあっという間だった気がする。

 

 一年目は少しだけ期待していた。雪の季節が終わるころにはヨンが来ないことに泣いてしまうほどには————。二回目の冬で淡い期待は砕け、涙も出なかった。三回目ともなると仕方ないわと笑ってしまう。

 それなのに、ヨンとの記憶は幸せで溢れていて、今の自分を支えていた。

 

「いっそ出会わなければと…そう考えたこともあるけど、でも…不思議ね。出会わなかった方が良かったとは思えないの」 

 

 この三年で色んな事があった。

 院長のボンクラ息子から結婚を迫られ、結局あの病院は辞めてしまった。幸い小さな病院に勤める事ができ、不幸中の幸い…むしろウンスにとってはラッキーなことに自分の時間ができた。その時間で自然医療の勉強を始め、漢方にも詳しくなった。

 交際を申し込まれたこともあった。良い人だったし条件だって理想的だったが、どうしてもウンスは首を縦に振ることができなかった。「決めた人がいるんだね」と残念そうに去っていった彼はとても誠実な人だった。

 

 チャリ…とウンスは胸元のネックレスに手をやる。冷たいそれに触れるとすっと心が落ち着く。ずっと身に着け続けているそれを触れることは、ウンスにとって既に癖になっていた。

 

 ヨンの気持ちは信じている。でも時空を越えるなんてどう考えても非現実的なのだ。

 

 ————信じてみたかった。でももう、潮時ね…

 

 あの時…ヨンを帰すと決めた時、ヨンを救うためならと一人を覚悟したと言うのに、ついここに来ては期待してしまう自分にウンスは笑った。

 期待しては裏切られ、その繰り返しに少し疲れてしまった。

 

 ————ねぇチェ・ヨン。ここに来るのはもう、今日で最後にするわ

 

 ふぅっと小さくため息を吐くと、最後に一つだけ問いかけた。

 答えがないことなんて、とっくに分かっていても。

 

 

「ねぇチェ・ヨン。そこに…いる?」

 

 

 

 

「はい。ここに…」

 

 

 

 

 

 

 ————え?

 

 

 

 今の声は?

 手すりを持つ手がビクリと震えた。が、ふっと自嘲気味に笑った。自分はこうして何度騙されれば気がすむのだろうか…と。

 確かに声が聞こえた気がしたが、ウンスはもう振り返ることはしなかった。

 分かっているのだ…どうせ今回も幻聴だろう。もう幾度となく声を聞いたような気がして、振り返ってはその度に誰もいないそこに絶望してきた。

 

 これで最後だと決めた日に、こんな決心が揺らぐような幻聴を聞かせないでほしい。

 

 はぁっとウンスはため息をついた。いや、もうこうなったら最後なのだからこそ、この幻聴を楽しんでしまおう。

 

 振り返ってしまえば現実に戻されるのだからと、そのままウンスは幻聴相手に話しかけることにした。

 

「本当にチェ・ヨンなの?」

「はい、ウンス殿」

 

 ————ああ、あの人の…私を呼ぶ声だ

 

 幻聴だというのに、この再現性の高さはどういうことだ。あまりに鮮明な幻聴に末期だわと笑う。

 

「遅いじゃない」

「それは…申し訳なく。天界へ来る術を見つけるのに時間が掛こうてしまいました」

 

 ————そうね、あの人ならきっと約束を果たそうとする

 

「ずっと、探していてくれたの?」

「約束しましたゆえ」

 

 ————なんて、幸せな幻聴

 

「ウンス殿はその…息災でしたか?」

「ええ。いろんなことがあったのよ。交際だって申し込まれたわ」

「お受けしたのですか?」

 

 どことなく不機嫌な声が返って来たことにくすくすと笑う。

 

「まさか」

「なら良いのです。ウンス殿、私と共に…」

 

 そう言ったヨンの言葉をウンスは遮る。その先は幻聴に言われたくなかった。

 

「ふふ、ありがとう。でもね、もういいの」

「ウンス殿?」

 

 ————あなたに、約束したことを後悔して欲しくない

 

「私ね、あなたを待つのは今日で最後にしようと思ってここに来たの。だから貴方も、もう約束に縛られなくていい」

 

 幻聴にしか伝えられない自分がもどかしい。どうか高麗にいる貴方にこの声が届いてくれると良い。

 

「私は、遅かった…と?」

 

 そんなはずはない。いつだって遅いことなんてない。それでも、もう終わりにしなくては。

 

 きゅっと唇と噛み締め————

 

「そうじゃないわ。でももう現実に戻らないと…さよなら、チェ・ヨン」 

 

 ————ああ、これで終わりね

 

 ウンスは振り返った。どうせ振り返ったら誰もいな————

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 二人の間に沈黙が落ちる。

 

 

 

 

 

「なんでいるの?」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 続

 

 

 

ウンスさん、後ろ!後ろ!

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