こんばんは(。>ω<。)ノ 出張からただいまです!!

いやはや疲れましたが、体調は問題ありませんでした。

何より自分自身がホッとしております笑

 

コメ返の赤ずきん、楽しんでいただけて良かったです。

童話の二人、書いててとても面白かったです。

また別の童話で何か書きたいなぁなんて思ったり♪

 

さてさて、本日はやっと君歌の更新です。

 

 

 

前回のおさらい:オニのような ヨン が あらわれた!

 

デーンデーンデーン デーデデン デーデデン♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旅芸人の舞台に到着し、護衛らしき男から情報を得ようと近づいたヨンにかけられたのは「ねぇ」という甘い声だった。

振り向くと、つい先ほど見たばかりの話題の踊り子が揶揄うようにクスクスと笑っている。

 

「あなた、赤い髪の女の人探してるんでしょう?教えてあげよっか?」

 

 するりとヨンの肩に手をかけて顔を寄せた。その仕草はまるで誘っているようで、周りの男が羨ましげにチラチラとこちらを伺っている。

 ヨンは煩わしそうにかけられた手をはたき落とし背を向けた。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!ねえったら!」

 

 焦ったように尚も腕を掴もうとする白い手を振り払う。こんな遊びをしている余裕などないのだ。

 軽く睨むと、さもつまらないといった風に女は両手を軽くあげ、クイとあごで示した。

 

「そんな怖い顔しなくても良いじゃない。教えてあげるって言ったのに。あそこに茶屋があるでしょ。その中にいるわよ」

 

 その瞳にはどこか期待が込められていて、それを隠すかのように顔は笑っている。理由は分からないが、どうやら早く自分を誘導したいらしい。

 ならばとヨンが歩き出すと、踊り子はホッと息をついた。

 

 

 

 茶屋に向かう背中をじっと見つめるその瞳からは、揶揄いの色はすっかり消え、不安そうに揺れている。

 

 ひゅうと吹いた風が踊り子の裾をはらはらと揺らす。

 

 

 

「—————早く、連れて帰ってよ」

 

 

 

 

 ポツリと呟いた小さな声は、風に消えていった。

 

 

 

 

 

⭐︎

 

 

 

 

 

「イムジャ!」

「あらテジャン。遅かったわね」

 

 バンと扉を開けたヨンの目に入って来たのは、ひらりと手を振るウンスだった。無事な姿に安堵の息をつく。

 だが視線をずらすと、その手はウンスの前に座っている男に握られていて、ざわりと心臓が嫌な音を立てた。

 

 つかつかと歩み寄ると、ウンスの手を強く掴み引き寄せる。

 

「きゃぁ!」

「ウンス姉!」

 

 —————ウンス…姉だと?

 

 親しみを込めた呼び方に、先ほどの不安がどろりと体に纏わり付くようで、振り切るようにぐいと引っ張りウンスを背に隠す。その男もガタリと椅子から立ち上がってヨンと睨み合う。

 

「ウンス姉を離せよ!」

 

 目の前の男は件の歌い手だ。事を荒げるのは失策だと頭では理解していても、感情が付いていかない。このままではいけないと男から目を逸らし、深く息を吐く。

 

 くるりと後ろを振り返ってウンスに顔を向け、意識的に頭から男を追い出す。

 

「あなたは、何を勝手なことを!」

「あなたが閉じ籠めるからよ!」

「何故待てぬ!二階から脱走するなど!」

「私の言うことなんて聞いてくれなかったじゃない!」

「だからと言うて、もし何かあったら…」

 

 ぎゃあぎゃあと喧嘩を始めた二人の会話に、ジュウォンは完全に蚊帳の外だ。

 だが、ジュウォンは状況以前にその言葉に唖然とした。

 

 —————脱走?!閉じ籠める?!この男に閉じ込められて?!

 

 ”ヨンに閉じ込められたウンス” 

 

 ジュウォンは二人の会話を、その言葉のまま理解した。

 

 先ほど、ウンスに今は何をしているのかと聞いた時、ウンスの様子は少し戸惑うようだった。そうしてその後、切なそうにため息を吐いていて、その様子にまさかと嫌な考えが頭をよぎったのだ。

 

 ウンスは医者だと言った。高麗時代の人間からしたら、現代の医者が持つ技術はかなり貴重だろう。もしかしたらウンスは良いように利用されているのではないだろうか———と。

 

 ただでさえ同郷の人間で、かつ自分の初恋の相手だ。もしそうなら…そう考えて、よかったら楽団に来ないかと言おうとした。

 ウンスの明るい様子から、まさかとも思った…ただの考えすぎだ——と。だからこその「良かったら」だったのに—————。

 閉じ込められて脱走すなど、まさにそのまさかだったのだと、ジュウォンはギリと唇を噛んだ。

 自分がのうのうと旅をしている間に、どれだけ辛い目に遭ってきたのだろうか。

 

 —————俺が…助けなくては!

 

 未だに喧嘩しているウンスを自分の方に引き寄せようと、その腕に手を—————

 

 だがその手は、ウンスに届く前に男の手によってバシリと跳ね除けられてしまう。

 こちらを見てすらいなかったというのに、その素早い動きにぎょっとする。

 

「触るな」

 

 静かなその声は、ぞっとするほど冷たい。すっとこちらを向いた男の射るような視線に、凍りついたように体が動かず背筋に冷たい汗が流れた。

 ぶわりと自分の全身の毛が逆立つような、心臓の音ががどっどっと警告を鳴らしているのが分かった。

 

 —————なんだよ…こいつ…

 

 静かに男が体をこちらに向けると、自分の意思に反してびくりと体が震えた。

 

 無意識にじりと後ずさった自分に近づき、腕を掴まれる。思わず振り払おうと力を入れるが、ビクとも動かない。

 自分の腕を力一杯引き寄せようとグイグイと力を入れてみるが、男は表情も変えずに難なく掴んだままだ。

 

 —————離せ!

 

 声が出ずに、それでも睨もうと顔を上げて目があった途端、すっと耳元に顔を寄せられる。

 依然として腕は強く掴まれ、ギリと痛みを訴えている。

 

 —————くそっ!

 

 押しのけてやりたいのに、体が強張りいうことを聞かない。

 

「お前は、天…」

「ちょっと!威嚇しないの!!」

 

 すぱぁぁん!!

 

 と音を立ててウンスが男の頭を叩くと、固まっていた空気が動いたかのように、その場を支配していた緊張感が霧散した。

 

 男は一瞬驚いたようにしていたが、頭をさすりながらウンスに恨みがましい視線を送っている。

 

「イムジャ…」

「ほらもうチェ・ヨン!ジュウォンが怖がってるじゃないの!」

 

 —————え?

 

 

 

 今ウンス姉はなんと言っただろうか。聞き間違いでなければ確かに———

 

 

 

 

「え?チェ・ヨン?」

 

 

 

 

 

 

 続

 

 

 

 

 

 

一般人に本気の威嚇、ダメ絶対。

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