「作画出身の演出」に「CGアニメの演出」をやらせてはいけない理由。 | CGアニメーターサバイバル

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こんなタイトルで申し訳ないですが、作画出身の方にも当然勉強熱心な方はいます。すごく3DCGをポジティブに捉え、作品に積極的にとりいれていらっしゃる方もおります。

ただ、経験上、「作画出身の演出」の中には、以下のようなタイプが結構居るのも事実です。



・CGわかんないけど、とりあえず、依頼されたからやってる。

・CG出来ればやりたくないけど、これから食っていくためにはCG演出経験しておこうかな。




共通するのは動機が「受け身」だということ。




こういう人が紛れ込むと、制作現場は混乱します。
さらに制作進行が新人だったりすると目も当てられません。


CGアニメーター的に、CG打ち合わせで以下のような傾向が見られたら要注意です。





★CGに幻想を抱いている。

「カメラワークが自由だから回りこめるんでしょ?」と

BGが美術なのに、カメラを回り込みの指示をしたり

CGで出来ることと、出来ない事がわかっていない為、トラブルになるケースです。




★現場にそぐわない、ニワカ知識。

「カメラマップを使ってみたいんだけど。」

例として、とても多いのでカメラマップを挙げました。

「カメラマップ」という表現は知っているのに、カメラマップには「モデリングが必要」という前提を知らない。

そして、視野角が狭いという「表現の限界」を知らない。

カメラマップのカットは美術ありきなので急ピッチで上げなければならないという「美術の大変さ」を知らない。



時間の無いTVで、果たしてそこに時間をかけるべきなのか?
演技修正に時間を取った方がいいんじゃないの?と、首をかしげたくなるケースです。


もう、何度「カメラマップ」の説明をしたか数え切れません。





★どういう風にチェックバックしたらいいかわからない。


CGアニメで、プレビュー状態のチェックになったりすると、絵が荒い為
最終の絵がイメージ出来ない部分は確かにあります。

ただ、動きも表情もついているのに内容に関しての指摘がない状態が続き
編集間際で最終絵が見えてくると、せきを切ったように修正を重ねてくるケースです。



こう表現したいという「強い思いは」あるけど、「言わない」「伝えられない」

最も現場的には辛いケースです。






twitterでも少し触れましたが、CGのアニメ、アニメのCGをやるにあたっての演出は
理想を言えば、CGアニメーター出身の演出が望まれます。なぜならCGアニメだからです。


CGは作画アニメの延長線上にあるものではありません。全くの別ものです。



つらつらと書きましたが、決して楽をしたい訳じゃありません。
本当に素晴らしい演出の言う指示は実に的確で難しいオーダーでもやってやろう!っていう気持ちにさせられます。

しかし、今はとてもそういう演出がとても少ない印象です。




僕はとにかく人物芝居が重要だと考えているので、そこを軽視し、無駄に3Dカメラをぐるぐる回したい演出に当たると正直、辟易します。

無駄なレンダリング時間を増やす位なら、芝居にリテイクを出したほうがCGアニメーターが育ちます。

逆に、芝居に指摘が無いと、芝居なんてこんなもんでいいやっていう意識の低下が蔓延します。



★1つ興味深いエピソードがあります。

今をときめく、「サマーウォーズ」や「おおかみこども」細田守監督は、ポスト宮崎駿とも言われ、非常に視聴者にとって人気が高く、表現をこだわる方でもありますが、同時に、超がつく程、省力化への意識の高い監督です。


アニメーターには芝居に集中して欲しいから、面倒なカゲの作画を排除し、


机に乗らないような大判サイズの演技は控えたり


撮影への指示も取り直しがないよう、コンテ、シート、細心の注意を払っているといいます。

なぜそこまで、徹底的に省力化を考えるのかというと、自身がアニメーターの時にとにかく面倒だったから現場にお願いするのに、とにかく申し訳ない気持ちが大きいといいます。






★長くなりましたが最後に

演出の「不勉強」「怠慢」は間違いなく、業界の労働環境の悪さの一因です。

また、アニメ制作の労働環境の良し悪しは演出の舵取り次第で大きく改善できます。

悲しい事に、その事実に多くの演出に自覚がありません。



CG演出を目指すならば、CGへの深い理解をし、現場にとっても視聴者にとっても
良い作品を生み出せるような人を目指してもらいたいと切に思います。