こんばんは(。>ω<。)ノ 

昨日に引き続き、雪の降る夜の番外編です。

 

後編になりますので、まだお読みでない方は

雪の降る夜+番外編(前編)

をお読みの上、お楽しみくださいませ〜♬

 

それでは、どうぞ( *´艸`)♪

 

 

 

 

 

 

雪の降る夜 番外編(後編)

 

 

 

「”車”とは、馬のない鉄の駕籠のことでしたか」

「駕籠?ああ!そうね、昔は馬車が普通よね」

 

 普通に乗ることができたヨンにホッとした表情を見せたウンスだったが、ヨンはそれどころではない。天界でずっと気になっていた馬のない走る駕籠だ。これが興味を持たずにいられようか。運転を始めたウンスに申し訳なく思いながらも色々と質問をしてしまう。

 

「どのようにして動いているのです?」

「んー、どう説明したらいいのかしら…。空気の取り込みと圧縮、燃料の爆発と排気で軸の上下運動をさせることで車輪を回転させてるんだけど」

「爆発?危険はないのですか?」

「そこはちゃんと安全に作られているのよ」

 

 それで何故このように大きいものが動くのかはさっぱりだ。だが、運転するウンスの様子を見て、その操縦方法は何となく理解できた。

 

「それを回すと操縦できるのですね」

「ああ、ハンドルって言うのよ。そうそう、右に回せば右に、左に回せば左に曲がるわ」

 

 手綱みたいなものかと頷く。それにしても、驚かされたのは速さと乗り心地だった。速さ自体は走らせた馬と同等より少し早いくらいだろうが、馬車となるとそうはいかない。そして上下に揺れる感覚もなく滑らかな動きで、景色のみが移り変わっていく。

 

「天界の車とは、すごいですね」

「ほ、本当はもっと早くも走れるんだけど…初心者だから安全運転で行くわね」

 

 確かに、馬に乗り慣れていない者が早く走らせるのは危険だ。それと同じことなのだろう。真剣な表情で操縦しているウンスの姿にクスリと笑ってしまう。

 

「あ!この曲!好きなのよね。あいつ、センスいいじゃない」

 

 ウンスは曲に合わせて、ふんふんと口ずさむ。車に入っていたCDをそのまま再生してみたが、色々な曲が入っているところを見ると、好きな曲を集めたのだろう。

 今更どうやって音が出ているのか聞かないヨンに、現代にも慣れたものねと笑う。初めはテレビやCDコンポに驚いていたものだ。

 

「あの男とは、気安いのですか?」

「そうね、同期だし。たまに飲みに行くくらいには」

「ウンス殿は、彼奴を好ましく?」

「え?あ、やだ!そんなんじゃないわよ!ただの友達よ!」

 

 そう言ったウンスに、ヨンはため息をついた。おそらく相手はそうは思っていない。頭を撫でた時のウンスを見る目が、優しく細められていた。何故気づかないのかと思ってしまうが、それもウンスらしいのだろう。

 

「いいですか、ウンス殿」

「な、何よ改まって」

「好いてもおらぬ男と二人で酒を酌み交わすなど、感心致しませぬ」

「えー?同期なんだからそんなこと…」

「それに気安く頭に触れさせるなどもってのほか」

「いや、あれはあいつが勝手に…って、その後あなたも触ってたじゃない」

「あれは…」

「ね?あれと同じよ!私のこと、女として意識してないから気安く触れられるのよ」

「…ウンス殿を女人だと思うてなかったことなど、一度たりとてありませぬ」

 

 小さく返したその声は、ちょうど横を通り過ぎたトラックの音で、ウンスの耳には届かなかったようだ。

 

「え?なんか言った?」

「いえ、なんでもありませぬ」

 

 女性として意識していて触れた。その事に、気づいて欲しいような欲しくないような…聞こえて欲しかった気もするし、聞こえずにホッとしている自分もいた。もしも聞こえていたら、何かが変わってしまう気がした。

 

 

 

 —————今の、なに?

 

 ちょうどトラックの所為で聞こえにくかったが、本当は微かにウンスの耳にも届いていた。

 

 —————き、聞き間違いよね?

 

 聞き間違いでなければ、ヨンは自分をちゃんと女性として見ていると言った。気安く男に触れさせるなと言いながらも、ヨン自身は触れた…つまり、これが意味するところは。

 

 —————い、いや自意識過剰よね?

 

 思わず、聞こえていないふりをしてしまった。おそらくヨンは深い意味もなく、お世辞で言ってくれただけなのだろう。だとしたら、過剰に反応してしまった自分が恥ずかしいではないか。

 

 

 なんとなく微妙な空気が漂う中、ウンスは車線を変更しようとウインカーを出してハンドルを切ったその時だった。

 

「っ!ウンス殿!!」

「えっ!?」

 

 ぐいっとハンドルを持った自分の手をヨンが掴み、ガクンと車が元の車線へと戻る。その横をけたたましいクラクションとともに車が走り抜けて行った。

 

「え?」

 

 バクバクと心臓が激しく脈打って、さあっとウンスが青くなる。

 

「何をしておるのです!後ろから車が来ておるというのに!」

 

 確かにバックミラーとサイドミラーで確認したはずだった。だが、ヨンの言葉に動揺して目視確認を忘れていたのだ。ちょうど死角に入っていた車がいて、危うく接触するところだった。動揺は言い訳にならない。ヨンがいなかったらと思うとゾッとする。

 

「ご、ごめんなさい…び、びっくりしたぁー。見えてなくて。気をつけるわ」

「ウンス殿に触れられて、これほど良かったと思うたことはありませぬ。お気をつけて」

 

 ふうと安心したようにため息をついたヨンには申し訳ないが、ある事に気づいてなるほどと頷く。

 

「私が触れてるものなら、間接的に動かせるのね」

「ああ、そう言われれば」

「じゃぁゲームとかも…」

 

 そう言いかけて、ウンスはやめた。ストレス発散でたまに行くゲームセンター。そこに連れて行けば、シューティングゲームなどヨンも出来るのではと思ったのだが。

 

 —————その間、ずっと後ろからヨンに手を握られる事になるじゃない!

 

 その体勢はいくら何でも恥ずかしすぎる。

 

「ウンス殿?」

「え?な、なんでもないわ!」

 

 そこからは、たわいも無い会話をして、普通にドライブを楽しんだ。

 ヨンの幼少こと、部下のこと、最近の高麗での流行など、運転に集中するとどうしても普段より口数が少なくなってしまうウンスの分を、ヨンが話してくれた気がする。

 

 —————たまには、車もいいものね。

 

 ヨンの話に驚いたり、笑ったり。ドライブは思った以上にあっという間に感じたが、それでも目的地に着いた時にはすっかり辺りは暗くなっていた。書類を上司に渡し、これでミッション完了だ。

 

 —————帰りはゆっくり、少しだけ遠回りして夜景の綺麗な道を行こうかな。

 

 我ながら名案だと楽しくなり、本当にドライブデートのようだとくすぐったくなる。

 きっと、高台から見る夜景にヨンは驚くだろう。その様子を想像してふふっと笑い「帰りは少し寄り道するわ。いいもの見せてあげる」とヨンに告げると、ヨンは柔らかく目を細めた。

 

「どちらへ?」

「綺麗な景色を見せてあげる。驚くわよー!」

 

 —————夜の夜景も、春の花見も、夏祭りも花火も、秋の美術館も…あなたに見せたらきっと驚くものばかりだわ。一緒に見れたら…どんなにか楽しいでしょうね。

 

 嬉しそうに笑っているウンスを見て、ヨンもふわりと暖かいもので満たされる。夜に景色とはどのように?と思うが、きっと天界ならではのものを見られるのだろう。

 天界で途方に暮れていた自分が、ウンスといてどれだけ救われただろう。見るもの全てが新鮮で美しくて…だがきっとそれは天界だからではなく—————

 

 —————ウンス殿と、見ているからなのだろう。ウンス殿、あなたにも…

 

 高麗の花々や、夏の蛍、秋の紅葉、そして季節毎の祭り、ウンスに見せたらどんなに喜ぶだろう。「綺麗ね!」「すごい!」と言って可愛くはしゃぐウンスと一緒に見られたら、どんなに楽しいか…。

 

「ウンス殿にも、高麗の景色を見せたく」

「張りあおうっての?ふふ、いいわよ!どっちが綺麗かしら?」

 

 あ!でもジャッジ出来ないわねと、ウンスはほんの少しだけ切なそうに笑い、車のドアを開けた。

 

「さ、乗って?行きましょう!」

 

 

 

 

—————馬のない駕籠は、人が中から操縦するように作られ、乗り心地は非常に良い。鉄の馬には乗る機会がなかったが、一度は試してみたいものである。夜の街を高台から一望すると、光に溢れており、その美しさは到底言い表せぬ。誠に天界は驚くものばかりであった。様々な天界の道具は是非とも高麗に持ち帰りたいものであったが、誠に残念ながらそれは叶わなかった。

 だが私は、何よりも得難いものを天界で得ることができた。今は高麗に共に居る、美しい天女だ—————

 

 

 高麗末期の重臣で名将チェ・ヨンの手記には一部破かれたよう箇所があり、その頁は残念ながら現存していない。一説では、チェ・ヨンが寵愛したユ夫人がその頁を残さないようにしたとされているが、その内容も理由も不明のままである—————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現存してません(・ω´・+)

 

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