こんばんはヾ(●′ω`)ノ
「タイトル未定」では続編をご希望いただきありがとうございます♬
タイトルを「君に唄う恋の歌」に変更して連載スタートです( *´艸`)♪
未読の方は「君に唄う恋の歌 1」からお読みくださいませ。
時間軸は最終回後。月狼の後くらいです。笑
オリキャラバッチコイの方のみお進みくださいませ(。>ω<。)ノ
それではどうぞ!
2
「ねぇ!チェ・ヨン見て!凄い!」
部下に教えられた場所は市場から左程離れてはおらず、市の道が終わりに近づくにつれて音楽が聞こえてきた。おそらく買い物から流れて行く客目当てでの立地なのだろう。
二人が着くと、そこには既に人集りが出来ていて、その中央に高めの台座で作った舞台が拵えてあった。客席には敷物が準備され、舞台は刺繍を施した布が綺麗に張られ豪華に仕上げてある。
移動する旅芸人と聞いていたが、予想以上にしっかりした作りに、ウンスはついヨンの腕をぐいぐいと引っ張る。キョロキョロと視線を回して二人分の空席を首尾よく発見すると、ヨンに指で示して教え、見物客の邪魔にならないよう姿勢を低くしながら席に着いた。
舞台では丁度剣舞が行われていて、アクロバティックな演技にウンスは歓声を上げる。剣が身体ギリギリのラインですれ違う場面では「あっ」と小さく叫び、それが無事に済むとほうっと息を撫で下ろしている。
まるで百面相だ。ヨンとしては、そんなウンスを見ているのもおもしろかったが、噂以上に質の良い演技はヨンの目も引き寄せる程だった。思いのほか演舞に魅入っていたところ、ヨンはくいと袖を引っ張られてウンスを見る。
ウンスはキラキラした瞳でヨンを見て、くいと剣舞を指差しながら顔を寄せた。
「あれ、あなたもできるんじゃない?今度やってみない?」
ただでさえ、容姿が良くてスタイルもいいのだ。きっと剣舞をやらせたら相当かっこいいに違いない。ウンスは普段より豪華に装って剣舞を舞うヨンを想像して目を輝かせる。
「きっと似合うわ」
「…お断りです」
「なんで!?」
「いいから、演舞に集中されてください」
ヨンはため息をついた。集中しろと言ったところでウンスが納得するとも思っていなかったが、予想通り食って掛かってくる。
「いいじゃない!ね?少しだけでも。ねぇったら、こんなに私が頼んでるのに」
しつこく袖を引っ張ってくるウンスの顔を両手ではさみ、無理矢理前に向けさせる。言い出したら聞かないのだから、力づくだ。
「剣舞なら実践で十分です。いいから、次の演技が始まりますよ」
そう言うと、ウンスは次に移ろうとしている演技に気を取られたようで、ヨンはほっと息をつく。
次に出て来たのは美しい女の人だった。周囲から男の歓声が揚がる。
—————なるほど、部下が騒いでいたのはあの女人か
確かに、一般的には美人になるのだろう。スラリと高い背と細い肢体は色気を感じさせた。
踊りが始まると、ひらひらとした淡い色の衣装が曲に合わせてなびいた。足下まで伸びた長めの衣装ではあるが、その布はざくざくと切られており、それが踊りに合わせてふわふわと揺れ動き、きわどい線まで見えそうな作りになっている。曲は耳慣れない旋律だが、なんとなくつい口ずさんでしまうような曲調をしていた。
それにしても、とヨンは思う。この旅芸人達はなんというか…変わっているのだ。踊りや衣装、舞台の見せ方等、今まで見て来た芸人達とは線を逸している。おそらくは諸国を巡り、様々な技術を取り入れてきたのだろう。そう思いながら、ふとウンスを見るとその顔がすこし強張っている様に見えた。
「どうかされましたか?」
「…え?あ…いいえ、なんでもないわ」
そう言うと首を振りながら笑顔を見せて顔を舞台に戻した。
舞台では壇上の踊り子の側に、歌い手が上がったところだった。今度は観客から女性の黄色い歓声が上がり、歌い手は一礼すると楽器を手にもって座った。おそらくは噂になっている歌い手の男で、踊り子がその歌に合わせて踊るのだろう。
ウンスの様子を訝しく思いながらも舞台に視線を戻したヨンだったが、横から「気のせいよ…」というつぶやきが聞こえてきた。
「なにが「気のせい」なのです?」
そう訪ねると同時に、歌が始まった。しっとりとした雰囲気の曲だ。部下の言っていた恋人への思いを歌うものとはこれのことだろう。少し高めの声色が、よく曲に合っている。
だが、それを聞いたウンスの顔が見る間に青ざめヨンの腕を強く握ってきた。
「イムジャ!?」
「……どうして…?」
その顔は驚きに目を見開いていて、ヨンの腕を掴む手は少し震えている。
「どうしたのです!?」
その様子に、ヨンは「こちらへ」とウンスを席から立たせて後ろに連れて行く。席が埋まって立ち見をしている観客の群れを抜けて、ヨンはウンスを座らせた。先程よりもずいぶん音は小さくなってしまったが、曲はここまで聞こえてきている。ウンスはまだ唖然としていて、ヨンの腕を掴んではいるが、まるでヨンのことが目に入っていない。
「イムジャ!」
焦燥感がヨンを動かす。ウンスの頬を両手で挟んで顔を上げさせ、無理やり目線を合わせる。ようやく視線が絡み、数回瞬きをしてウンスがヨンの目をじっと見た。だが、その瞳には混乱の色が強く残っている。
「あ…」
「顔色が優れぬ。なにがあった?」
「この曲…」
「曲?」
この不思議な旋律の曲か。だが、こんなにウンスを混乱させる何かがあったようなものではなかったように思えた。
その歌は未だ聞こえていて、丁度その中に耳慣れない言葉が混じっているのが聞こえた。耳慣れないが、なんとなく聞いた事があるような音色をしている。
—————これは…まさか。
はっとしてウンスを見る。
ウンスは目線を歌の聞こえる方向に向け、ぽつりと言った。
「私、知ってるのよ…」
混乱しながらも、ひどく懐かしそうな色が瞳にあった。
「これは…私の世界で流行した歌だわ。あの言葉は…英語よ」
続
今回のポイント:両手でウンスの頭を持って顔の位置を戻すヨン
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